第56話 誓い

 私は医務室へ駆けつけた。


「どうですか?」

「出血は止まってるんだから、安静にしておけば落ち着いてそのうち治るよ」

「なっ、治療班なのに怪我の状態を把握出来ないの?剣で腹部を刺されたところを、私は止血処置をしただけって説明したよね?医務室へ連れてきてからは何も治療してないの?」

「心外だな……出血が止まってるんだ!今更、何をする必要があるんだ?」


 ズブのド素人みたいな事を言う医療班の男に声を荒げながら、ここからは私が治療すると伝える。


「体内の傷まで治療出来てる訳が無いじゃない!素人が医療班を名乗らないでよ!私が治療するから部屋から出て行って!」


 私は治療をしてない医療班に退室を促して、スレイン様の状態を確認する。患部を触診してると医務室へセレン様がやって来てた。


「レン……スレインの怪我は大丈夫なの?」

「医療班が何も処置をしてなかったの……臓器の損傷が酷いのかも、かなり悪化してる……でも、私が必ず治してみせるから安心してね。」

「レン……お願い、スレインを助けてあげて……」


 泣き崩れるセレン様を優しく抱きしめてから、耳元に優しく語りかける。


「セイレーン様、の名に誓ってスレイン様を必ず治すからね」


 そう言ってから、私は左眼の〘聖眼〙を解放して治療を始めたの。使う力は〚希望〛、これは私の望みを叶える事が出来るもので、〘聖眼〙を行使しするには対価が必要みたいなんだけど、対価が何かはまだ判ってないの。


 ママからは対価が判るまで〘聖眼〙を使うのは控えるように言われてたけど、私は友を治療する為に迷わずに力を行使する事にした。


 私はスレイン様の患部を押さえながら〘聖眼〙の力を行使する。


「セレスティア.Z.シルヴァニアは〚希望〛の力を行使して、スレイン.キングストンの傷を癒やす事を切に願う!」


 すると、スレイン様の患部が輝き出したの。患部の輝きは徐々に薄らいで最後は消えた。私はスレイン様の状態を確認しようとすると、顔面蒼白で意識を失っていたはずのスレイン様が目を開いたの。


「セレン?僕はあれから……」

「怪我して医務室へ運ばれたの。傷は治療したから安心して眠ってくださいね」

「あぁ……スレイン!意識が戻ったのね……心配してたのよ〜」


 意識が戻ったスレイン様、セレン様は泣きながら抱きついたの。2人の様子を見て私は素直に喜びを噛み締めていたの。少し落ち着いたセレン様は私の方へ振り向き確認する。


「レン……その、先程の事は?」


 セレン様は、私の行った奇跡を力の事を聞いてきたの。私はただ無言で首を振る。それを察したセレン様は何も言わずに頷いてくれた。

 セレン様は私が何者かを知ったかもしれない……だけど、セレン様なら誰にもこの事を話さないと信じたの。


➖➖➖➖セイレーン視点➖➖➖➖

 レンがスレインを治療する行為を見守る。


『セレスティア.Z.シルヴァニア』それが本当のレンの名前。『シルヴァニア』って、レオーネ王国に滅ぼされた聖都シルヴァニアの出身なの?

 

 レンが言葉を発し終えると、スレインの患部を押さえるレンの手が光り輝いたの。輝きは徐々に薄らいで最後に消えていった。


 すると、生気を失っていたスレインが意識を取り戻したの。私は奇跡を目の当たりにしたので、レンに確認すると無言で首を振る……私はその意味を理解して頷いたの。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る