ナナちゃんと顎クイ

「怖いねぇー、また出たらしいよ」


ナナちゃん愛犬ポチの毛づくろいをしながら語りかけます。


「くぅん?」

「今度は妖怪っぽいね。

〈顎喰い〉って言うらしいよ。

ね、妖怪・顎喰い」


「くくくぅん?」

「隣の高校生のお姉さん、化け物引き寄せ体質なのかなあ?

また襲われたみたいだよ」


「くぅん、くぅん」

「やって来た時は、膝はガクガク、血流ドクドク、身体中の毛穴が開いて、汗びっしょり、目が開けてられないくらい虚ろになっちゃったんだって」


ポチはすっかり怯えて、尻尾を後ろ足に挟んでいます。

「くぅん、く、く、くぅん」


「本当に危機一髪だったみたいだよ。

そいつの手がいよいよお姉さんの顎にかかってぇ、お姉さんはもう動けなくなっちゃって、ああって思った時、そこまでしながら妖怪何を思ったのか、顎は食べずに頭をポンポンして去って行ったんだって」

「くぉーん?」


「そう、本当に良かったよね、顎食べられたら大怪我おおごと大変だよぉ。

お姉さんなんだか唇を奪われちゃったなんて、赤い顔して言ってたけど、きっと気が動転しての勘違いだよね、だってちゃんと唇あったもん、お姉さん。

顔が赤いのも襲われた恐怖で熱が出てるのかなぁ、、、?」


「くうん、くぅん」

「ホント気の毒可哀想だねお姉さん、こんなに始終ひどい目に合っちゃって。

物騒だねえ、剣呑だねえ、、、」

「ワン、ワン、オン!」

ポチも同意とばかりに尻尾をふります。


今はまだ、顎クイよりも、動物園でアリクイでも眺めて来ておくれナナちゃん。

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