特別な感じ

 電話をすると直ぐに繋がった。

 ……なんだろう、この緊張感。

 普段会話をしている時は、こんなに動揺はないのに電話だと違った。


「あ、あの……楓」

「やっと電話ができた。こうして話すのってなんか不思議な気持ちになるね」

「そうだな、特別な感じがする」


 こんな近くで楓の声が聞けるなんて俺の耳は世界一幸せだ。


「改めて今日はありがとう」

「いや、いいんだ。ケガがなくて何よりだから」

「そう言ってくれて嬉しい。もうあんな怖い目に遭いたくない」

「俺が守ってやる。絶対にな」

「うん、その言葉を聞けて安心した。湊くんってやっぱり優しい」


 声のテンションがいつもより低めだとは思っていた。

 楓はずっと不安だったのかもしれない。


 俺はもうしばらく会話に花を咲かせることにした。



 * * *



 次の日、学校へ向かおうと家を出ると、見覚えのある男が現れた。あれは、昨日の十字刑事だっけ……。なぜ俺の家に。



「おはようございます、湊くん」

「刑事さん、おはようございます。俺になにか?」

「もちろん、昨日の件で」

「分かりました。公園で話します?」

「お願いします」


 幸い時間はないことはない。

 遅刻したら刑事さんに学校へ説明してもらえばいいし。


 公園へ向かい、ベンチへ。



「それで……昨日のこととは?」

「まず、あの記者の男ですが」

「ああ……ピックアップとかいう会社の記者の」

「そう。あの男は前々から怪しい行動がありました。どうやら、芸能関係者を脅したりしてスクープのネタにしていたようですね」


 楓に対しては異常な執着があったらしく、過去にもたくさんの嫌がらせがあったという。それは参るだろうな。


 事態は日に日にエスカレート。


 昨日はついに連れ去りと身代金の要求などという、恐ろしい事件へ発展してしまった。


「あの記者は、今後どうなります?」

「この分だと罪は重い。しばらく表には出てこれないだろう」


 それを聞いて安心した。

 このことを楓も教えないと。

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