腕っぷしの立つ姫 3人用台本

ちぃねぇ

第1話 腕っぷしの立つ姫

【登場人物】父、リリィ(表記はリ)、カイ。プラスでモブがちらっと出ます。



父:リリィはどこだ!

リ:はい、お父様

父:お前…今朝方、先方から婚約取消の申し出があった!これで3度目だぞ!どうして大人しくしていない?お前は母さんに似て黙っていれば花のように愛らしいのに!なのに!

リ:お言葉ですが、私は襲ってきた賊をのしただけです。自分に降りかかる火の粉を振り払っただけですわ

父:王子の剣を奪い、3人もの盗賊を一人で倒す姫がどこにいる!王子に「助かったけど怖い」と怯えられた父の気持ちがお前にわかるかっ

リ:ではお父様は、黙ってさらわれて身ぐるみ剥がされ売られて来いと?

父:ふん。どうせお前のことだ、捕まったとて賊を倒して逃げるなど造作もないだろうが。王子のいないところでやれと言っているんだ

リ:嫌ですわ、私そんなに強くありませんわ

父:この城の誰よりも強いお前が何を言うか!いいかリリィ、次の縁談で最後だ。これが流れればお前は修道院行きだ。尼になりたくなくば、大人しく淑女を演じてこい

リ:どうして結婚か修道院の二択なんですの。末永く実家でゴロゴロしたいですわ

父:うちは万年赤字経営だ!知ってるだろう!

リ:はぁ。お父様の経営手腕が振るわないばかりに、娘は本当に災難ですわ

父:黙れ!いいか、お前は箸より重たいものを持ったことの無い淑女だ!わかったら今度こそ縁談を成立させて来い!

リ:はぁ…


0:1週間後、顔合わせ


リ(M):カイ・ヴィスコンティ。隣国の隣国の隣国の王子…って国遠っ。ホントにこれがラストチャンスってこと?

リ:初めまして、リリィ・ヴァロワです

カイ:ああ…その…初めまして

リ(M):ええ…なにこの歯切れの悪さ…もしかしてこの方も縁談に乗り気でない?でもどうにかして気に入られなくては。お祈り生活なんて絶対嫌!

カイ:ヴァロワ嬢。その…いくつか質問したい。答えたくなければ答えなくて構わないから

リ:どうぞ

カイ:その…君が何度も縁談を断られているという噂を耳にして…しかも破談の理由がその…君が余りにも屈強で勇ましいとか…あ、いや、いい意味で!

リ(M):誰がそんな噂を…しめなくては

リ:フォロー感謝いたします。破談の理由はひとえに、私が至らなかっただけでございます、どうか気になさらず

リ(M):って…気になるわよね

リ:私からも質問をよろしいでしょうか。答えづらかったら答えなくて構いませんわ

カイ:ああ

リ:殿下はなぜ、こんな遠い国の私と縁談を結ぼうと思われたのですか?こんな所に来ずとも、殿下の周りにはお慕いする者が大勢いますでしょう

カイ:…ひとえに、私が至らなかっただけだ

リ:まあ。ずるい返答

カイ:すまない

リ(M):…煮え切らない人ね。もういいわ、ズバッと行こうズバッと。

リ:殿下は伴侶に何をお求めですか?

カイ:え?

リ:なんでも致しますわ。殿下の望む伴侶を演じて見せますから、どうか私と結婚してくださいませ。この縁談が破談になったら私、丸坊主の道しか残っていませんの

カイ:ええ?丸坊主!?

リ:殿下の望む理想の女性像を教えてくださいませ!

カイ:えっと…じゃあ、強い人かな

リ:強い?ああ、内面の話ですか。大丈夫です、私へこたれることは滅多にございませんから

カイ:いやまあ、それもそうなんだが


モブ(父役の人お願いします):わぁ!?

モブ(リリィ役の人お願いします):ひぃぃ!来るなぁぁ!


カイ:何の音ですか?

リ:これはまさか…


モブ(父役の人お願いします):ドラゴンが出たぞー!逃げろーー!


カイ:ドラゴン?なんでっ

リ(M):はぐれドラゴン!こんなときに…ったく!こっちは人生掛かってるの!ここは大人しく殿下の手腕を期待して

カイ:あ、ああ…あああ

リ(M):あ、これダメなやつだわ。どいつもこいつも腰抜かして…たかが一匹のドラゴン相手に!

カイ:リ、リリィ嬢、おに、お逃げくださいっ

リ:…はぁ。もういいわ

カイ:え?

リ:殿下、その腰に刺した立派な剣をお貸しください

カイ:え?

リ:早く!

カイ:は、はいぃ!


0:剣がリリィに渡る。


リ:せっかく淑女を演じようとしてたのに…何してくれとんのじゃぁぁ!


0:直後、3段飛びジャンプでドラゴンに切りかかるリリィ。


リ:とっとと巣に…帰れぇぇ!


0:尻尾が切り落とされ、ドラゴンは逃げ帰っていった。


リ:終わった…

カイ:ヴァ、ヴァロワ嬢

リ:何も言わないでください殿下、私大人しく頭を丸め

カイ:結婚してくれっ!

リ:…はい?

カイ:僕は剣がからきしダメだ!どれだけ稽古をつけてもらおうと全くダメだ!この弱さのせいで嫁いでくれる女性にも出会えなかった。

カイ:でも僕は人には得手不得手があると思っている!僕は剣はダメだが学はある。経済も先代より発展させると誓う。

カイ:僕の弱さを補ってくれる女性を探していた。正直、初めて君を見た時はその細腕にがっかりしたんだが、君の強さは噂通りだった!

カイ:君を探していた!坊主になんかならないで、僕と結婚してくれっ!

リ:殿下っ…喜んでっ!


0:こうして、非常に強いお妃さまが守る大変裕福な国が出来上がったとさ。めでたしめでたし。

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腕っぷしの立つ姫 3人用台本 ちぃねぇ @chiinee0207

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