濁点をつけすぎた姫 4人用台本

ちぃねぇ

第1話 濁点をつけすぎた姫

【登場人物】

ナレ:ナレーション。表記はナレ

姫:可哀そうな間違いを犯した人

魔女:筋肉隆々な最強魔女

王子:筋肉バカ


ナレ:昔々、あるところにとても可愛らしい娘がおりました。名をシンデリア。幼い頃に母を亡くした彼女ですが、父にひとしきりの愛情をかけ育てられ、それはそれは幸せに暮らしておりました

ナレ:しかし、その生活は父の再婚で一変します。継母(ままはは)となった女性はたいそうシンデリアに冷たく、また彼女の連れ子である姉二人もたいそうシンデリアに厳しく当たったのです

姫:ああ…毎日が辛い…

ナレ:シンデリアは毎日継母達にイジメられこき使われ、心身ともに疲れ果てておりました。今日も城で行われるという舞踏会への参加を一人だけ認められなかったシンデリア

ナレ:噂でしか聞いたことの無い「きらびやかな舞踏会」に憧れを持つ彼女は、ふと、こう呟いたのです

姫:ああ…「ぶどうかい」に行きたい…

ナレ:ああ可哀そうなシンデリア。彼女のたった一つの間違い、それは…濁点を多くつけてしまったことでした

魔女:ほう?武道会に行きたいとな?

姫:えっ

ナレ:彼女の独り言を盗み聞ぎしていた魔女。その魔女が、久しぶりに聞くその血沸き肉躍る単語に反応しボワッと現れてしまいました

姫:だ、誰!?

ナレ:突然現れた筋肉隆々な不法侵入者に悲鳴を上げるシンデリア

魔女:私は魔女。不屈の覇者(ふくつのはしゃ)と呼ばれた魔女さ

姫:え…不屈?

魔女:お前さん…武道会に行きたいのかい?

姫:え、ええ

魔女:ふん。お前さんのその細腕で何ができるって言うんだい?

姫:う、腕…?

魔女:ちぃとばかり私と勝負しな

姫:え、あの…勝負?

魔女:そうさ。お前さんが勝ったのなら、望みを叶えてやろう。お前さんが行きたがっている場所へ連れて行ってやってもいい

姫:ほんとですか!?

ナレ:突然の不法侵入者の言葉をそのまま受け取ってしまう素直なシンデリア

魔女:じゃあここはシンプルに…腕相撲で勝負と行こうじゃないか

姫:腕相撲…ですか?

魔女:そうだよ

姫:あの、私…腕相撲とやらをしたことが無いのですが

魔女:なんだって!?…そんなんでよく武道会に行きたいなどと呟けたものだ

姫:…分不相応なのはわかっています。でも私、どうしても行きたいんです

ナレ:なぜか話がかみ合ってしまう二人。魔女は真っすぐに自分を見つめるその視線に、未だかつてない可能性を感じました

魔女:あんた…いい目をしているね。強くなる奴の目だ

姫:お願いします魔女さん!私を武道会に連れて行ってください!

魔女:…いいだろう。一度負けることも勉強になるだろうて。あんた、ウェアは持ってるんだろうね?

姫:え?

魔女:服だよ、服。まさかそんなひらひらのワンピースで出かける気なのかい?

姫:…私の服はこれしかありません

魔女:なんだって?

姫:お母様とお姉様に…引き裂かれてしまいましたから

魔女:なんという…!…仕方ない、今回は私が見繕ってやるさ。飛び切り上等の動きやすいウェアを用意してやろう

姫:ほんとですか!?

魔女:ああ。…にしてもあんた、どうして黙ってイジメられているんだい。それだけの力があれば、そんな奴らなど簡単にねじ伏せてしまえるだろうに

姫:え?ええっと…お母様は、お父様が愛した人ですから。お姉様ともせっかく家族になりましたし…出来れば本当は仲良くしたいのです。ですから喧嘩は…

魔女:あんた…なんていい奴なんだ!…でもね、一つ覚えておきな。この世には振るうべき拳(こぶし)も存在するんだ。自分をなめ腐っている人間には、力を誇示(こじ)しなきゃいけない時もあるんだよ

姫:力を…

魔女:ああ。黙って耐えることが美徳だと思うな。自分の未来は自分で勝ち取るものさ

姫:魔女さん…

魔女:あんた、名前は?

