先輩に憑いている霊(仮)は先輩に認識されたいらしい// 視えちゃう樹姫と聴こえちゃう青樹は似てない双子
TO BE
第1話 転宅
玄関を開けたら、
「お帰り!
「ただいま」
つい、いつものように答えた私の横で
「バアバ?なんで居るの?」
「縁側を開けてきてちょうだい 急いで!」
バアバに急かされた私達は慌てて靴を脱ぎ捨てて家に駆けこむ。
座敷を通り抜けて縁側の引き戸をガラガラと音を立てて大きく開ける。強い風がブオンと入ってきて、それから それに負けないくらいの強い風が家の中から外に向かって吹いた。ゴオオって音が聞こえるくらいの風の中でバアバの声が聞こえる。
「みんな行くよ。おいで!!」
あまりの風の強さに目をつぶる。
風が止んだ気配に、恐る恐る目を開けると、私達はリフォームしてまるで他の家のようになったバアバの家の前に並んで立っていた。
「ねえ今の何?」
「バアバ、だったよな?」
「アオにも見えた?」
「うん、おいでって言ってたのイツにも聞こえた?」
「うん、私にも聞こえた」
二卵性双生児の私と青樹はあまり似ていない。見た目も性格も似ていない。私は糸目だけど青樹はぱっちり二重。私は人見知りだけど青樹は社交的。私には霊の声は聴こえないけど青樹には視えない。
今みたいに手も繋がないのに二人ともに姿が視えて声が聴こえるなんてことは珍しい。
「流石だね バアバ」
青樹はそう言うと、真新しい玄関ドアのカギ穴に鍵を差し込んだ。
私達の中学進学を機に、我が一ノ瀬家は県の東端の社宅から西の端の春野市にあるバアバの家に引っ越してきた。あ、私達が一緒に住む前にバアバは亡くなっちゃったんだから、バアバの家じゃないのかな?
「バアバの家じゃないみたいだな」
青樹が感心したように言いながらドアを開けて、真新しいタイルの
「「こんにちわー」」
自分の家だけど、初めて入るから「ただいま」とは言いにくい。
本当に別の家みたい。玄関の2畳間も8畳と6畳の続きの座敷も無くなって、縁側は狭くなって、雨戸も無くてサッシになってる。
さっき私達は座敷を通り抜けて縁側のガラスの入った引き戸を開けたけど、あの風景もバアバが連れて行っちゃったのかな?
「おっと」
和室を洋室にしたからか、不自然にある段差に躓きそうになった私を青樹が支えてくれた。
段差を作っている敷居も、サッシの両側の柱も前からある柱だ。なんだか見覚えがある。でも、バアバの気配も古い家の匂いも全くないのは、全部バアバが連れて行ったからなのかな。
「バアバ ちょっと持って行きすぎ……」
文句をいいながら古い柱を撫でていると、ワンボックスに荷物をいっぱい積んだ両親が到着した。その荷物を全て下ろしきらないうちに引っ越し屋さんのトラックが着いた。
「ここに作業終了のサインお願いします」
引っ越し屋さんのオニイサン達は手際よく積んで来た荷物を家に運び入れた。
流石プロ!とトラックを見送っていると、そのトラックと入れ替わるように軽自動車が入って来た。
「こんにちは!どう?お弁当持ってきたわよ~!」
「「夏おばさん!ありがと~」」
「ちわっす ご無沙汰してます」
夏おばさんと一緒に来たのは従兄の
来週、私達が入学する「県立海南校」の先輩になる。
「ねえ、すっかり変わったわね びっくりしちゃった。この前までおばあちゃんたちの気配があったのにねえ 全く消えたわ すごいわリフォームって」
「今度、風呂入りに来いよ。最新式だぞ」
お風呂好きなお父さんはお風呂にはこだわったから自慢してる
「いいな オレも最新式の風呂入りたい」
「秋ちゃんは男子だからダメだよ!」
青樹が反対する
「いや、別に皆で一緒に風呂入ろうとか思ってないし!」
「当たり前だろ!」
秋晴君は一人っ子だからか青樹や私にすぐにじゃれかかってくるんだよね。仲良し兄弟みたいで微笑ましい――
「イツ、なに澄ましてんだよ?」
「だから秋ちゃん イツに触るなって」
「いいじゃん、イツは澄ましてない方が可愛いと思うぞ」
私の頭をぐしゃぐしゃとかき乱した秋晴君に青樹が文句を言うけれど可愛いと言ってくれるのは青樹と秋晴君くらいなんだよね だから許す。
「義姉さん、秋晴おいていくから使って。私は仕事行くから手伝えないでごめんね」
夏おばさんは一緒にお昼を食べるとあわただしく行ってしまった。
秋晴君が手伝ってくれたおかげもあって、夕方に夏おばさんが仕事を終えて来た頃には、引っ越しは終了していた。
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