ウィッグの美少女を介抱したら、いつの間にか俺の家に入り浸るようになっていた件

さばりん

第1-1話 電柱下に蹲る美少女

「寒っ……」


 突き刺さるような冷たい北風が吹き荒れる中、加賀美祥平かがみしょうへいはコートの襟元をつまみ、寒さを耐え凌ぐようにして岐路へと着いていた。


 部活が終わって学校を出た頃は、日は沈みかけで、空は群青ぐんじょう色だったのに、今はもう、完全なる暗闇へと変化している。

 ふと空を見上げれば、空気が澄んでいるのか、満点の冬の星々が瞬いていた。

 祥平しょうへいははぁっと白い息を吐きつつ、静まり返った住宅街を歩いて行く。


 最後の曲がり角を曲がり、家のある通りへと出た。

 ようやく家の中へ入れると、ほっと息を吐いたのも束の間、家の前の電柱に備え付けられた街灯の下、クリーム色の髪をした女の子が蹲っているのを目撃してしまう。


 こんな寒い冬の日の夜に、何をしているんだろうか?

 祥平は首を傾げつつも、ひとまず電柱下で蹲る女の子の元へと恐る恐る近づいていって声を掛けた。


「大丈夫ですか?」


 祥平が心配した様子で尋ねると、うずくっていた女の子が顔を上げた。

 クリっとした瞳、すっとした鼻筋、雪のように真っ白なきめ細やかな肌は、まるで冬の雪化粧を連想させるかのように、透明感が溢れている。

 祥平が一瞬見惚れてしまうほどに、女の子はクールな印象を抱かせる美少女だった。


「……加賀美君?」


 すると、クリーム色の髪をした美少女が、かすかな声で祥平の名前を呼ぶ。

 祥平は、困惑と驚きが入り混じった。

 無理もない、突然見知らぬ美少女に、教えたこともない名前を呼ばれたのだから。こんな美少女の知り合い、果たしていただろうか。

 祥平はもう一度目を凝らし、美少女の顔を見つめた。

 すると、祥平の脳髄が記憶を辿り、とある女の子の名前を導き出す。

 確証はなかったものの、祥平は恐る恐る、彼女の名前を呟いてみる。

 

「もしかして……中谷なかたにさん……?」

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