羽化編
第9話 出会いは皇太子妃選考会
「私と一緒に世界を変えない?」
君がその言葉と共に差し出した手を僕が取った日から、僕達の物語は始まった。
それは、この辰星島では咲かない桜が舞い散った春のこと……。
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10年前―――
今日は、辰星島第一皇子神鈴銀河の皇太子妃選考会。
その会場には、皇子の妻となる女性を一目見ようと大勢の国民が集まっていた。
君は、運良く皇太子妃候補に選ばれて、僕はたまたま皇族席の近くに居たから君の顔を見ることができた。
僕と目が合うと、君はふわりと微笑んでくれた。
社交辞令だと分かっていても、その笑顔に僕の胸は高鳴ったんだ。
これが、僕が月、君と初めて出会った時の事だよ。
月の見た目は、金髪碧眼でとても可愛らしい女の子だった。
礼儀作法も完璧だし、教養し国民からも人気がある。
でも、僕にとってはそんな事はどうでも良かった。
ただただ、彼女の美しさに見惚れていた。
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月、本人は若干焦っていた。
まさか自分が選ばれるなんて思っていなかった。
しかし、周りの大人達は、月こそが皇太子妃に相応しいと思っていたのだ。
月の心の中。
え?なんで俺が選ばれちゃうの!?
心の中でパニックを起こしている月。
結構、無礼な事したよ俺?
なのになんで?
あの時お腹空いてたから皇子のお菓子食べちゃった!
それに……、あぁ〜!!
俺、皇子の髪色馬鹿にした!なのになんでだよ?
そして、月の目の前にはニコニコ顔の神鈴がいる。
それにしても……貴族ってもっとキラキラしててキャッキャウフフな感じじゃん!?
なんでこんなに殺伐としてるだよ?
なんかさっきから睨まれてるし……。
えっ何あれ?
第二皇子かな?
めっちゃ睨んできて怖いんですけどぉー!!
まぁいっか、どうせもう会うこともないだろ。
社交辞令で笑っとこ。
あーでも早く選考終わんねぇーかなぁー。
暇すぎて寝ちまうよ……。
曽祖父に第一皇子の暗殺を止めに行けと言われてるから、猫かぶって、上手くやらないといけねーんだよな。
はぁ……。
正直、めんどくさい。
暗殺食い止めてきたけど、正直やばい奴ばっかだし。
思い出すだけで嫌になるわ。
毒は使うわナイフ投げてくるわ……。
あいつら人間じゃねーよ!
マジで怖かったんだぞ!?
ほんとは逃げようと思ったんだけど、じいちゃんに言われたから仕方なかったんだ!
ん?
なんだろう?
なんか視線感じるんだけど?
誰か俺を見てるのか?…………あっ!!! あの子だ!
俺の事見てる! 目があった!
第二皇子の地球じゃん、あいつさっきから睨んできてばっかなんだよ。
心の中、あいつサイコパスだし。
いつか兄貴殺して皇帝になりそうだし。
絶対関わりたくない人種だよ。
えっ何?
俺なんかした?
めっちゃ睨まれるんだけど?
怖いんですけどぉー!
「それでは、これより選考会を始めます」
おっやっと始まるみたいだな。
俺は適当に流そう。
だって俺には関係ないもんね。
でも、もし何かあった時は助けないとな。
一応、じいちゃんとの約束もあるし。
よし頑張るか。
「まず初めに候補者の紹介をさせて頂きます」
…………長ぇー。
まだ続くのかよこれ。
俺、ずっとここにいる意味あんの?
早く帰りたいんですけど。
あ〜眠たくなってきた。
「続いて、皇太子殿下よりご挨拶です」
おっやっと終わったか。
これで帰れる。
でも、この後どうなるんだろう?
まぁいっか、どうせ関わることなんてないだろ。
月がボーっとしている間に話はどんどん進んでいった。
神鈴銀河が側によってくる。
え?
なんで近づいてくんの?
ちょっ近い近い!
顔近すぎだから!!
「おい、月、しっかりしろ。」
と近づき耳で囁かれる。
「はひっ!」
やばい変な声出た。
やべぇ!!
膝まずかないと!
って足が動かないぃいい!!
なんでぇえええ!!!
「お前は今日から余の皇太子妃だ。」
…………はい?
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第一皇子の言葉の意味を理解するのに少し時間がかかった。
いや、理解できなかったと言う方が正しいかもしれない。
え?
どういうこと?
なぜこうなった?
「えっ?」
「聞こえなかったのか?今日からお前は余の皇太子妃だ。分かったな?」
いや、いやいやいやいや!! 分かるわけねーーよ!!!!
何勝手に決めてんの!?
これは、皇太子妃選考マニュアルに載っていた"プロポーズは断るな"という項目にあった通り断った方が良いのか?
いやでも断ったら不敬罪とか言われて殺されそうな気がする……。
じゃあ受けるしかないのか?
でもこの人無口だから何を考えているか分からないんだよなぁー。
「謹んでお受け致しますわ。」
とりあえず、マニュアル通りに答えとくか……。
「ついてこい。」
はい?
どこにですか? とは聞けず、私は黙って後をついていった。
着いた先は……宮殿の庭?
何すんだ?
まさかここで殺し合いとかじゃないよね? 流石にそんなことはないと信じたい……。
すると突然、銀河は私に向かって手を差し伸べてきた。
これは握手しろということなのか?
それとも首絞められる前兆!?
もうどうすれば良いかわかんないよ!!
