第15話 魔族ザイン
しかしその攻撃はいとも簡単に避けられてしまう。
でも僕は知っている。
その後どう避けてどう行動するのかも…
僕の能力はそういう能力だ。
だからこそ実力の差を実感してしまう。
「おやおや…私がまだ話している途中ですよ?」
そいつは僕の最高の一撃をいとも簡単に避けニヤニヤとしながら耳元で囁いてきた。
僕は即座に距離をとる。
それと同時にミラが魔法を唱える。
「
その言葉と共に風を纏った火球が生み出される。
そしてゴウゴウと音を立てながら飛んでいき魔族にクリーンヒットし煙に包まれた。
「ふむふむ…複合魔法ですか…」
煙の中からそいつは何事も無かったカのように姿を現す。
「ウソ…無傷って…」
「フフッ…手加減した魔法が効くわけ無いですよ。」
ミラは確かに手加減していた。
もし本気で魔法を使っていればリオを巻き込んでいただろう。
それでも無傷は異常だ。
ミラいわゆる天才と呼ばれる人間。
魔力量はそこら辺の魔法使いと比べて倍以上。
そして技術も国お抱えの魔法使いと遜色ないレベル。
そんな彼女の複合魔法は手加減ありとはいえそこら辺の魔物なら跡形も残らずに消し飛び普通の魔族でもそこそこのダメージを与えられる。
それを受けて尚無傷。
勝てない…
圧倒的な実力差は誰が見ても明らかだった。
「全員今から逃げる事だけ考えろ…」
小声でリオがそう告げる。
「俺とガウスでやつの気を引くミラとアリスはできるだけ派手な魔法で視界を奪ってくれ!」
「そしてこの音爆弾を合図に全員全力で走れ!」
リオはそう言いながら懐から丸くて白いアイテムを取り出す。
「内緒話はもういいですか?」
魔族が口を開く。
「はっ!心配するなお前の殺し方を相談していたところだ。」
「ほほぅ…それは楽しみですねぇ!」
そうして僕とガウスは同時に地面を蹴る。
先ずはガウスが1太刀。
しかし風きり音だけで当たらない。
予定通り
避けた先に片手で横に一閃。
だがこれも当たらない。
簡単に避けられる。
しかしリオはそれを知っていたかのように空いた手でナイフを投げつける。
それは流石に虚を突いた攻撃だった。
「ふむ…さすがにその能力は厄介ですねぇ…」
魔族はナイフを側面から払う。
「これで終わりじゃねぇぞ?」
『フレアボム!』
『ホーリーランス!』
ミラとアリスが追撃の魔法を放つ。
魔族光の剣と業火が魔族を襲う。
その影響で辺りが再び白煙に包まれた。
「今だ!逃げろ!」
僕はその瞬間煙に向かって音爆弾を投げる。
キーン
その甲高い金属音を合図に僕たちは一斉にその場から撤退する。
誰も振り振り返らない。
全速力で逃げる。
そうしてしばらく走って森を半分ほどまで進んだ。
そこで僕はそれを知ってしまい思わず足を止めてしまう。
「リオ!どうした?!」
「そうよ!早く逃げないと!」
「…みんな…悪い知らせだ…」
「追いつかれる…」
「そうか…」
ガウスはなにか悟った様な声を漏らす。
ただその目は死んでいない。
流石肝が座っている。
「どうする…?」
ミラの声が震える。
彼女は怯えていた。
そりゃそうだ本来なら状況を変えてしまうような一撃。
それを直撃した上で無傷。
そんな相手とまた対峙する事になると聞かされたのだ。
そしてまだ子供…今すぐにでも逃げ帰りたいはずだ
ただ僕は
それを無慈悲に伝えるしかない。
というよりこの森を抜けてもしばらく平地が続くせいで助かるにはこれしかないだろう。
「この森で足止めしようと思う。」
それを告げる。
レイの死
それが今の僕に全く影響を与えてないと言えば嘘になる。
ただそれでもこの判断は至って冷静に考えた上での結論だ。
「多分もうすぐギルドからの応援が来る。」
そういくら自分達が勇者パーティーだとしても任せっきりにすることはありえない…
いや、勇者パーティーだからこそ応援はくる。
たとえ間に合わなかった場合でも安否確認はしないといけない。
なら確実に強い人間を派遣してくるはずだ。
だから、そこまで耐えれば今の状況よりはかなりマシになる。
「それに、ここは良くも悪くも視界が悪い。」
「時間を稼ぐだけならあの魔族相手でも難しくは無いと思う。」
「わかりました…」
「レイさんがそう判断したなら私は従いましょう。」
「元々覚悟はしてますから…」
「助かる…」
「でも安心して欲しい。
こんなところで誰も死なせはしないから…」
「…わかったそれで行こう。」
そう言いながらガウスが立ち上がる。
「…ほんとうに誰も死なないでね?」
ミラの目にも僅かながら勇気が宿る。
何とか全員が賛成してくれた。
ただ時間稼ぎとは言ってもそれなりの作戦は必要だ。
そこで僕は急いで考えた、けれども最も最善に近いであろう作戦を全員に告げる。
「それで作戦なんだけど…」
―――――――――――――――――――
「ふむ…逃げられましたか…」
音爆弾と魔法の二段構え…
まるで事前に打ち合わせをしていたかのような連携だった。
「やっぱり
どうやらあの勇者はそこそこ能力を扱えているらしい。
「まぁ…もう少し遊んでいきましょうか…」
「あぁそうそう
ザインのその言葉と共にその死体が崩れ魔石に変わる。
ザインはそれを拾い上げ口の中に放り込んだ。
「ふむふむ…流石の魔力量…失うにはもったいないレベルですねぇ…」
「もしこの遺跡に彼が来ることが割っていれば私が直接向かいましたのに…」
ザインは魔石を咀嚼しながら涙を流す。
この魔石の主は彼の部下だった。
「さて感傷に浸っている場合ではありませんね…そろそろ追いかけましょうか。」
そうして彼は勇者パーティーの追撃を始める。
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