Blue Tears

翠姫

第1話 プロローグ

ねぇ、覚えてる?

あの夜見た満月の日の海を・・・

月の光がまるでオーロラの様に輝いて、その光を受けたキラキラと光る海・・・

まるで誰かが手招きしているかの様に、吸い込まれそうなあの光を・・・

あの水面を。


あなたとはたくさんの海を見た。

朝焼けの海、昼間の賑やかな海、夜の静けさに包まれた海・・・


 でも、あれからあの光もあの海も、二度と見る事は出来なかった。

そう、あれは本当に奇跡だったのかもしれない。


四月 ー 足を止め、満開の桜を見上げた。

思えば、暁との出会いもこんな日だった・・・

 あの日も私は足を止めて、満開の桜を見上げていた。

突然足を止めた私の肩にぶつかった人・・・

それが暁だった。

 私が十八、暁が二十歳の時だった。


 そんな暁との出会いは、私には特に印象に残る事でもなく、同じ職場になった暁に言われて、そんな事もあったかも・・・という程度だった。

 あの時から、私達の長い物語が始まっていたなど、思いもしなかった。

今でも胸を締め付ける様に切なく、悲しい運命の出会いだった。


 運命の出会い、運命の人・・・

幸せな響きで、幸せな未来を想像していた。

けれど、必ずしも幸せな未来が待っているわけではなかった・・・

 ならば、出会わなければ良かった?

私はその問いにすぐに答える事ができる。


「あなたと出会えて良かった。」と・・・ 

あなたは同じ気持ちではないかもしれない。

けれど、私達の思い出に少しだけ耳を傾けてもらえますか?

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