第13話 奪還作戦?

龍騎と三日月。

というか一先ず龍騎だが。

俺は奴の恐ろしさを垣間見た。


龍騎は.....狙った女子と男子.....というか。

人の全てを食い潰して生きている。

余りに外道且つ非道な事をしていた。


その事にアドレスを交換していた伊藤先輩と話す為。

俺は翌日の朝に近所の公園に来た。

土日で緊急収集会議だ。


「やあ」


「.....伊藤先輩。すいません。朝早くから」


「.....いや。.....それは構わないが君が書いていたのは事実かね」


「女性の心もそうですが何もかもを食い潰して生きています。.....奴はもう親友じゃない。.....悪魔です」


「.....心を蝕んで乗っ取る.....か。確かに非道だな」


俺に対してそう言う伊藤先輩。

小学生の様に見える服装だが.....でもしっかり大人だ。

考える顔がそう見える。

俺はその様子に伊藤先輩に聞く。


「どうしたら良いと思います?」


「正直もう大人の力を借りないと無理だと思えるね。でもそれをした所で.....どうにかなるのかな.....とは思うがね。警察などに訴えるには証拠が無い上に.....しかも彼はあくまで慈善事業と謳っている。そうなると厳しいね。先生方も信用するかどうかは分からないから.....言ってみる価値はあるかな、と思うぐらいだね」


