天使な悪魔の就職活動 4人用台本

ちぃねぇ

第1話 天使な悪魔の就職活動

【登場人物】

ユア:黒き羽を持つ心優しい少女

ラン:頭の回転の早い少女

タン:ランの弟。隠れドМ

サタン:悪魔界のトップ



ユア:助けて、ラン!

ラン:わ、ユア…どうしたん

ユア:明日サタン様の面接なの!

ラン:あ~…悪魔界の入社面接、明日だっけ?

ユア:そうなの!

ラン:あんた、マジで悪魔界入る気ー?

ユア:入るよ…だって私悪魔だもん

ラン:…あんた、天使の方が向いてると思うけど

ユア:でも…私の背中に生えたのはこれだし

ラン:…純黒(じゅんこく)なんだよねぇ、よりにもよってあんたの羽

ユア:なんで私の羽、真っ黒なの?

ラン:黒ければ黒いほど悪魔に向いてる…はずなんだけどなぁ……ユア、クエスチョン。「道端で転んでしまったお婆さん、あなたのとっさに取った行動は?」

ユア:え?ええと…支えて起こしてあげて、荷物持ってあげる!

ラン:……これだもんなぁ…

ユア:え…間違えた…?

ラン:…正解は「お婆さんの背に馬乗りになって、顔面に唾を吐く」よ

ユア:そんなひどいこと…私には出来ないよっ

ラン:…出来なくてもやるの。悪魔界に入るんでしょう?

ユア:でも、そんな悪魔みたいな所業

ラン:だからやるのよ。…あんた、悪魔になりに行くのよ?ほんとにわかってる?

ユア:わかってる…わかってるけど…

ラン:あのさ……ユアは絶対、天使の方が向いてるよ?

ユア:でも…私の羽で天界なんか行ったら

ラン:…袋叩きでしょうね

ユア:袋叩き……!

ラン:あいつら、キレたら怖いわよ~普段大人しい顔してる分、いざとなったら容赦なく襲い掛かってくるわよ。そもそもサタン様より神様の方が強いからね。トップの強さでこの世界の力関係決まってるから

ユア:じゃあ…やっぱ悪魔界に行くしかないじゃんかぁ

ラン:でも…あんたほんとに悪魔になれる?「ひどい!人でなしっ」って言われる事ばっかりするのよ?

ユア:だ、だから明日の面接の前にランに相談したくて

ラン:相談って…

ユア:なんとか私が生き延びる方法無い!?私の羽じゃ絶対天界なんていけないわ!生きていくにはどうしても…悪魔界で採用されないといけないの!

ラン:ユア…

ユア:面接の課題…サタン様の前で自己アピールしなきゃいけないの。私はこうこうこう言う悪魔らしいことをしています!って…

ラン:悪魔らしい……

ユア:でも私…どうしたらいいんだろう…

ラン:……ねえ、それって実践あり?

ユア:え?

ラン:サタン様の前で実演、OK?


0:翌日。悪魔界の玄関ドアの前で揉める3人。


タン:おい、姉ちゃん!俺をこんなところに連れて来てどうするつもりだ。この先サタン様がいるところじゃねぇか!天使の俺がなんでサタン様に会わなきゃいけないんだ!

ラン:うっさいわね、あんたは大人しくあたしに従ってればいいのよ

タン:意味わかんねぇぞ!せっかく家でゴロゴロしてたのに!羽掴むんじゃねぇ!もげるだろうが!

ラン:うっさい!いーい?ユアが立派な悪魔になれるかどうかがあんたに掛かってるの。ちょっとは協力しなさいよ!

タン:だから意味わかんねぇって!ユアより姉ちゃんのほうが悪魔に向いてるっつーの!

ユア:ごめんね…ホントにごめんね

タン:ユアはなんでさっきから謝ってんだ!?

ユア:(ランに向かって)ねえ、ホントに大丈夫なの?私今からタンに…

ラン:大丈夫、全く問題ないから。ユアは昨日打ち合わせた通りに動いて

ユア:でも…

ラン:私を信じなさい。…ほら、行くわよ


0:サタンの前。


サタン:ほう?悪魔界に入りたいというのはお前か

ユア:ユ、ユアと申します

サタン:見事な漆黒の羽だ。これは期待できそうだ。…して、後ろの二人は何者だ?そっちも入社希望か?リストには載っていないが

ラン:あたしはユアの友達さ。今日はサタン様にユアがいかに悪魔にふさわしいかを証明したくてここまで来たんだよ

サタン:証明とな?

ラン:さあユア?いつものように、やっちゃってよ

ユア:う、うん……(ボソッと)タン、ごめんっ

タン:え


0:ユア、どこからか取り出したムチを振るい始める


ユア:っ…この駄犬めっ!サタン様の前で純白の羽なんかよく晒せた(さらせた)ものねっ!!

タン:いでっ!!…え、ユア!?いきなり何すんだよっ

ユア:はぁ!?ユア様だろうがこのダメ天使めっ…!いつもこうやってしつけてやってるって言うのに…あんたは一向に覚えやしないね?このドクズ!