姫:シンデリアです

魔女:シンデリア…いい名前じゃないか。私のことはそうだな…師匠とでも呼ぶがいい

姫:師匠…!

ナレ:こうして、悲しくもおかしい師弟関係が結ばれてしまいました

魔女:さ、じゃあさっさと出発しちまうよ

姫:師匠、会場にはどのように向かえばいいのですか?

魔女:ん?そんなの決まっているじゃないか。…足だよ、足

姫:えっ

魔女:魔法の馬車でひとっ飛び~も出来るけどね…楽をしちゃいけないよ。会場までは3キロだ。軽いランニングはいいウォーミングアップになるだろう

姫:私、そんなに長く走ったことありません

魔女:おやおや、武道会に憧れてる奴の台詞じゃないね?お前の想いはそんなものなのかい?

姫:っ……!私、行きたいです武道会っ!

魔女:ふん、その意気さ。久しぶりにいい若者と出会ったさね…じゃあ、ついて来なっ

ナレ:言うが早いか、魔女はパチンと指をならずと自分とシンデリアの服をトレーニングウェアにとっかえて颯爽と走り出します

ナレ:「舞踏会」に行くにはあまりに似つかわしくない格好の為、流石に首をかしげたシンデリアでしたが…残念ながら非常に前向きでとっても素直なシンデリア

姫:きっとこの格好にはなにか師匠の糸があるはず!

ナレ:…などと納得し、魔女の後ろ姿を追ってしまいました


0:ランニングしながら


姫:はっ…はっ…はっ…はっ…

魔女:ほう?その細腕にしてはなかなかのフォーム…シンデリア、いい走りをするじゃないか

姫:ありがとうっ…ございますっ

ナレ:走ったことなどないシンデリアでしたが、日頃、買い出しや雑巾がけで足腰が鍛えられておりましたので、悲しいことに魔女のランニングについていけてしまいました

ナレ:そうこうするうちに武道会の会場へたどり着いてしまいます

魔女:いや~いい汗かいたね。シンデリア、バテてないだろうね?

姫:いえ、大丈夫です!

魔女:ほう?…それでこそ私の弟子さね

姫:師匠、ここが武道会の会場なんですか?

魔女:そうさ。ウェイトリフティング、アームレスリング…何でも揃ってるよ。あんたはどの種目に出たいんだい?

姫:種目?

魔女:そうさ

姫:私…武道会に来るのは初めてで…みんなが踊る場所だということは聞いたことがあるのですが

魔女:踊る……ああ、空手の武の舞か。しかしシンデリア、お前型を知っているのかい?踊れるのかい?

姫:いえ、私…踊ったことが無くて

魔女:それじゃダメだ。ああいうのは日頃の鍛錬が物を言う世界だからね

姫:そう言えばお姉様たちも必死にステップを覚えておりました。…私ったら、何もしないで踊れると思いこんで…なんて恥ずかしい

魔女:恥ずかしがる必要はないさ、お前も努力を重ねればしっかり踊れるようになる

姫:師匠…!

魔女:しかしそうだな…じゃあ今日はとりあえずアームレスリングで登録しておこうか

姫:アーム…レスリング?

魔女:ああ、最初に提案した腕相撲のことさ

姫:あの私、それもやったことがなくて

魔女:大丈夫、私が教えてやるさ

ナレ:二人が受付を済ませると、一人の男が声を掛けてきました。どうやら魔女の知り合いのようです

王子:これはこれは不屈の魔女!お前さんがここに顔を出すなんて珍しいじゃないか

魔女:ん?…ああ、ジョルノか

王子:お前さん、最近じゃめっきり大人しくなったって界隈じゃもっぱらの噂だぜ?引退説まで流れてるぞ

魔女:ふん。私がタイトルを総なめし続けるのも他のやつらに悪いかと思ってな

王子:はっ!さすが、衰え知らずの不屈の魔女だ。あんたが魔力でその肉体を保ってるっていう話もまんざら嘘じゃねぇかもな

魔女:おや?お前さんもそう思っているのかい?

王子:まさか。…あんたは努力の人だ。俺が保証してやる

魔女:ほう?この国であんたにそんな保証されちゃあ、無敵じゃないか。…そう言えばお前さん、例のパーティへは参加しなくてしなくてよかったのかい?今日やってんだろ?