「.....ゴミクズですね.....どいつもコイツも」


「仕方が無い。社会は所詮はそうなっているからな」


そんな事を言いながら伊藤先輩は何か複雑な面持ちになる。

俺はその姿を見ながら、?、を浮かべたが。

直ぐに伊藤先輩は気を取り戻したので聞く隙が無かった。

伊藤先輩は俺に向いてくる。


「君はどうしてあげたい。.....彼に」


「アイツが戻って来るとは思いませんが。だけど.....取り敢えず堕とすだけ堕としてやりたいです。それがアイツへの最後の礼儀だと思います」


「.....そうか。.....なら地獄堕とそう。そうなると協力が要るね。.....例えば被害に遭った女子とかね」


「そうですね。.....俺もそれは思います。情報を集めましょう」


「幸いにも美鈴が居るからね。こっちには。.....何とか聞いてみよう」


「確かにそうですね」


そして俺たちはベンチに腰掛ける。

それから前を見る。

子供達が遊んで居る姿が見えた。

その姿を見てから、美鈴もあんな感じで元気だったよ、と苦笑する伊藤先輩。

俺はその言葉に、!、と浮かべる。


「.....でも彼女は.....地獄の渦に嵌ったからね。.....それから足を滑らせて落ちてしまった。.....だからこそ彼には仇返しをしないと」


「.....ですね」


「まあこれも君の言った通り礼儀だと思うから」


「.....そうですね」


そんな会話をしながら居ると。

おっとそうだった、と切り出してから飲み物をポケットから出す。

そして俺に勧めてくる。

スポドレだ。

俺は、これは?、と聞くと。


「君が好きな物が何なのか分からなかったからね。.....私はブラックコーヒーが好きなんだが.....年齢的に君に合う訳が無いと思ってね。コチラにした」


「.....良いんですか?」


「何。日頃のお礼さ」


「.....そうですか.....なら今度返します」


「要らないよ。君は十分私に貢献してくれている」


それから笑みを浮かべる伊藤先輩。

俺はその姿に見ていたがそのうちに、有難う御座います、と俺は回答した。

そして俺は飲み物を受け取ってから飲む。

息を吐いた。


「.....取り敢えず若宮に対して逆襲する下準備もしないといけない」


「.....そうですね.....」


「.....」


「.....」


そして沈黙。

俺達は前を見ていると。

横から誰かがやって来た。


それから俺達に聞いてくる。

あの、と言いながら。

2つ編みの髪の毛の丸メガネの少女。


「.....?」


「.....その。.....えっと.....えっと。宮藤先輩と.....伊藤先輩ですか.....?」


「ああ。そうだな。.....君は誰かな?」


「.....私は.....舞鶴荻(まいずるはぎ)と言います。.....その。山﨑三日月の親戚です.....」


「三日月.....え!?」


たまたま考えていた時にお見掛けしたので声を掛けさせて頂きました.....、と舞鶴という少女は回答しながら俯き加減で俺達をそれぞれ見てくる。

足元にはよく見るとトイプードルが居た。


犬の散歩中だった、という事か。

俺は思いながら舞鶴を見る。

ふむ。可愛いね。何方も。所で君は何年生だ?、と伊藤先輩が聞く。


「私.....1年生です。.....三日月さんに憧れて学校に入学しました」


「.....そうなのか」


「それはつまり美鈴と同級生だね」


「.....はい。噂はそこから聞きました」


「.....」


俺はスポドレを横に置く。

すると、美鈴さんの周りでは噂で蔓延しています。

若宮先輩と三日月さん.....の特に若宮の噂が、と眉を顰めた舞鶴。

そして舞鶴は顔を上げてから、お願いがあります、と俺と伊藤先輩を力強くそれぞれ見てくる。

それから頭を思いっきり下げる。


「お願いです。.....三日月さんは決して悪い子じゃ無いんです。彼女自身を取り返してほしいんです。モブの私にはもう.....手が届かないんです。.....無理なのは承知でお願いしていますが.....あの男に毒されたんです!」


「.....萩さん.....それは.....その。無理があるんだが」


「.....ふむ.....」


俺達は顔を見合わせて困惑する。

ここでイエスとか言える物ではない。

もうその次元を通り越している。

俺は詳しく話を聞くのもあって飲み物を買いに行った。



「もう滅茶苦茶です。若宮のせいで生活の何もかもが、です」


「.....そうなんだな」


「若宮龍騎だけは絶対に許せないです。私は滅多に怒らないんですが.....」


「.....」


「.....その。.....宮藤先輩の彼女だったのは知っています。.....それだけ.....三日月さんは良い人だったんです」


目の前でチコちゃん(トイプードルの名前)と遊んでいる伊藤先輩を見ながら。

俺はココアを飲む舞鶴を見る。

そして俺もスポドレを飲みながら前を見る。

確かに良い部分はあったけどな。


「.....舞鶴さん。.....聞いた話では良い人だと思う。.....だけど三日月はもう戻って来ないと思う。無茶だ」


「.....やっぱりそう思いますか」


「愛犬の散歩に.....そして保育士の夢.....それから.....誰にでも優しい。.....確かにその通りだった。仮にも昔はね。でも今はもうそんな彼女は居なくて彼女は救いようが無いんだ」


「.....はい.....」


舞鶴は萎れて黙る。

それから俺を見てくる。

俺はその姿に心が押し潰されそうになったが我慢してそして舞鶴を見る。

そして、仮にも、と立てる。


「仮にもアイツが土下座とかしてそして周りに謝って行ったら.....どうか分からないけど。.....アイツも被害者だと思うし」


「.....ですね」


舞鶴はそう言いながらスマホで何かを見せてくる。

俺はスマホの画面を観る。

そこには仲が良い感じの.....舞鶴と三日月の幼い2人が写っていた。

小学生時代だろうか。


「.....でも彼女を諦められなくて.....」


「.....」


「私は馬鹿ですよね。唯一の友達で初めて話が通じ合って.....振られた彼氏の様に未練タラタラですから」


「.....」


どうしたら良いか分かりません。

私はどうすれば。

その言葉に何も言えない。


考えながら戻って来た伊藤先輩を見る。

すると伊藤先輩は複雑そうな顔をしながら汗を拭いつつ、取り敢えずは考えるか、と伊藤先輩は俺を見てくる。

ラストチャンス。賭けに出るか、と言いながら。


「.....まあこれで戻って来なかったら三日月は諦めるしかないかな」


「.....マジですか?先輩」


「荻がこれだけ言っているのもあるがまあ.....私としての目的はもう一つあってね」


「.....え?」


「彼女を取り返して此方側の戦力にするんだ」


「.....!」


俺は驚く。

そして、それって本気ですか、と聞いてしまった。

伊藤先輩は、これは賭けだけどね、とチコちゃんを抱える。

それから、彼女がもし反省して反旗を翻したら私達に圧倒的有利だ。そうは思わないかね、と小悪魔的な笑顔を浮かべる。


「しかし三日月はまた叛逆する可能性が.....」


「.....大丈夫だ。そこら辺など.....取り返すきっかけには君も居るから。まあそれ以外の作戦は今後考えようとは思うが。だけどきっかけは大事だ」


「.....は、はい!」


荻は涙を浮かべて、有難う御座います!!!!!、と涙声になる。

俺はその姿を見ながら伊藤先輩を見る。

伊藤先輩は顔に付いた泥を拭いながら無邪気そうな笑顔を浮かべる。

そして真剣な顔をする。

だから色々な人が惹かれるんだろうな、と思ってしまった。

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