貼られた絵

いつものように引き出しの前に帰ってみると

引き出しは消えていた

鉄で作られたその枠が

ただそこに佇んでいた

忘れられたわけでなく

そこにあった引くものが

そのまま消えていた

傷も告知も無く


今日も引き出しの枠を見ていると

一枚の絵が貼ってあった

インクで書かれたその絵が

ただ風にたなびいていた


その絵には

私の入っていた

引き出しが描いてあった


私は恐怖を感じ

その絵の紙を投げ出した

そして涙を流した

あの頃が鮮明に蘇る


今日も引き出しの枠を見ていると

またあの絵が貼られていた

赤黒だけで描かれたその絵が

ただテープだけで貼られていた


その絵には

働いていたころの

私の顔が描いてあった


私は確信した

これを描いたのは塵の幽霊

誰かと言うのはわからないが

そんな気がしてるんだ

砂が乗っている


私は確信した

これを描いたのは死を経験した

証拠は何もないが

そんな気がしてるんだ

そのペンの質感

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