群像独演

須藤 摂

群像独演




はじまりの砂漠は遠く薄闇に沈む舞台袖にて、逆光





郷愁とーあとなんだっけ、悔恨だ あれで4点落としたんだよ





3限目 白紙の進路踏み敷いて平行を知るわたしの机





カーテンをあわく染め抜く群青よ 耳をふさいでくれる嵐よ





あのひとつ解答欄が余ってて。とりあえずカニ描いときました





まっさらな喉に詰まった永遠の屈折率をしっている声





灰色の鶴は翼に【死者1人 不明2人】と刻まれて座し





結末がひとつ変わっているらしい図書館と青看板の街





影のある神様とゆくアスファルト 問わないでいる ただ蝉時雨





向日葵のむこうで君は振り返り「ねぇ嘘みたい?」 うん、夢みたい





インターホン 時間指定の祝福に居留守を使う臆病のまま





靴下が奇数の朝だ偶数のコーヒーを淹れ今日は快晴





声よりも遅い頭がふと辿る ラッシャーセとは何語だったか





ぬるい水 きれいに使わない奴は消されるトイレ ハンカチを噛む





「パピコとか食べる人です?」「いま食べる人になったのでもらいます」





心臓はこのへんですねそうですよそうですかじゃあいきますよはい





紙吹雪 拍手 花束 うめき声 カーテンコール、非常口より





陽光はとろけてかすみ僕たちはまだ生きている 折り鶴に骨





第四の壁って何でできてるか知ってる? なめると甘いんだあれ





ヴェネツィアに吹く風 九十六点の紙飛行機へ よい旅を、また!



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群像独演 須藤 摂 @nyowaaa

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