好感度が反転したヤンデレたちの記憶が戻ったら
かにくい
第1話 始まり
昔々、ある所に愛に狂える魔女がいた。
その魔女にはどうしても手に入れたい意中の男がいた。だが、その意中の男の周りには男に好意を持った女が沢山いた。中でもその男には幼馴染がおり、幼馴染とは特に仲が良かったそうだ。
魔女は彼の周りにいる女、幼馴染に嫉妬した。醜く汚い嫉妬心に身を染められたのだ。
魔女は考えに考え抜いて、一つの答えに辿り着いた。
そうだ、彼の周りにいる羽虫共が彼のことを嫌って虐めてどうしようもなくなった彼を私が慰めれば彼はずっと私のものになるんじゃないかと。
魔女はニタァと口を歪ませ、早速薬作りに取り掛かった。
魔女は非常に才能にたけており頭がよく、三日三晩寝ずに取り掛かることによって、その薬を作ることに成功した。
その薬は飲んだ人間が異性に何をせずとも嫌われるようになる。飲んだ人へ向ける思いが強ければ強いほど嫌うようになる。
早速魔女はその薬を愛している男へ飲ませた。
だが、魔女は一つだけ大きな間違いを犯した。
自分自身も彼へ嫌悪感を示し、殺したいほど憎むようになってしまったのだ。自分を対象外にはしていなかった。
誰よりも深く愛していた魔女は誰よりも意中の男を残虐なほどに苛め抜き最後には殺そうというところで意識が戻った。勿論、残虐に苛めていた時の記憶をそのままに。
魔女は当然発狂し、自我を保てなくなり最後には意中の彼の前で自殺した。
そして……………歴史は繰り返す。
「……ミ、ア…アリ、ア…エリー………リ…リア…みんな、どう…して…なん、で」
「気安く私の名前を呼ばないでください」
深い森の中。誰も来ないような場所でボロボロな男と白髪の綺麗な髪をした女、それに続き怪し気修道服をきた女たちが男を吊るし上げていた。
男の片目は消失しており、所々体は焼け爛れておりかつての中性的で可愛い顔と言われていた面影は僅かたりとも残されていない。片足はあらぬ方向に曲がっており腕はもう一本しか残っていない。残っている一本さえも指が折れてしまって使い物にはならないだろう。
そんな満身創痍の状態。
男の目からは涙が止めどなく溢れる。思い出すのは彼女たちと過ごした楽しい記憶が一種の走馬灯のように彼の頭を駆け巡った。
もう、あんなふうに笑いあえるなんてことないんだろうな。
「は、あはは………はぁ」
「急に笑うなんて気持ち悪い。あなたはやはり悪魔に取りつかれているのです。さぁ、敬虔な信徒たちよ、あの悪魔に裁きを。さぁ、さっさとしんでください」
そう、だな。もういいかな。
男は何とか彼女たちが元に戻り前のような幸せな生活に戻れるんじゃないか、きっと何かに取りつかれているか、何者かに魔法で操られているのではないか、そう思って彼女たちの非道に耐えてきたが流石に心も体も取り返しがつかないほどに壊れかけてしまっていた。
唯一の心残りと言えば、クロエの事かな
とても凛々しい王子と呼ばれるほどの男の僕でも見とれてしまう美貌を持つ友人。彼だけは前と同じように接してくれて僕の事を変わってしまったみんなから守ってくれようとしてくれていたから。
ありがと、クロエ。君の言葉で僕がどれだけ勇気づけられたか。どれだけその慰めが弱った僕の心の支えになったことか。君の行動でどれだけ救われていたか。
本当にありがとう。
でも……….もう、僕はダメだ。あれだけ慰めてくれて支えてくれたけれど僕の心はもう壊れてしまったみたいだ。僕は君のように強くも誇り高くもないから。
ごめんね、クロエ。
男が心の中で親友へと別れを告げ、薄れかかっていた意識を手放し命の灯が消えそうになった時………すべてが元に戻った。
最愛の彼を死ぬ寸前まで追い込んだ記憶をそのままに。
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