クビになった主神様
鹿嶋 雲丹
第1話 とある星でのとある出来事
巫女。
それはこの星アンマーでは、とても栄誉ある役職だ。
神のお側でその言葉を聞き、荒んだ心を慰める。
それは、誰にでも務まるものではない。
美しいのは当たり前。知的な会話ができ、柔らかな物腰と清純な雰囲気を併せ持つ。
そんな選ばれし者のみが、神のお側に寄ることを許されるのだ。
私はそれを持ち合わせていたことを、今更ながら後悔している。
「だってさぁ、こないだもわがまま聞いてやったんだからさぁ、今度はこっちのわがままも聞いて欲しいわけよぉ、わかるでしょお? だから触ってもいい?」
「あらあら
「アーン……うん! 甘くて微かな酸味と歯ごたえがたまらないねぇ! アハハハ! ところで触ってもいい?」
延々続く触ってもいい? の問に、私は頬を引きつらせた。
我が
我が星アンマーでは、もっとも力を持つ神を
星の住民投票が1000年に一度行われて選ばれるのだ。
つまり、このとろけきった表情で両脇に巫女をはべらせて満足気に酒を飲んでいる、だらしない男神は星の住民によって選ばれた存在なのだ。
くそう、猫かぶりやがったな。
「もう、そんなことされたら、
体をくねらせた巫女の一人が、さり気なく助け舟を出してくれる。
あぁ、なんてありがたいんだろう。
私が最上位の巫女の座に就いたのは、ほんの一週間前のことだ。
前職の巫女長が寿退職したせいである。
先輩は、数々の場で訓練して巫女長の座に就いた。はっきり言って彼女の天職だったと思う。
引き継ぎ期間の間、一緒に務めを果たした私はそれを確信した。
触らせろと言いながら手を尻に伸ばしてくる
そんな芸当、誰にでもできるもんじゃない。いや、少なくとも私には無理だ。
『どうしても、どーしても無理だと思ったら、辞表を出しなさい。あなたが犠牲になることはないんだから……ね?』
最後の職務の日、先輩は私の耳元でそう囁いた。
うん。決めた。私、辞表を出す。
後のことは、神官長に任せればいいや。
神官のおじいちゃん達がお酌して、ウィットに飛んだネタを披露して、
私はむりやり浮かべた笑顔の裏で、揺るがない決意を固めていたのだった。
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