久人会不

[私が書いていると

 誰かが私の元へ来た

 私はその来た男が

 私の詞を読むのを

 ひたすらに見守っていました]


<誰かが引き出しの中にいる

 鍵がかかって出れないが

 詩は変わらず送られる

 詩を送ってくれたので

 私も詩の形式で返します>


[私は生きているでしょうか

 私以外には分かるはず

 私は記録に残っていますか

 復帰できそうですか]


<僕はあなたのことを

 知らなければ見えもしない

 あなたが詩を書いているのなら

 死んではいないでしょう>


[やはり私は死んではいない

 他の人から言われると

 確信が深まりました

 死への恐怖は増すばかりですが

 これからも書いていきますよ]


<そこから出られないのでしたら

 開けるのを頼んできましょうか

 明日にでも頼んできましょうか>


[そうしてくれると有り難いのですが

 私はあなたと話したいのです

 何せ5日間も人と会っていませんでしたから]


<それは過酷だったでしょう

 あなたはこの場所で

 死んだことにされてましたが

 まだ生きてるのですね>


[正確には

「死んではいない」

 程度のものでしょう

 私は普通なら死んでいる

 かろうじて動けますけど

 怪しいところです]


<それじゃあ明日またきます

 鍵を開ける人を連れて

 それじゃあ明日またきます

 今日は帰ります>


[待ってまだ行かないで]


[そう書いて送りました

 今日のうちはその紙が

 手に取られることはありません

 彼はもう行ってしまった

 私を救うために

 彼はもう行ってしまった

 彼の善意に従って]

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る