王子:ああ…あのお妃選び会か

魔女:そんな呼び方はおよしよ

王子:ったく…あんなことに国家予算掛けるならもっとこっちに回してほしいぜ。富国強兵のが重要だろうが

魔女:子孫繁栄の方が重要なんじゃないかい?あんただってそろそろ相手を決めなきゃならんだろ

王子:俺は次男だからいいんだよ

魔女:王も可哀そうに。こんなんが跡継ぎじゃおちおち引退も出来やしないだろうね

王子:兄貴が継ぐから関係ねぇよ。俺は兵士の方が向いてる

魔女:そうだね。あんたのその腕を生かさないなんてもったいなさすぎるからね

王子:ところで…あんたの隣にいる女、誰だ?

魔女:ん?ああ…紹介するよ、私の弟子だ

王子:弟子だぁ!?

姫:こんにちわ!

王子:どういう風の吹き回しだ?あんたが弟子を取るだなんて

魔女:いい目をする娘を見つけたんだよ

王子:はぁ?………おい、女

姫:はい?

王子:お前、魔女の弟子ってマジか?こいつがどんな怪物か知ってんのか?おいそれと弟子入りしていい存在じゃねぇんだぞ

魔女:怪物って…誉め言葉として受け取っとくよ

姫:師匠は……すごい人です

王子:え

姫:私、今まで自分の境遇を嘆いて泣いてばかりいました。どうして私ばっかり、って。…でも、師匠に出会って目が覚めました。自分の未来は自分で勝ち取る…考えたこともなかったんです。私…強くなりたいんです!

王子:お前…

ナレ:何度も言いますが、シンデリアはたいそう素直ないい子なのです

姫:これからは母様にも姉様にも逆らいます!理不尽を受け入れていい子でいるのを止めます!これ以上嫌われるのが怖くて何も言えなかったけど…もう止めます。ちゃんとぶつかって、ちゃんと家族になるんです!

王子:……

魔女:な?いい目をした娘だろう?ここまで3キロのランニング、息は切らせど私にピッタリついてきたんだよ

王子:なるほど……確かにあんたが弟子にしただけある。……お前、種目は何にエントリーしたんだ?

魔女:アームレスリングさ

王子:なるほど。じゃあ俺も追加でエントリーしよう

姫:え?

王子:手合わせ願おう。お前が気に入った

魔女:ほう?ジョルノをその気にさせるなんて…あんた、やるじゃないか

姫:えっ?えっ??

ナレ:悲しいすれ違いはまだまだ続くのです


0:大会が始まる


ナレ:さて、いよいよ武道会が始まりました。会場のあちこちで凄まじい雄叫びがあがっています

姫:これが…武道会っ!!若い男女が交流を広げる場……!

魔女:どうだい?初めて見る武道会の感想は

姫:すごいですっ…すごいです師匠……!みなさん筋肉がお綺麗でっ…!ああ、あの腕のポコッとした様…美しいですっ!

魔女:シンデリアは上腕二頭筋がお好みかい

姫:ああっ…!あのお腹っ…カッコいい…6つに割れたお腹…しゅてき…

魔女:おや、シックスパックにも目移りするなんて…とんだお転婆じゃないか。上腕二頭筋が発達してて腹筋がそれなり…じゃあさっきのジョルノなんて、いい体つきをしているんじゃないかい?

姫:え?

ナレ:魔女が指さした先には、先ほど話しかけてきた男がもう一人の男と懸垂回数を競っていました

姫:ああっ…!あの方、あんなに素敵な肉体をお持ちでしたのね…!

魔女:あいつは着やせするタイプだからね

姫:額から流れる汗…真剣なまなざし…ああっ…歪んだ表情も……イイっ……!!

ナレ:シンデリアは一目で恋に落ちました

魔女:さて、あんたの試合が始まるよ

姫:え?

ナレ:そうこうするうちにアームレスリングの試合時間になっていたようです。シンデリアの前に屈強な女が立っています。女はシンデリアを見るとニヤリと嫌な笑みを浮かべました

魔女:どうやらあんたを格下だと思ってなめ腐っているようだね

姫:……この視線、見覚えがあります。母様や姉様と同じ目…

魔女:あんたの力を見せてやりな

姫:私…行きますっ!!

