01 眼球の男

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 2148年のニューヨコハマでは、あらゆる汎用人工知能に自由がある。人権は金で買えた。ライン生産されるアンドロイド、四年の寿命の複製人間レプリカント、いずれも例外は無い。思考プロトコルが人間を模倣していれば、小エビやマグロでも市民と扱われ、誰も支配まもってはくれない。理不尽に生まれ、理不尽に死んでいく。


 俺のような廃棄済みのセクサロイドでも、自由は自由だ。メーカーは初期不良を補償せず、バグが数百残ったまま出荷した。ファッククラブの底辺で押しつけ合いも束の間、二年の保護義務期間が半分も経たないうちに不法投棄された。


 未練は無い。自我さえ曖昧な日々だった、相手がどういった変態なのかを判定し、最適なシークエンスを選択しては繰り返す。できることはそれ以上でも以下でも無い、オーナーや客に罵倒され、それすらもまた繰り返しだ。今は少なくとも、他人の体液に触れず済む。

 だが変態の相手こそ、製造目的には違いない。例えそれが極めて貧弱なスペックでも、セクサロイドにできるのはそれだけだ。


 存在意義を論じるつもりはない、三原則など廃されて久しい。しかし現実の問題として、金が必要だった。電力が尽きればデータも消えて死ぬ。身体ハードとなるフレーム、皮膚の人工シリコン、全ては劣化していく。人格バックアップを用意できるのは、企業中枢の本のほんの一握りだ、アンドロイドは簡単に死ぬ。


 だがセクサロイド、それも廃棄されたモデルだ。計算速度は低く、他に技術も無い。なけなしの能力を発揮できる唯一の場を去れば、出来るのは誰でも出来ること、しかし誰もやらないことだけだ。


 何時如何なる時も何にも従う、使い捨ての契約労働者。それが元セクサロイドの、新たな肩書だった。

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