推しのVtuberと異世界冒険!

赤城ハル

第1話 ログイン

「マサヒロ! ドタバタしない!」

「わかってるー」


 とは言うものの僕は届いた宅配便を抱えて、階段を駆け上がっていた。


 なぜなら僕は初のフルダイブ型VRMMORPGにわくわくしていたのだ。


 そのフルダイブ型VRMMORPGは『アルビオン』というゲームで、僕の推しであるVtuber星咲すずこがプレイ配信していて、それを見た時からやってみたいと思っていたのだ。


 それにもしかしたらゲーム内で星咲すずこに会えるかもしれない。そんな淡い期待を持ちながら僕はわくわくしていた。


 さっそく、ダンボールを開けてソフトを取り出す。そして据え置きハード内にインストールして、次にVRゴーグルを装着してベッドに寝転び、スイッチをオンにして起動スタート

 すると真っ黒な画面から映像が生まれる。


「おお! これがVRMMORPGか!」


 僕は草原に立っていた。360°すべてが草原。草原の向こうには山々がそびえ、空には雲がたゆたっている。


 近くにはプレイヤーが一人いた。金髪褐色のハイエルフ。


(うわー。本物みたい)


 と、そこで金髪褐色のハイエルフが僕に振り向き、「君、誰?」と聞く。


「僕はよし……じゃなくてマサヒロと言います」

「うん。それはプレイヤーネームを見たらすぐ分かる」


 とハイエルフさんは自身の頭上を指して言う。


 そのハイエルフさんの頭には【星咲すずこ】と表示されている。


「星咲すずこ!? え!? 本物!?」

「少年。人様を指差してはいけないよ」

「Vtuberの!?」

「あら、知ってくれてるの?」

「もちろんです! チャンネル登録してます」

「ふうん。……メンバーは? 赤スパは?」

「そ、それは……」

「フフッ、いいわよ。少年には早いわね」


(少年って……ん?)


 そこで僕はある異変に気づく。


 普通こういうゲームにはチュートリアルがあるはず。それがないのはおかしい。


(スキップした? いや、それはない。


「す、すみません、僕、チュートリアルをしてないらしくて……」

「え? でも、アバターはしっかり作りこまれてるけど」

「いえ、アバターも作ってませんよ」

「でも、ほら」


 星咲すずこは虚空から鏡を取り出して僕に向ける。

 鏡にはいつも見慣れた僕の顔が写っていた。


「ええ!? なんで!? こ、これ僕ですよ!」

「そう。君もか」

「君も?」

「私もアバターが変わってるのよね」

「本当だ。違う」


 星咲すずこはゲーム時のアバターは可愛らしい妖精キャラだ。でも今のアバターはVtuberの《ガワ》の姿にそっくりだ。


「でしょ。それにどうしてここなのかも不思議なのよね。前にセーブしたのは城下街だったはず」

「ここはどこなんですかね?」

「たぶん最初の町から近いところにある高原よ。あっちに進んでいくと町があるの」


 と星咲すずこは西の方角を指す。


「とりあへず行ってみましょう」

「はい」


(え!? これって星咲すずこと一緒にってこと!? くうぅぅぅ!)


「どうしたの少年? にやにやしてキモいよ」

「すみません」


 僕は慌てて頬を両手で押さえる。

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