第13話 少女

「さて…私も座ろうかな♪」


パチン


彼女の指を鳴らす音が響くと同時に豪快な椅子が1つ出現し豪快に座る。


「それで…何が聞きたい?」


そう言う彼女は今までと違い真面目で圧のある顔つきになっていた。


「お前は誰で何が目的なんだ…」


今まで類を見ない強さそしてそんな存在が何故俺を狙うのか。

1番気になっていることを聞く。


彼女は少し悩みながら答える。


「残念だけどその質問には答えられない。」

「ただし今は…ね。いつか必ずそれを知る日は来る。」

「それは変えられない…避けようの無い運命だから…」


「…運命か。」



「悪いね。今回は君の様子を見に来ただけでそれ以上の事はするつもりがないんだ。」

「それに本来なら私は居ない者だ。だから私に関する質問は答えられない。」


正直何を言っているのか分からない。

単に謎が増えただけだ。


「まぁ…名前ぐらいなら教えてあげる」

「イア…それが私の名前」


「イア…か。」

初めて聞く名前だった。


「なら…イア他の何なら答えてくれる?」


「ん〜そうだね〜」

「リオ……彼の事なら少しだけ答えてあげよう」


「???」

何故ここであいつの名前が出てくる?


「何を言っているか分からないって顔だね。」

「まぁ君の言動からして色々あったみたいだし仕方ないか…」

「それに君は誰よりも彼を知っているつもりだもんね。」


確かに俺は他の誰よりも彼の事をよく知っている自信がある。

ほんとうに長いこと一緒に居たから…


いや…わかっているつもりだったが正しいか…


あんな追放のされ方をしたんだもう知っているとは言えないな…


それでもこいつがリオの事を答えてくれると言うなら確認しておきたいことがある。



「…1つ質問がある。あいつらが数ヶ月後に全滅すると言うのは本当か?」


今の俺にとってはこれが何よりも重要な質問だ。

正直占い師やこの女の正体なんかどうでもいい。



「ふむ…何故能力もろくに使えない君がそれを知っているのか……」


「ひとまずそれは置いといて結論から言おう。」


「あぁ…頼む」


イアは1拍置いてそれを告げる。


「リオ達が生きるか死ぬか…それは君次第だ!」

「助けようと思えば助けられるが見殺しにすれば死ぬ。」



それは占い師と同じだった…



「なるほどな…」


「それにしても意外だね。」


「私はてっきり自分の能力とかリオが急に変わった理由を聞くかと思ったんだけどなぁ。」


イアは不思議そうにこちらを見ていた。


「あぁ…理由はあいつらから直接聞きたいからな…」

「お前から聞いても意味が無い。」


そう…意味が無いのだ。

追放されたのも復讐を決めたのも自分自身。


なら何処の馬の骨かも分からないこいつから聞いたところで全くの無意味。


「なるほどねぇ…」

「私からすればできるだけ早く理由は知っておいた方がいいと思うんだけどなぁ。」


イアが何でそんなことを知っているかなんて俺には知る由も無い。

ただそれよりも今は彼女は何者なのかと言うことが気になってしまった。



「まぁ今はまだいいか…」


「何か言ったか?」


「ん〜別に〜?」


ふとイアが何か言った気がしたがはぐらかされてしまった。


そうして俺は考え込んでしまいしばらく沈黙が流れた。



しばらくして先に口を開いたのはイアだった。


「さて…そろそろ続きを…って言いたかったけどなんかやる気なくなっちゃった…」



「俺からすればありがたい限りだな。」

どうやらこれ以上殺し合いをせずに済みそうだ。


「う〜んまぁいっか…」


「そうそう君は残りの数ヶ月間どうするかちゃんと考えた方がいい。」


「何をするにせよ君は何もかも足りないのだから」

「それじゃぁね」



そう言うと彼女は音もなく消えた。



「ハハ…本当に何だったんだ…」

「それに…何もかも足りないか…そんなことはわかってるんだ…」


もっと俺が強ければ追放されることもなかったのだろうか。

頭の中で過去の後悔が駆け巡った。




「はぁ…とりあえず調査だけ進めるか。」


俺は当初の目的の調査だけら進める事にした。

とりあえずは石版だ。



「うーん…何も無いな。」


それは初めて来た時のまま古代の文字の書かれたただの石版だった。



一応触れてみる。


しかし何も起こらない。




他の場所の調査を進める。




しかし…


「まぁ何も無いよな。」




文字通り何も無くただのダンジョンだった。




「振り出しか…」


予想はしていたがダンジョン自体に新しい収穫はなかった。


それでも、全てが完全な無駄だった訳では無かった。

イアに会えたことは大きな収穫と言ってもいい。


ただこれ以上の調査は無駄だろう。




「とりあえず戻るか。」


そうして俺はダンジョンを後にした。


―――――――――――――




「はぁ…これからどうしようか…」


俺は宿のベットの上で天井を見つめていた。

どれくらいこうしているだろうか。


俺は強くなる方法を考えていた。



俺は復讐を果たすために強くなりたい。

殺すにせよ痛い目に合わせるにせよ力は必要だからだ。

そして期間は数ヶ月…


それは2ヶ月後かもしれないしはたまた半年後かもしれない。



正確な時期が分からない。

なら早めに見積もった方がいい。


2ヶ月ぐらいだと仮定しよう。


だがそうすると短期間で強くなるあてがない。



本来なら地道に依頼の難易度をあげて鍛えるのだがそれは確実に間に合わないだろう。

そして何よりリオ達よりも早く強くならなければいけないのだ。


彼らと同じ方法では確実に間に合わない。



「やっぱり占い師とイアを探すのが手っ取り早いか…」


占い師なら何か助言して貰えるかもしれない。


イアなら強敵と戦うという経験が詰めるかもしれない。


ただそれも彼らを見つけられればの話で俺にはその手段が無い。

そもそも見つけた所で何かして貰えるという保証もないのも問題だ。



なら能力を開花させる方法を見つけるか?


いやそれもダメだ。

俺は正直自分の能力が何かもわかっていない。


イアの口ぶりからしてあるのだろうが今まで何も発現していないのだ。


そして俺は今までかなり色々な所を冒険したがそれでもあのダンジョン以外そんな場所は見聞きしなかった。


その可能性にはかけられない




「やっぱり無理なのか…?」


他の方法を考える


そうだ装備を整えるのはどうだろうか。

自分が弱いなら装備を強くすれば良い。


ただ相手も勇者。


そこら辺の装備じゃあってないようなものだ。


それに武器は手に馴染んだものが良い。


「厳しいか…」


そこまで考えた時だった。


「いや…一つだけあるかもしれない。」



俺はその可能性に気づいた。


思わず笑みが零れる。



「装備品なら最っ高の装備がまだ眠っているじゃないか。」


俺はすぐに宿を飛び出し冒険者ギルドに向かった。

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