第3‐4話 5月5日その4

 号砲がなって、流鏑馬が開始される。

流鏑馬の馬場は長さが大体150mぐらいで的は2か所。

馬に乗ってその的を弓矢で射貫くもので、神事としても執り行われている。

鎌倉時代から続いてるらしく、現在は神社の5月のお祭となっている。


 私が流鏑馬祭をちゃんと見たのは小学6年生以来。

お祭自体には来てるけど、屋台を巡って買い食いするだけだった。

それが今年は夕と一緒に見に来てるけど、これってやっぱりデートかな?

でも、夕は中の言い友人とお祭に来てるって思っているかもしれない。

ただ、いまの私の立場を考えると、こうしてお祭に来ているだけでも楽しい。


 放送が入り、最初の試技が行われた。

最初の馬が駆けだすけど、1つ目の的ははずしたものの、2つ目の的は命中させたが

思ったより速くて、目で追うのがやっとだった。


「こんなに速かったけ?」

「うん、結構速いよ~。わたしも追えなかった~」


時間にしたら多分、20秒ぐらいしかなったかな。

しかも、両手を離して弓を射るからすごい。


「流鏑馬ってこんなにすごかったんだ」

「うん、思ってるよりもすごいよ~」

「今までちゃんと見てなかったから、見に来てよかったかも」

「でしょ~」


 今までは食べる事しか興味がなかったけど、地元の文化にもっと興味を持った方が良かったかな。


 その後も試技が行われるけど、2つの的を全ている人もいれば、1つ外す、1つも命中しないなど見て面白い。

終わるのは大体16時30分ぐらいだけど、16時ぐらいになったら


「そろそろお馬さん見に行こうね~」


と言って、夕に連れられて馬の待機場所に再び来た。


 試技を終えた馬が繋がれていたけど、確かに大人しい。

これなら私も触れるかも。


「本当に触っても大丈夫?」

「お馬さんは大きな音が苦手だから~、大きな声出しちゃダメだよ~」

「うん、わかったわ」


そっと顔を触ってみたけど、確かに大人しい。


「だ、大丈夫だったわ」

「でしょ~。せっかくだから、写真撮ってあげる~」

「うん、お願い」


夕がスマホで写真を撮ってたけど、私の顔はちょっと引きつてった。


「もう1枚撮るから~今度は笑ってよ~」


今度は出来るだけ笑ってみたけど、さっきよりはいいけど笑ってるとは言いにくかった。


「笑ってるつもりだけど、なんか引きつってる・・・」

「お馬さんは大人しいから、大丈夫だって~」

「頭ではわかってるけどね」


 頭ではわかっていても、ついつい心の奥ではやっぱり怖がってるみたい。

でも、今、写真を撮った白い馬は確かに大人しかった。

あと、間近で見ると、やっぱり大きい。


「白い馬は珍しいけど、よく見るとちょっと黒いわね」

「芦毛って言う馬らしく、お父さんが言うには普通より、毛が白くなるのがはやいんだって」

「だから、ちょっと黒っぽいんのね」

「あと、奥にいるこい茶色が栗毛で、それより薄いのが栃栗毛、栗毛っぽいけど脚に白くなってるのは鹿毛かげっていいんだよ~」

「夕は詳しいわね」

「お父さんに教わったり、ネットで調べたんだよ~。だた、奥の黒っぽいのは青鹿毛なのか、青毛なのかはわからないけどね~」


 夕がスマホで画像を検索して見せてくれたけど、確かに区別がつかない。

ただ、私としては厳密に毛の色を知らなくてもいいと思うけど。


「お父さんと競馬のお馬さんの話をするから、ついついどの毛色かたしかめたくなったってね~」

「お父さんは競馬が好きなの?」

「大分好きで、遠いけど家族旅行兼ねて、競馬場にいくぐらいだしね~。」

「競馬場って家族で行く所なの?」

「今は家族でも行けるし、食べ物は美味しいし、お馬さんと触れ合えるかよ~」

「へー、そなんだ」


競馬場は賭け事をする所で、家族で行く所じゃないと思ってたけど今は違うんだ。


「だから、こうやってお馬さんを近くで見らるいい機会なんだ~」

「確かに、普段は見ないからわかったわ」


 年に1度とはいえ、近くでお馬さんに触れられる事がで着るのは確かにいいかも。

く見るとお馬さんも可愛いし、身体に触れたら本当に筋肉だったな。

ただ、やっぱりまだまだ怖いけど、気を付ければいいだけかな。


「お馬さんに触れれたし、時間的にそろそろかえろうか~」

「屋台めぐりしはしないの?」

「したいけど、また明日でいいよ~」

「明日も会うって事?」

「明日は家族でくるんだ~。今日は温海ちゃんと来たかったし、お父さんも用事があって一緒に行けなったから~。あと、温海ちゃんばかりだと~お父さん、すねちゃうし~。私は一人っ子だからね~」

「ははは・・・」


 私は笑うけど、一人娘じゃ父親も甘やかすのかな。

それに、夕はお父さん子だから、お父さんと一緒に居るのも好きみたい。

クラスの女の子はあまりお父さんの事良く言わないけど、私からしたら常に仕事で忙しくしてて

話せる機会も少ないから、羨ましい思うけどな。

私はお姉ちゃんに面倒を見てもらったから、お姉ちゃん子かな。


「それじゃ、帰ろうか」

「今日も家までおくっていくわよ?」

「今日はいいよ、遅くなるし~」

「そうね、わかったわ。ちゃんと帰りなさいよ?」

「大丈夫だって~、学校から帰るのと一緒だし~」


神社はわたし達の通っている学校の近くで、夕の家の方向だと通学路になる。


「ならいいけど、これからも休みの日に会ってくれる?」

「誘われたらいくよ~。そのために、温海ちゃんと仲良くなったからね~」

「あ、ありがとね」


なんか恥ずかしくなるけど、私も夕と会えてよかった。


「それじゃ、またね~」

「うん、またね」


私は笑顔で夕と別れたけど、そういいえばあの時以来ほとんど笑ってなったな。

笑顔が戻ったという事は、夕のお陰かな。

もし、夕と会ってなかったら、今でも笑う事はなかったかもしれない。

私に笑顔を戻してくれて、ありがとう、夕。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る