第11話 決意

次の日


俺は何も考えがまとまらないまま始勇祭の警備に当たっていた。



「今の所は特に何もおかしなところは無いな。」


有難いことに昨日と違い何も起こらない。



ただ今の俺にはそんな事どうでもよかった。

朝からずっと占い師の事だけを考えている。

今はそれだけで頭がいっぱいだった。


「今は警備に集中しよう…」


一息ついて前を向く。


それからしばらく見回りをしていると…


「やぁレイじゃないかぁ?」




ふと背後から声が聞こえる


嫌な声だ今俺はこいつの話のせいでこっちは頭を悩ませてるって言うのに…




「何か用か?『勇者サマ』?」




振り返るとそこには勇者パーティーが居た。


彼は嫌な笑みを張りつけて


「いやぁね?弱すぎてやっていけなかった君が警備をしていると聞いたから気になってね?」


本当に嫌な奴だ…


俺がパーティーにいた時はこんなやつじゃなかったのにな……




「そーそー!あの雑魚レイがどうしてるか気になっただけだよw」


「あっ!そんなに拳握りしめちゃった悔しいの?悔しいよねぇ?あは♪そんなに悔しいなら雑魚らしく大人しく暮らしとけばいいのにねw」


ミラは楽しそうに笑っていた…



「ミラ本当の事を言ったらダメじゃないかw彼も本当に怒るかもよ?」


「まぁ彼が怒ったところで…だけどねw」

リオは今にも吹き出しそうに腹を抱えている。




「……黙れよ…殺すぞ」

俺は殺気のこもった声でそう静かに呟く。




「まぁまぁ落ち着きなよ?僕達は忠告しているんだ身の丈に合った生活をしろってね」


「僕の言いたいことはそれだけさ。それじゃせいぜい頑張れw」



そう言って彼等は去っていった。



「本当に変わっちまったな……」


怒りと同時に虚しさが込み上げる。




「いッ……」


ふと拳を見るとたらりと血が流れていた。



「はっ……なんでこんなにも…ハァ」



俺はその場から離れた。


それからしばらく見回りをしたが特に異変は起きなかった。


正直有難い。


多分今犯罪者が居たら俺は加減ができなかっただろうから……




――――――――――――――――――――――




「こんばんはライラさん。話ってなんですか?」


俺はライラさんに呼ばれ冒険者ギルドに来ていた。




「こんばんはレイさん。実は明日からはもう警備の仕事はしなくて大丈夫という事をお伝えしようと思いまして。」




うん?


もしかして俺何かやらかした?


いや確かにリオ達に殺すとは言ったがそれで警備から外される?向こうが煽りに来たのに??


そんな風に焦っていると


「心配しなくてもレイさんに何か問題があった訳じゃないですよ?むしろこちら側に問題があると言いますか…」



どうやら考えすぎだったらしい。


俺はほっと息胸を撫で下ろす。


「冒険者ギルド側に問題ですか?」


そう聞くと彼女は気まずそうに答えた。


「実は6日間の警備の予定だったんですけどその部屋に泊まってもらう人の仕事が準備期間の3日だけだったみたいで……」


なるほど…

あれ?

ということは俺明日から宿無し?

だとしたらあそこに行くはめに……


いやいや結論を急ぐな俺!

まずは聞いてみよう。


「もしかして宿も無くなる感じですか?」


「いえそちらに関してはそれ以降の予約がなかったのレイさん次第で引き続き利用できますよ。」


とりあえず宿は使えるのか。


良かった。

ガッツポーズするぐらいには嬉しい。

だが今は心の中に留めておこう。


となれば早速宿の予約を延長だ。


「なるほど!ありがとう。今すぐ行ってくるよ!」

「はい!でも行く前に…これ今回の依頼の報酬です。それではお気をつけて!」


「あぁ助かる!」



そうして俺は多少の金の入った袋を受け取って冒険者ギルドを飛び出した。




―――――――――――――――――――――――




あれから宿の契約をして俺はベットで仰向けになっていた。


ここ数日で色々なことが起きたせいで知りたいことやらなければいけないこともかなり増えた。


「とりあえず状況を整理しよう。」


今俺が知っている情報は


リオ達勇者パーティーが数ヶ月後にある魔族侵攻により全滅する。


リオンという占い師は場合によってはすぐに会える。


という事だけだ。


そして知りたい事は


占い師の正体となぜ未来の出来事を知っているのか。

そして具体的にどうすれば会えるのか。

俺はダンジョンで何か見つけた物はあったのか。


と言ったところだ。



じゃあ俺は何をやるべきか。


それは簡単だ。


もう一度ダンジョンを調べる事と身体を鍛えされすればいい。


占い師のことを調べるのもありだが冒険者ギルドの情報網を使っても手がかりは掴めなかった。


その時点で俺にはどうしようもないだろう。


「そうと決まれば明日早速向かうか。」


ダンジョンの攻略の準備のアイテムを買う金もある。


問題があるとすればダンジョンで何も見つからなかった時だ。

まぁこの場合のことは今考えても仕方ない。


「ふわぁ……眠いな」


時計を見るともうすぐ日が変わろうとしていた。


流石にもう寝よう。

俺はゆっくり目を瞑り深い眠りに落ちていく。




―――――――――――――――――――――




俺は目を覚ました。

はずだった。


目を開けるとそこは長い長い光の道で周りも眩い光が満たされていた。


「これは…夢か……」


夢の割に意識ははっきりしている。

これは明晰夢と言うやつだろう。


ただ夢だとすると不自然だ。


ここはあまりにも俺の知っている物が無さすぎる。

周りを見ても光以外の物が見当たらないのだ。

夢ならもう少し何かあってもいい気がする


ただここにいても仕方ない。


「とりあえず進もう。」



少し歩く。

ふと先を見つめると何かがあるのが見えた。


俺はそれに向かって再び歩き出そうとしたがどうやらそろそろ目を覚ますらしい。


俺は強烈な睡魔?に襲われ意識を失った。


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