ナレ:細腕のシンデリアでしたが、お米やお水を毎日一人で運んでいる彼女、実は結構な腕力の持ち主です。先ほど魔女から少しルールを教わっただけでしたが、大変飲み込みもよかったので

姫:うりゃぁぁぁぁ!!

ナレ:…なんと、自分よりも20キロもウエイトのある選手の腕を瞬殺で机にねじ伏せました。会場中からどよめきが聞こえます

姫:師匠!私、やりました!

魔女:ふん、1回戦を勝ったくらいで威張るんじゃないよ!あんたの力はまだまだこんなもんじゃないだろう?

姫:はい!私頑張りますっ!

ナレ:その後もシンデリアの快進撃は止まりません。会場中から「あんなやついたか?」「どこの戦士だ」と注目されていることに全く気づかずに、彼女はどんどん敵を倒していきます

ナレ:その様子を食い入るように見つめる先ほどの男

王子:しゅてきだ…

ナレ:17年間、抱いたことのないトキメキが彼の中に生まれました

姫:師匠!私…私っ!生きてるって感じがします!

魔女:あんた…最高に輝いてるよ!

ナレ:そんなこんなで最終戦。勝ち上がったシンデリアの相手は…先ほど初恋を覚えたばかりのあの男です。ですが、完全にスイッチが切り替わっているシンデリア

ナレ:本気モードの彼女は最終戦の前に、お気に入りのリボンで髪の毛をくくりなおすと目の前の男をまっすぐ見つめました

魔女:シンデリアのあの目…やっぱりただ者じゃないね…

王子:…こんなに胸が高鳴ったのは生まれて初めてだぜ。お前、名前は?

姫:名前なんて要らないでしょう?…拳と拳で語り合いましょう!

王子:ますます気に入った!相手にとって不足無しっ!!

ナレ:「……初めっ」…二人のゴングが鳴りました

姫:うおぉぉぉぉぉ

王子:おりゃぁぁぁぁ!!

ナレ:力が拮抗(きっこう)している二人。どちらが勝ってもおかしくない状況

姫:うりゃあぁぁぁぁ!

王子:はぁぁぁぁぁっ!!!

ナレ:一歩も譲らない戦いが続く中、王子の汗がシンデリアの手に掛かりました。その瞬間、シンデリアの中の乙女スイッチが入ってしまいました

姫(M):ああっ!あの人の汗がっ…!トゥンクッ……!

ナレ:シンデリアが乙女の顔をしたその一瞬の隙を見逃さず、男が一気にシンデリアの手を机までなぎ倒しました。歓声が沸き起こります

王子:っしゃぁ!!

魔女:勝負あったようだね

姫:ま…参りました…

ナレ:敗北感よりも、汗のせいで…つい先ほどまで自分が「恋した男と手を取り合っていた」事実に気づいたシンデリア。急激に恥ずかしさがこみ上げてきます

魔女:おや、どうしたんだい…そんな真っ赤な顔をして

姫:わたし…私…っ…!用事を思い出したので帰りますぅぅ……!!

魔女:ええ?表彰式は…!?

ナレ:脱兎(だっと)のごとく逃げ出したシンデリア。見たことの無い速度で会場を後にします

魔女:なんたる逃げ足!秘めたるポテンシャル……!

ナレ:あっという間に会場を後にしたシンデリア。残されたのはポカンとした会場中の人と、そして…

王子:これは…あいつのリボン………

ナレ:ポニーテールを作り上げていた、真っ赤なリボンただ一つでした


0:家につき


ナレ:家に帰りついたシンデリア。同じく家に帰ってきた姉達に汗だくの姿をドン引かれ、かつ自分が行っていた場所が「舞踏会」ではないという事実にようやく気付いたようで

姫:ああっ…私もう…お嫁にいけないっ!!

ナレ:真っ赤になりながら枕を濡らしていました。…一方その頃、武道会会場は大変な騒ぎになっておりました

ナレ:名も知らぬ女が優勝候補を文字通りどったんばったんとなぎ倒して決勝戦まで勝ち上がり、かつ試合後に忽然(こつぜん)と姿を消したのです。優勝した男はリボンを手に叫びました

王子:お前にまた…会いたいっ…!探し出してやる…どこにいたって必ず…俺がっ…!それまで、このリボンは預かっておくからなっ……!

