勇者パーティーを作った俺が勇者パーティーを追放された件
咲夜
第1話 勇者パーティーを追放される
「お前はクビだ今すぐ出ていけ」
それは勇者パーティーとしてようやく軌道に乗りしばらくした頃のことだった。
いつも通り依頼をこなしようやく魔王の手がかりを掴んだクエストを達成した日の夜にそれは起こった。
俺達は宿で休んでいたその時俺は勇者に呼び出された。
呼び出された部屋にはパーティーメンバー全員が揃っていた。
俺達のパーティーは俺含め5人だ。
タンクのガウスは大楯を使い敵の攻撃を一身に引き受けるチームを守る頼れる男だ。
ヒーラーのアリス彼女はチームの状態異常や傷を直してくれるチームの生命線。
魔法使いのミラ彼女はまだまだ幼いがそれぞれの属性ごとに5段階あると言われる魔法の内既に2段階目までしかも全ての属性を扱える天才少女だ。
そして勇者のリオ、勇者とはとある血縁を元にする人間で全体の1%ほどいるそして血が濃いほど強い能力を発現するリオの場合は薄過ぎず濃すぎずと言った感じでそこそこの能力を持っていた。彼は俺の幼なじみだ
そして最後は俺レイこのパーティーでは相手や味方に状態異常をつけてサポートに徹していたのだが…
俺レイは勇者のリオからクビ宣告を受けることになった…
「待ってくれ…どういう意味だ?このパーティーを作った時から今までずっと一緒にやって来たじゃないか…!」
そう俺はこのパーティーができた時の初期メンバーだった。
そんな狼狽える俺に対してリオは座り机を蹴りながら。
「本気で言っているのか?ろくなサポーターも出来ず特別な能力も使えずにずっと足を引っ張っているお前が?」
そう苛立ったように睨みつけている…
ガウスもその通りと言わんばかりに
「そうだ!お前はこのパーティーの足を引っ張るだけで本当にどうしようも無いやつだ」
彼はそう言いながらゴミでも見るように見下していた。
「だ、だが俺なりに…!」
そう反論しようとしたがミラが遮って
「そうそう、あんたの力が無くても何一つ困らないし無駄なのよ」
「はっ…なん…だよ…それ」
渇いた声がこぼれる
そこに追い打ちをかけるようにアリスが
「それに仮にその能力が必要だったとしても私たち4人よりもあなたのダメージが多すぎてそちらに割く魔力を考えるとマイナスなんですよ」
確かに俺は皆よりダメージをよく受けていた…でもそれもサポートの際にできた傷で良かれと思ってやっていた。
「まぁそういう事だ!そして改めて言おう!お前はクビだ!」
そうリオは俺に再度そう告げた。
なぜ?どうしてこうなった?俺はこのパーティーを勇者とともに設立した時からずっと一緒にやって来た…
なのにどうして?頭が回らない…
確かに俺は周りよりも弱かったそれでも一緒に仲良くやっていたはずだ。
少なくとも今までこんな仕打ちを受けたことは無かった。
俺は何も考えられなかった。
ただそんな俺に勇者は
「まぁ今回の件はレイに非があるとは言えこちらの独断だ、それに最初の方は確かに世話になった…だからせめてもの情けで1週間分の宿代を用意しよう」
そう言って金の入った小袋を机に放り投げた…その衝撃で少し小袋の口が緩みそこから多少の銅貨と少しの銀貨が顔を覗かせていた。
なんだよ…これ…
確かに俺は皆の足を引っ張っていたのかもしれないそれでもそれにしてもこんな程度のはした金で…
俺は悔しかった。
ただ彼らの目を見ていると今更どうしようも無い事はわかった。
「わかった…今まで世話になった…」
俺はそう言って小袋をもってぐちゃぐちゃの感情のまま外に出た。
「必ず復讐してやる…」
俺は少し街を歩いていたそして落ち着いて気持ちを整理していたが落ち着けば着くほど勇者達に対する憎悪が湧いていた…
ただ俺は弱い為にあのパーティーをクビになったのだそんな今の俺ではどう足掻いても彼らには勝てない。
それでも俺は周りの冒険者と比べてならそこそこ戦えるレベルではあったが。
彼らは勇者パーティーだ、そこら辺の冒険者なんかよりは遥かに強い。
そこまで思って俺はある事を思い出した。
それは昔勇者と2人の頃あるダンジョンに潜って潜在能力が覚醒した事だった。
確かあの時は勇者は能力を覚醒させたのに対し俺はこの味方や敵に状態異常を付与する能力だった。
ただこの能力は他のほとんどの人間が持っていて自分は他よりは強いぐらいなので潜在能力とは言えない代物だ
今思えば俺だけこの程度だったのは不自然だ少し調べた方がいい気がしてきた。
「他にあても無いし行ってみるか…」
そうと決まれば早速準備をしよう。
しかしアイテムを買いに冒険者用の店に来たが閉まっていた。
そこには張り紙がしてあり。
「『アイテム採取の通り道にモンスター出現の為閉店中』か…」
どうやらアイテムを準備するにも簡単に行かないらしい
流石に運が悪くないか?
まぁいい…。
とりあえず依頼が入っていることを予想して俺は冒険者ギルドに向かった。
「レイラさんこんばんは!」
俺はそう受付嬢に声をかけた。
「あら?レイさん?!こんばんは!
聞きましたよ…勇者パーティ追放されたんですって?」
彼女とは勇者パーティー結成当時からの知り合いだ
なので彼女に追放されたことを知られているのは恥ずかしい
「あぁ…耳が早いな…」
「まぁ古い付き合いですからね…」
「まぁそれより少し聞きたいことがあってきたんだ。最近雑貨屋から魔物が出たって言う依頼は来てないか?」
「それなら今日のお昼頃に来ましたねただ…」
「何かあるのか?」
「実は最近魔物が活発なせいで人手が足りてない上確認された魔物以外の魔物の乱入が増えてきてるので簡単に任せられないんです…」
「なるほどな…」
どうやら俺たちが冒険している間にかなり状況が変わっていたらしい少なくとも数年前はそんな事有り得なかった…
俺は少し考えて。
「今確認されている魔物の種類はなんだ?」
「え〜今の所はゴブリンですね。ただこの平原の近くに森があるので森の魔物が乱入してくる可能性はあります」
「森か…」
森にはトラの魔物がいる事が多くもし乱入されるとゴブリンとは比にならないレベルの危険度になる。
ただ俺はこれでも元勇者パーティーだこの程度なら安全に勝てるだろう。
「わかったこの依頼受けるよ」
なので俺はその依頼を受けることにした
「わかりました。ただ、今日はもう遅いのでまた明日でお願いします流石にこの時間には規定により送り出せないので…」
「ああ、そうするよ」
「後言い忘れてたのですが冒険者用のアイテムが街で買えないためこちらで支給するので明日出発前にまたここに来てくださいね」
「それはありがたいな。それじゃあまた明日ここに来る」
俺はそう行って宿に戻った
――――――――――――――――――――――
「それにしても宿も早く変えないとな」
俺はベットに入りながら呟いた。
流石に追放されたパーティーのメンバーと同じ宿は気まずいどころじゃない明日の朝に宿主に相談しよう
そんな事を思いながら俺の意識は落ちていった…
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