愛しい男の生首抱いて
片眼の兎
第1話
帯も締めず腰紐ひとつで振袖を着た女が前をはだけゆらりゆらりと揺れるように歩いている
結い上げた黒髪は乱れ幾筋も背に垂れ顔にかかる髪が女の表情を隠している
固く踏みしめられた雪を歩く足の裏は紫色に腫れ華奢な十本の足の指がまるで死んだ芋虫のように腐っている
気の触れた女の右の袂が重たげに引き摺られる度
固く白い雪の上に赤い雫が跡を引く
女は
時折袂を持ち上げ愛おし気に微笑む
袂の中には白濁した目が天を見ている男の首
気の触れた女は袂から愛しい男の生首を出すと雪よりも冷たい蝋のような頬に頬擦りをし狂った笑顔を浮かべ男の生首は怨めしげに空を見る
愛しい男の生首抱いて 片眼の兎 @katameno-usagi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます