第84話 勇者の問い

『レベルアップしました』

『ダンジョンクリアボーナスを与えます』

『ソロクリアボーナスを与えます』

『装備:星屑の剣』

『スキル:悪魔の手Lv10』






 王都近隣にある二重ダンジョン〝陰の淵・奈落〟のボス、ナイトメア・アビスを倒した。


 イレギュラーな要素を含めた上でなんとか勝利を収め、重症を負いながらも生き延びる。


 口から流れる血を吹きながら、俺は正面を見た。


 視線の先には、崩壊していくナイトメア・アビスと、その死体の上に突き刺さったひと振りの剣がある。


 漆黒の剣だった。


 ナイトメア・アビスを彷彿とさせる宇宙を描いた黒い剣。


 不思議と視線が引き寄せられる。見るだけで強力な武器だということが解った。


 ——あれが欲しい。


 そう思った俺は、痛む体に鞭を打って立ち上がる。治癒スキルを発動する時間も惜しんで剣のもとへと向かった。


「なんだこれ……」


 これまでのシステムとは少しだけ報酬の出現方法が異なった。


 いままでは自動的にインベントリの中に装備が突っ込まれていたのに対して、今回はドロップのような形で現れた。


 この武器がそれだけ重要なものなのか、たまたまナイトメア・アビスがそういう仕様だったのか。


 答えはわからない。どうでもよかった。


 それより何より、俺は目の前の剣を引き抜く。


「綺麗な剣だな……これが今回の報酬か」


 名前は星屑の剣。


 その名前どおり、剣身にはまるで宇宙を彷彿とさせるような模様と怪しい光が描かれていた。


 視線どころか何もかもを引き寄せてしまいそうな怪しい雰囲気がある。


 どれくらいの性能なのか楽しみだ。


 ……それと、


「スキルもなんか凄いな」


 初めて、獲得した時点でスキルレベルマックスのものを手に入れた。


 スキル名は悪魔の手とやや不安を煽るような名前だが、これまで手に入れたスキルはすべて有能だったのでかなり期待できる。


 ひとまず、目的は達したので外に出よう。いつまでもここにいると、またナイトメア・アビスが復活してしまうから。


 踵を返し、俺は地上を目指して帰路に着く。






———————————————————————

名前:ネファリアス・テラ・アリウム

性別:男性

年齢:15歳

ギフト:システム

Lv:57

HP:6900

MP:3190

STR:120

VIT:80

AGI:100

INT:51

LUK:51

スキル:【硬化Lv10】【治癒Lv10】

【状態異常耐性Lv10】【危険察知Lv6】

【剣撃Lv10】【火属性魔法Lv5】

【呪いLv7】【悪魔の手Lv10】

ステータスポイント:21

スキルポイント:34

———————————————————————


———————————————————————

武器:【亡霊の剣】【星屑の剣】

頭:【魔法の耳飾り】

頭:【死神のイヤリング】

腕:

手:

胴体:

背中:【闇のマント】

足:【人狼の脛当】

———————————————————————







 ダンジョンを出て王都に戻る。


 すでに傷口は治癒スキルで治してる。街中を血だらけで歩いたら、衛兵に捕まって団長に迷惑をかけるからね。


 それでも疲労までは治せない。とぼとぼと疲れた足で騎士団の宿舎を目指す。


 しばらく歩いて宿舎の前に到着した。


 すると、


「…………ん? あれは……」


 宿舎の前で見覚えのある金髪が見えた。


 誰かは遠目でもわかる。


 なぜか勇者イルゼが入り口のそばに立っていた。わざわざ入り口の前で待っているあたり、誰に用件があるのかもわかるな。


 一応、違うことを祈りながら宿舎に近付くと、こちらに気付いた勇者イルゼに話しかけられる。


「——あ! おかえりネファリアスくん! 遅かったね。どこかに行ってたのかい?」


「イルゼ……ああ、ちょっとダンジョンにな」


 やっぱり用があったのは俺か。


 団長に用があったら外ではなく中にいるはずだからな。予想どおりとはいえ、今度は何事かと身構えてしまう。


「ダンジョン? 訓練もあるっていうのに凄いね。その貪欲さが君の強さの理由かな? エリカから聞いたよ。入団する前に何人もの団員を叩きのめしたって」


「団長様に命令されてな。それより、こんな所までどうしたんだ? なにか用か?」


 談笑もそこそこに本題を切り出す。


 さっさと話して俺を休ませてくれ。


「あはは……実は、ネファリアスくんに話があったんだ。話っていうか、相談、かな?」


「相談?」


「うん。ちょっと近くを歩こうか。時間いい?」


「……大丈夫だよ」


「よかったぁ。ありがとう、ネファリアスくん」


 勇者イルゼはどこか影のある顔で、それでも心の底から喜んでくれた。


 俺とイルゼは並んで歩き出し、特に目的もなく人目を避けて路地裏に入る。


 するとそこで、勇者がぎこちない声で俺に訊ねた。シンプルな問いを。




「ねぇ、ネファリアスくん……君は、怖くないの?」


———————————————————————

あとがき。


宣伝宣伝宣伝!

反面教師の新作をよかったら見てください!応援もしていただけると嬉しいです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る