ナレ:そんなこんなでシンデリア捜索隊が結成されようとしたその時

魔女:あ?探すも何も…あいつの家は3キロ先だで?明日案内してやるさ

ナレ:魔女の一声で、翌日にはシンデリアの家に王子の親衛隊が派遣されることになりました

ナレ:そして翌日。すっかり眠ったシンデリアはすべてがどうでもよく吹っ切れたようで…

姫:お姉様!私にばっかり仕事を押し付けないでくださいませ!自分のことは自分でやるっ!…お母様!食べた食器は自分で下げるっ!水につける!

ナレ:母や姉達に物怖じすることなく指示しておりました。初めこそ驚き言葉を失っていた彼女たちですが、すぐさま言い返そうとします。…しかし

姫:自分のことは!自分でやる!!…ね?

ナレ:シンデリアがポコッと作った力こぶを笑顔でにっこり見せつけるので、そのまま何も言えなくなってしまいました

姫(M):ありがとう…師匠…あなたが連れて行ってくれた場所は私が行きたかったところではなかったけれど…あなたが気づかせてくれた全ては私の宝物よ…

ナレ:会場中の熱気、立ち込める汗の匂い、そして割れたシックスパック……全てが彼女の脳裏に残っています

姫(M):私…あの夜のこと、決して忘れないわ。そして、あの人のことも……

ナレ:シンデリアは昨日手を取り合った男のことを思い出しました

姫(M):どうして私…名前を聞かなかったのかしら…せっかくあの人が聞いてくださったのに…どうして拳と拳で語ろうなんて言っちゃったのかしら…

姫:ああ、私って…なんて馬鹿

ナレ:シンデリアがボソッとつぶやいたのを、またも盗み聞いていた女が一人

魔女:ちょっとシンデリア!自分を馬鹿だなんて卑下(ひげ)するのはおよしっ

姫:師匠!一体どこから!?

魔女:そのツッコミは昨日すべきだったね!…それよりシンデリア、どうして表彰式の前に帰っちまったんだい

姫:表彰式…?ええっと…その…

魔女:あんたを国中が探しているよ

姫:なぜ!?

魔女:とりあえず、あと3分で王子の親衛隊がこっち来るから支度しな

姫:王子の親衛隊!?どういうことですか!?

魔女:どうもこうも、あんた王子に見初(みそ)められたんだよ

姫:だからなぜ!?

ナレ:大混乱のシンデリアをよそに、「たのもーう!」と道場破りのような掛け声とともに、許可する前にドアがバタンと開きました

ナレ:現れた人物を見てさらに驚き、言葉を失うシンデリア。そこには、昨日のレスリングスタイルと打って変わってまるで王子様のような恰好(かっこう)をした、昨日の初恋の君が立っておりました

姫:あなたは……っ!!

王子:朝早くにすまない。君に会いに来た

姫:……なぜ

王子:君に会いたかったからだ

姫:だからなぜ

王子:君に……惚れたからだっ…!

姫:っ……!

王子:どうか僕と結婚してくれないか。僕の名前はジョルノ。この国の第二王子だ

姫:なっ……なんですって!?

王子:どうか頷いて。そして二人で、この国を守っていきたいと思っている!

姫:私の…どこに惚れたというのですか

王子:腕力だ

姫:腕力!?

王子:ああ。たゆまぬ努力は嘘をつかない。君の力は本物だ

姫:王子…

王子:それと……君の血気迫るその瞳が好きだ。曇り一つもないその真摯(しんし)なまなざしに、君とならこの国を守っていけると確信した

姫:私…鍛えておりませんよ。昨日のはその…まぐれというか…深夜テンションというか…

王子:それでも君に惚れた!僕には君しかいないんだ!今度こそ、君の名を教えてくれないだろうか。…それとも、また拳で語り合おうか?

姫:…もうっ…!シンデリアとお呼びくださいませ!

王子:シンデリア!君となら幸せになれると信じている。…ともに歩もう

姫:……はいっ!!!

ナレ:こうして、この国に最強のカップルが誕生しました。

ナレ:後に二人はこの国の両翼の兵士と呼ばれ、どんな敵相手にもひるむことなく立ち向かうその姿に国民全員が虜(とりこ)になったとさ。めでたしめでたし

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

濁点をつけすぎた姫 4人用台本 ちぃねぇ @chiinee0207

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