タン:いだぁ…!ちょ、え、ユア…!?

サタン:ほう?あの形相…まさしく悪魔のような女だな

ラン:でしょー?あたしの弟、いっつもユアに乱暴されてほんと可哀そうなんだよねぇ

サタン:あのムチのしならせ具合…振るい慣れている証拠だな

タン:いでっ…痛あっ…

ユア:(ボソッと)ラン!ホントにこんなことしていいの!?

ラン:(ボソッと)大丈夫よ。…ほら見て見なさいよ、タンの顔

ユア:(ボソッと)え…

タン:あ、いたっ!やめ、やめてくださいユア様っ……!

ユア:(ボソッと)なんか…嬉しそう

ラン:(ボソッと)隠してるつもりなんだろうけど、タンってドМなのよねぇ。だからタンとってこの状況はご褒美みたいなものよ。…もっと叩いてこいつを幸せにしてやってよっ

ユア:(ボソッと)ご褒美…わかった!

ユア:ほんとに!あんたはしょうがない奴ね!(頭を抑え込んで)ほら、私の靴をお舐めよ?いつもみたいに…さぁ!

タン:ああ…許して…許してユア様

サタン:ほう…ムチの次は頭を抑え込んで屈服させるか…よい。よいぞ。まさしく外道。悪魔そのものだ

ユア:ねえ、ターン?可愛いタンちゃーん?あんた、叩かれるのと縛られるの、どっちが好きぃ?…ああ、あんたは羽をむしられるのがお好みだったかしら?

タン:あ、ダメ、ダメですユア様…なんか…なんか…俺っ…ゾクゾクするっ…!

サタン:…ん?なんかお前の弟、変じゃないか?

ラン:どこがです?

サタン:いや、なんか心持ち嬉しそうな顔をしているような気がするのだが

ラン:やだなーサタン様!あんなことされて嬉しがるド変態がいると思います?

サタン:いや、しかし…

ラン:そんなドМがいたら気持ち悪いと思いません?

サタン:気持ち悪いって…

ラン:あいつ、いっつも真っ赤になった尻で泣きながら帰ってくるんですよ~せっかくの羽もボロボロにして

サタン:…お前はそれを止めないのか?

ラン:え?なんで?

サタン:なんでって…お前の弟だろう

ラン:いやーあたしは面白ければ何でもいいんで!あいつの泣き顔って、面白くないです?

サタン:……お前、就職先決めたのか?

ラン:え?

ユア:ほらほら!このマヌケ!トロトロタンちゃん~?いつもみたいに泣きなさーい?跪いて(ひざまづいて)許しを請い(こい)なさーい?

タン:ああ、ああ、ユア様っ!やめて、お願い、ああっ

サタン:……そこまで

ユア:え

サタン:もう結構だ、止まれ

ユア:は、はいっ

サタン:…面接の結果を言い渡す

ユア:はいっ

サタン:……文句なしの合格だ

ユア:っ…!

サタン:お前は10年に一度の逸材だ。ぜひ悪魔界を一緒に盛り上げていってくれ

ユア:サタン様っ…!ありがとうございますっ!

サタン:それと……お前

ラン:えっ

サタン:お前は百年に一度の逸材だ。天界の給金の三倍は出そう。…ユアとともにこちらに来る気はないか

ラン:え、あたし!?で、でもあたしの羽…グレーっすよ?まだらっすよ?

サタン:羽がなんだ。確かに黒は美しいが羽が全てじゃない。むしろ、実の弟に対するあの非情さ…悪魔としての素質しか感じられない。…こちらに来れば…生涯、贅沢な暮らしを保障してやろうぞ?

ラン:…行きます。是非とも!

サタン:では二人とも採用!…あとのことは追って連絡する

ユア:はっ

ラン:御意っ


0:サタン退場。


ユア:ランッ!

ラン:ユアッ…!

ユア:ランのおかげだよっ!ホントにありがとう…!

ラン:ユアが頑張ったからよ!おめでとう!

ユア:ありがとうぉぉ…!

ラン:それに、私までおこぼれで就職決まっちゃった!ユア、二人で悪魔界を盛り立てて行こうね!

ユア:うん!…あ、でも私…あんなに人を叩いて罵って…よかったのかなぁ

ラン:何言ってんのさ。…タンを見なよ

タン:ユア様っ…もっと…もっとぉ…!

ラン:ほら、幸せそうな顔してるでしょ?

ユア:見たことない表情してる…

ラン:あんたはこれから、こういう気質の天使をいたぶって喜ばせてやりな。あんたの行為は誰かの善になるんだよ!

ユア:ラン…!…でも、いるかな…タンの他にそんな…ドМ天使

ラン:案外そこら辺にいるわよ?ああ、後で思いつく奴らリストアップしてあげるから、そこらへん手始めにイジメてやりな。きっと喜ぶわ

ユア:…ラン、あなたは私の女神さまよ!

ラン:何言ってるのよ。…今日からは違うでしょう?

ユア:…はい!悪魔さまっ!!

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