第25話 白雪姫と小休憩
「ごめんちょっとお手洗い」
「あいよ。荷物持っとこうか?」
「じゃあお願い!」
洋服を見終え、俺たちは近くにあった椅子へと座り小休憩を取る。時間というのは気が付いたらあっという間に過ぎていくもので、洋服を見始めてから既に1時間以上は経過していた。
「拓人、今日はありがとね」
若菜が席を立ち、二人きりの状態になったからか凛花の白雪姫モードがオフになる。
「いやこちらこそ、若菜が色々迷惑かけてごめんな」
「ううん、全然迷惑じゃないし楽しかったよ?」
「そう言ってもらえると助かる」
「若菜さん良い人だし、それにすごい元気で面白いね」
「正直に言っていいんだぞ?元気すぎて疲れたって」
「…まぁ確かにぐいっと来られたのはちょっとびっくりしたけどね」
そりゃあんな急に距離詰められたら誰でも驚くだろう。今日で友人関係になったかと思えばまさかの推しと推される関係になるとは思わなかったよ俺。
「それと……一応聞いておきたいんだけど、さ」
「ん?」
「本当に若菜さんと付き合ってないんだよね?」
「……どしたの、急に」
いきなり疑いの目を向けられ俺、困惑。
「いやだって、あんまりにも仲がいいからその……本当は付き合ってるのかちょっと不安になっちゃって」
一度疑いが晴れたはずの俺と若菜が付き合っているのではないか疑惑が再浮上。そんなに俺と若菜が付き合ってるように見えるか?普通に仲いい友達くらいだと思うけどなぁ……。
「付き合ってないって前にも言ったじゃん。俺と若菜は幼馴染でそれ以上でも以下でもないよ」
「だ、だよね……」
「ちなみに聞くけど今日のいつくらいからそう思ってたわけ?」
「最初の方。会った時にデートしてるのかなぁって思ってた」
「そこからかぁ……」
どうやら最初からそう思っていたらしい。まぁ休日に男女二人が買い物してるのはデートと捉えられてもおかしくはないのか…?いや、ないな。曲がりなりにも若菜は美少女だ。そんな美少女の隣に俺みたいなフツメンが立ってたら荷物持ちだと思われる確率の方が高い気がする。
「そんなに信用できないなら今度若菜の彼氏引っ張ってこようか?」
「ううん、大丈夫。そこまではしなくていいよ。こっちこそ幼馴染だって分かってるのに変な疑いかけちゃってごめんね?」
「いいよ別に。…あぁ、でも許す代わりにちょっとしたお願い事していい?」
「お願い事?」
「そう、たまにでいいからこれからも若菜の相手をしてくれない?」
「そのくらいなら、というか若菜さんといるのは楽しいからむしろこっちがお願いしたいレベルだよ」
言質いただきました。これからあの超元気な白雪姫ファンのことをよろしくお願いします。
「というかなんでそんなことお願いしてきたの?」
俺が若菜の手綱をそっと握らせたことに疑問を持った凛花が質問してくる。俺の発言の意図が本当に分からないご様子。
「多分だけどクラスで話しかけられることが多くなると思うからさ。先に言っておこうと思って」
おそらく教室でもなりふり構わずアタックすることが予想される。それも今日と同じくらいのテンションで。
「わかった。さっきも言ったけど若菜さんといるのは楽しいから全然いいよ!」
「そ、ならよかった」
どうやら本心らしい。作り笑いではない楽しそうな表情を見て俺はほっとする。あの子君のファンみたいだからどうぞこき使ってください。あ、でもちゃんと手綱は握っておいてください。すぐどっか行っちゃうんで。
「そういえば拓人って甘いもの好きなんだね。初めて知った」
若菜の話から喫茶店での出来事と、俺が甘党だという話に切り替わる。
「人並みには好きだぞ?」
「あれは人並みじゃないと思うよ拓人。あの量のパフェをぺろりと食べちゃうなんて相当だよ?」
「そうか?……まぁ凛花におかしいって言われたから普通じゃないのかもな」
「そ、それは……びっくりしちゃったんだもん」
まったく理由になってないですよ凛花さん。びっくりしたら口が悪くなるとか割と最悪よ?お化け屋敷出禁になるよ?
「その……ごめんね?」
「いいよ別にそんな気にしてないし」
一応申し訳なさを感じていたのか、凛花は謝罪の言葉を述べる。安心してくれ、若菜や正樹から既に悪口すれすれレベルのことは言われているのだ。おかしいレベルの言葉なら痛くも痒くも無いぞ!
「あ、そうだ!次のバレンタインに超甘いチョコ作ってあげようか?」
凛花は何か思いついたかのように目を見開いたかと思えば、いたずらな笑みを浮かべて、砂糖爆弾を作ってあげようかと提案し始める。実は数年前に同じことをされたんだよね。
若菜と同じことを思いついた凛花。2人の相性はあまり良くないかもと思っていたが、そんなことはないらしい。逆に相性良い可能性が出て来た。
「……まぁ貰えるなら貰おうかな」
「そっか。……ふふっ、楽しみにしててね!めちゃくちゃ甘いの作ってあげるから!」
俺がギブアップする未来が見えているのか、凛花は心底楽しそうな笑顔を浮かべる。今日はなんか既視感を感じることが多いな……。
一方その頃……
「え?拓人と凛花ちゃんめっちゃ雰囲気良くない!?もしかして……もしかするの!?」
物陰に隠れ、若菜はこっそりと2人の様子を観察していた。
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