【悲報】オレ氏、人類の敵かもしれない

ロロノレ

生命の敵対者

 正直な話、薄々察していた所はあった。


 なーんか覚えるスキルやなれるジョブに偏りがあるなぁ、とは。

 同じクラスの人の会話で聞こえてくる話ではスラッシュやらファイアボールなんかはあっても怨嗟煉󠄁獄刃とか明らかにやばそうな名前のスキルは聞いたこともなかったし、訓練場の様子を見ても誰も闇のオーラみたいなエフェクト纏いながら戦ったりしていなかった。

 ネットで調べたジョブツリーも初級戦士とか初級魔法使いから始まって、次に初級が取れて、やがて上級戦士、上級魔法使いになるのが一般的であり破滅の使徒なんて何処にも書いていなかった。


 なんかおかしいな、と思いつつも全力で思考を反らしてきたオレだったが、ついに決定的な物が出てしまってエリアボスのドロップアイテムの前で一人頭を抱えた。

 しかしいくら現実逃避しようとステータス欄に燦然と輝くジョブ、【生命の敵対者】は消えてくれない。

「……どうすればいいんだ」

 居るかもわからない神に誓って言えるがオレは今まで一度も人類に敵対的な行為をしたことはない。

 むしろギルドでは依頼達成率やMAP提供、スタンピード寸前のダンジョンでの間引きなどで優良探索者扱いをされている。

 なんかおかしいなと気付いた辺りからは行動で改善出来ないかとゴミ拾いやボランティア活動まで始めたし、世間一般的に善とされそうな行為は一通り試した。ダンジョンで出た利益だって装備にかけた分と緊急の為に備える貯蓄以外各種慈善団体に匿名で寄付している。

 そもそもオレ自身に敵対の意志は欠片もない。それなのにジョブは【破滅の使徒】から始まり、【破壊の申し子】に変わり少し改善したかとぬか喜びをさせてきた後に【死と恐怖の化身】になって、ついになってしまった【生命の敵対者】。

 パーティになったら簡易ステータスが共有されてしまう仕様のせいで変なジョブを知られるわけにはいかないオレは今までずっと誰ともパーティを組めず、青春の代名詞のはずの冒険者学校に通いながらエターナルぼっち。いつかまともなジョブになって誰かとパーティ組むことを目的に頑張ってきたというのにこの仕打ちである。

 今のオレにできることといえばあまりのショックにボスエリアで長時間経ちすぎたせいでリポップしてしまったエリアボス・フロストドラゴンにこの苛立ちを向けることくらいだった。




「そうだ、ネットに頼ろう」


 フロストドラゴンを3回おかわりしたあと、自宅に帰って少し冷静にヤケになったオレは先人の知恵を頼ることにしたのだ。

 先時代(ダンジョン出現以前の人類史)では困ったときにネットで相談するのが当たり前だったらしい。ぼっちを極めたせいですっかり独り言が増え対人スキルが落ちたオレだがネットでは普通に話せる。遠巻きにヒソヒソ話をされて誰とも目が合わない現実と違ってネットは良くも悪くも等しく無関心で攻撃的だ。

 慣れた手付きで77ちゃんねるを開くとスキル【秘中の秘】を発動させながらスレッドを立てた。


【悲報】オレ氏、人類の敵かもしれない


 最強ドロップ装備自慢スレとかスキルツリー最強論などが乱立するダンジョン板の中では明らかに場違いな名前のスレッドが建った事を確認すると、状況を説明する書き込みを続けた。




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