#13 踊ろうぜ
「うお!?」
驚愕するセイギ。
一方、フォーチュンは次第に嗚咽を始め、口元を両手で覆う。
「おおおおおおおち落ち落ち着けどどどどどどどどしたYO !」
セイギは激しく取り乱す。
いつの時代も、男は女の涙に弱いものだ。
「ご、ごめんなさいですの。わたくし友達ってはじめてだから。その、嬉しくて………」
泣きじゃくりながら、フォーチュンは話を続ける。
「わたくし、ずっとひとりぼっちでした。小さい頃にヴァチカンに連れられて、それから外に出たことが一度もなくて。両親の顔も知らず、誰かとの面会も許してもらえず、同じ年頃の友達もできないまま、すごくつらかった。でも――― 」
フォーチュンは涙を拭い、夜空を見上げる。
穢れなき
「世界ってすごく美しい。旅に出て、はじめてそう思えました。
フォーチュンは照れくさそうにはにかみ、何よりも嬉しそうにセイギを見る。
「だからわたくし、お礼が言いたいんです。心からの感謝を。守りたいんです、この世界を。ここまでたどり着くキッカケになってくれた
彼女の温かな笑顔。その内に秘められた確固たる意志。
その美しさに、セイギは心奪われ、思わず見惚れてしまう。
それは、
それは、
かつて一度、
『ウチのこと、ひとりにせんといてな』
そんな彼の放心した姿に、フォーチュンはハッと我に返る。
「……… ご、ごめんなさいっ。わたくし、つい感極まっちゃって……… 変でしたよねっ。気持ち悪かったですよねっ。き、嫌いにならないで……… む、むきゅぅ~~っ」
星詠みの巫女、錯乱。
人は、お互いが寄り添い合って生きていく。
誰かが傍らに居てこそ、その存在が確立する。
だからこそ、セイギは決意する。
「――― おれにも手伝わせてくれよ」
「ふぇっ?」
その言葉に、フォーチュンは我に返る。
「だから、手伝わせてくれよ。飯屋
めしや(× )探すの。どーせおれ、夏休みだし」
「メ、
見ず知らずの人間のために、身体を張って助けてくれて、宿まで手配してくれて、今度は人探しまで。
友達とは、そういうものなのだろうか?
「どうしてそこまで……… 」
フォーチュンにはわからない。
だから、問い掛ける。
はじめての友達に。
「踊る阿呆に観る阿呆。同じ阿呆なら踊らにゃ損々」
応答するセイギ。彼の言葉の文意を読み取れず、フォーチュンは首を傾げる。
「要はさ、波に乗れってこと」
そういうと、セイギは右手を差し伸べる。
「だからさ。踊ろうぜ、フォーチュン。
頼りがいのある笑みを向けて。
温かい。フォーチュンは瞳を大きく広げ、頬を紅潮させる。
最初はためらうように。
だがゆっくりと、確かにその手を握る。
旅は、まだまだ始まったばかりだ。
これからも困難が続くのは、眼に見えている。
それでも。
目の前の彼ならば、どうにかしてくれそうな気がした。
この鬱屈とした救いようのないわたくしの世界を―――
「
不意に、頭上から何者かの声が落ちてくる。
ふたりを裂くような、研ぎ澄まされた鋭利な声。
声の主は、何処からともなくふたりの目前に軽快に着地。そして、ゆっくりと立ち上がる。
「鳴りやむことのない乱舞のメロディってヤツを、な」
それは、人の姿を借りた不穏だった。
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