月はしばらく迷った末、恐る恐る銀河の手を取った。
すると次の瞬間、ドレスがふわりと浮いて身体中に風を感じた。
次の瞬間着ていたドレスが消えて真っ青な空の色のドレスに変化した。
そして、頭の上にティアラが現れ髪飾りがつけられた。
「へっ!?」
何が起こった!?
何でドレスが変わった!?
そして何よりどうして髪が伸びている!? 月は自分の姿に驚きすぎて動けなくなってしまった。
すると、その様子を見た銀河は言った
「似合っているぞ。」
第一皇子はそれだけ言うとどこかに行ってしまった。
「これで、皇太子妃選考終了です。」
えっ?
もう終わり!?
早くない?
なんかもっとあると思ってたんだけど……。
「こちらです、皇太子妃。」
メイド達に外に案内されるも
出口に向かって歩くだけで一苦労だった。
だって靴がヒールだし、コルセット苦しいし。
やっと外に出られたー!
てかこの服なに!
メイドがこれからの事を説明してくれる。
「月様がお召になっている物は、皇太子妃のみが着用できる衣装になります、またこの後はお妃教育を受けていただきます。」
はい?
ちょっと待って、今なんて?
お妃教育?
えっ嘘でしょ!?
なんで私がお嫁さんになる前提で話進んでるの!?
あっ……そういえば……。
「あの……一つ聞いても良いでしょうか?」
「何なりと、お申し付けください。」
「では、何故私は皇太子妃に選ばれたのですか?」
「それは、月様が皇太子妃候補者の中で最も皇族の血が濃く、魔力が優れていたからです。」
なるほどねー。
そういうことか……。
「他に質問はございますか?」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございました。」
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その時、ドアがノックされた。
誰だろうか?
「失礼いたします、父上様がお越しです」
現れたのは俺と同じ赤色の髪を持つ男性。
彼の名は霧神・ミフィー・グリサル。
俺の父親であり霧神一族の長、ブラック・グリサルの側近を務める人物。
「久しいな、我が娘よ。」
ミフィーが入ってくるなり、メイド達は外に出た。
「父上、お久しぶりにございます。お元気そうで何よりです」
「あぁ、お前の方こそ変わりないようで安心したぞ。」
互いに軽く挨拶を交わす。
それから父親は俺の顔をじっと見つめてきた。
「……良くやったなと言っていいものか。まぁ、なんだ、任務内容と少しずれてはいるが、暗殺されなくて良かったじゃないか」
「はい……」
「ん?何か不満でもあるのか?」
「いえ、ありません……」
「なら良いではないか」
「………………あの俺このまま結婚するんでしょうか?」
「そうだな、お前は皇太子妃候補の中で一番皇族の血が濃いからな。」
やっぱりそうなのか……。
でも、正直まだ皇太子妃にはなりたくない!
「だが、お前は嫌なのだろう?だからこうして私が来たのだ。」
「えっ?どういう意味ですか?」
「そのままの意味だ、皇太子妃辞退してもいいぞ。」
「マジですか!」
「あぁ、良い頃合いを見て私の方から言ってやろう。」
「やったー!!」
思わず飛び跳ねてしまった。
でも嬉しい!!
これで俺は自由の身になれる!!
「うむ、しかしお前を育てて約100年経つが良く猫が被れたな。我が娘ながら、その演技力には脱帽するぞ」と、うんうんと腕を組んで何度も納得していた。
いやいや、これ普通にやってたら死ぬからね?
むしろ褒められるところだと思うんだけど……。
「……それ褒めてます?」
「もちろんだとも!お前のことはずっと見ていたが、今まで見てきた中で一番の演技だったぞ」
「そうですか……どうも。」
「第一皇子の心はお前にメロメロだ、自信を持て。」
「あの厨二病の私の顔にしか興味がない、無口第一皇子がですか?」
「あははは、まぁそういうなしばらく辛抱してくれ、だがな、これはあのお方直々のご命令なのだ。私としても断るわけにはいかぬ。もし断れば私の首が飛ぶ。」
「アンタ、ヴァンパイアなんだから、首飛んでも死なないでしょ?」
「はっはっは、確かにな。だが、痛覚はあるんだぞ?それに、血を吸わねば生きていけないんだ。比喩だ比喩。」
「そうなんですか……。」
これはいわゆるヴァンパイアジョークというやつなのだろうか?
苦笑しつつ肩をすくめる父親。
彼は不老不死のヴァンパイアで、数百年前に当時の皇帝から命じられ、帝国を裏から支配してきた歴史のある一族の末裔だ。
なので、たとえ殺されても時間が経てば復活する。
つまり、殺される心配が無い。
故に、どんな理不尽なことを言われようと逆らうことが出来ないのだ。
「まぁ、そういう訳で頑張ってくれ。私は応援しているぞ」
「他人事だと思いやがって……」
「はっはっは、そんなに怒るな、可愛い顔が台無しだぞ。」
「うるさい!」
「ではな」と、それだけ言い残して父親は部屋から出て行った。
残された俺は一人頭を抱える。
「皇太子妃……かぁ……。」
正直乗り気じゃない。
あ!!そうだ!
いっそ、任務の事バラしちゃえば良いんじゃね!?
僕は君がそん感じのことは梅雨しらず、
君が僕に気づいてくれてはいるけど、実際話すのはまだ先の話だ。
この話は、またのいつかで話そう。
家鴨の空 kappa @kappa001
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