ブラジャー戦争 3人用台本

ちぃねぇ

第1話 ブラジャー戦争

【登場人物】父、娘、母


0:リビングに父。娘登場。


娘:ねえ父さん

父:なんだ?

娘:私の服が無いんだけど

父:服?

娘:服っていうか

父:なんだ、もごもごして

娘:…無いのよ

父:なんだって

娘:だから!またブラジャーが無いの消えてるの!父さん知らない!?

父:あんだって~?

娘:聞こえてるでしょ?やっぱりまた父さんなのね!

父:なんのことか、父は~全く?身に覚えが無いなぁ?

娘:何言ってんのよこの下着窃盗常習犯!

父:な!父親に向かってなんてこと言うんだお前は!

娘:父親なら父親らしくしてよ!娘のブラジャーなんか持ってかないでよ!

父:い、いいじゃないか未使用なら

娘:いいわけないでしょ!なんでいつもいつも、私がおニューのブラ買うたんびに持ってくのよ!

父:だって…

娘:だって?

父:落ち着くんだもん

娘:はぁ!?

父:こうさぁ?頭に乗っけて鏡を見るとさぁ?変態が映るわけよ、まごうことなき変態が

娘:映るだろうね

父:そしたらさ?ああ、今日もこんなバカなことができるなんてなんて平和な世の中を生きてるんだろうって安心できるっていうか…分かるだろ?

娘:一ミリも分かんないわよ!私にとっちゃ重大事件発生なんだけど?平和な世界ぶっ壊されてんだけど!?

父:そんな怒るなよ~いいじゃん、毎回10分くらい未使用のブラジャー捧げるくらい

娘:いいわけあるか!

父:ほら、父のことをちょっとした神棚だと思って。お菓子とか食べる前にお供えするだろ?

娘:こんな気持ち悪い神棚があってたまるかぁ!



0:母登場



母:どうしたの麻衣、大きな声出して

娘:お母さん!お母さんも言ってやってよ!お父さんがまた私のブラジャー盗ったのっ

母:あら、またなのあなた。これで何回目?

父:いやーちょっとホッチキス借りようと思って麻衣の部屋行ったら…下着屋さんの紙袋が見えて、つい

母:あらあら

娘:あらあらじゃないよ!なんで母さんはそんなに落ち着いてるのさ!

母:だってこの人、昔から私におんなじ事しておんなじように怒られてたんだもの

娘:母さんも被害者だったの?

母:そうねぇ…今まで二けたは捧げたかしら?まあいいじゃない、新品未使用にしか興味がないんだから、ちょっと喋る神棚に飾っておくくらい

娘:嫌だよ気持ち悪い!10分も親父の頭の上に乗ってたブラジャー着ける娘の身にもなってよ!

母:そうねぇ、ちょっと気持ち悪いかもねぇ

娘:ちょっとどころじゃないっ!

父:いや~思春期の娘ってのは難しいなぁ

娘:思春期関係ないわっ!

母:まあまあ、麻衣ちょっと落ち着きなさいな。カルシウム不足?牛乳飲む?

娘:え、私がおかしいの?

母:あのね、父さんのあれは一種の病気みたいなものなんだから、もうどうしようもないのよ。諦めたほうが人生、楽に生きられるわよ

娘:諦められるわけないでしょ!「親父の頭に乗ったことの無いブラジャーをつけてみたい」って夢悲しすぎん!?

母:父さんはね、あれで精神の安定を図っているのよ。あの10分間が仕事のストレスを癒すんですって

娘:そんなストレス掛かる職場なら転職したほうがいいよ!いつか体壊すよ

父:おお、父の心配をしてくれるのか。麻衣は優しい子だなぁ

娘:ちげーよ!

母:まあまあ。人様に迷惑かけないだけマシだと思いましょ?盗撮とか覗きとかやってたら、流石に母さんも考えるけど

父:俺は中身に興味ないぞ。あのフォルムあの手触り、あのタグのついた真っさらな感じがいいんだ

娘:煌々(こうこう)と語んな!

母:あ、あと…父さんのブラジャー選びには基準があって

娘:え?

母:それを外れてしまったら、一切の興味を失うんですって

娘:え、なにそれ…色とか質感とか?そんなのわかってるなら早く教えてよ!私特にこだわりないし、寄せるよ

父:胸だけに?

娘:黙れド変態

母:うーん…でもねぇ

娘:フロントホックでもフルカップブラでもなんでもいいよ?色だってこだわりないし。あの変態神棚に飾らなくてよくなるなら、なんでもするよ!

母:…バストアップ

娘:え?

母:父さん、Dカップ以上のブラには興味を示さないのよ

父:なんか、安心感より罪悪感のほうが勝っちゃって

娘:最初から持ってなさいよその罪悪感

母:母さん、出産前までBカップだったんだけど、あんた産んでお乳上げてたらカップがあがっちゃって。そしたらこの人全然興味を示さなくなったのよね

娘:ええ?ってことは私は…

母:あと、2カップくらいあげればまぁ

父:そしたら俺はどこで仕事のストレスを癒せば

母:ワゴンセールであなた用のBカップ買ってきてあげるわよ

父:前にも言ったけど、つけない俺がブラジャー持ってることへの違和感が、心からの安心感を阻害(そがい)してしまうんだ

母:そうだったわね

娘:私…私のお胸…

父:麻衣、急いで大きくならないでいい。ゆっくり成長していけばいいんだから…な?

母:麻衣、いろんな理不尽を抱えて大きくなりなさい

娘:こんな…こんな家…

父:麻衣?

母:麻衣?

娘:出てってやるーー!!

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