プロローグ

 ――俺の世界は悲しみで満ちていた。


 土砂降りの雨の中、傘も差さずに曇天を見上げていた。

 そして、冒頭の台詞を口にするくらいの中二病も発病した。

 しかしながら、これは仕方のないことだ。


 なぜなら、俺の彼女が浮気した。

 しかも、俺の親友とだ。


 初カノだったのに。

 すげー好きだったのに。


 アイツらこの辺りど田舎で一軒しかないラブホ『デイドリーム』から腕を絡めながら出てきやがった。


 今度、俺と行くって言っていたはずなのに。

 まさに、お前らだけ夢見心地。

 好きだった分だけ反動が酷い。

 

 あっ、無意識に韻を踏んでもーた。


 ぐすん……。

 涙が止まらん。


 おおん……。

 喉の奥底から嗚咽まで漏れる。

 

 翌日から、俺は学校へは行かずに家で引きこもった。

 どんな顔をして、二人に会えばいいか解らない。

 

 ――苦しい。


 勿論、彼女と親友――いいや、彼女と親友だったはずの人達からはフツーに連絡がくる。


 マジ?

 コイツら頭おかしいんじゃないのか?


 うん、全てをリセットしたい。

 そう思いながら――俺は兄貴のエロゲ『君と僕のデイドリーム何やこのタイトル、傷口めっちゃ抉ってくるやん』、通称『君デイ』を徹夜でやりまくった。

 心の奥底に虚しさを抱えたまま、ヒロイン達を落としに落としまくった。

 この子ら性格ええ子揃いやのに。

 彼女に浮気された俺はただのハーレム野郎へと成り下がった。


 まあ、ゲームの中でだが。


 そして、飲まず食わずで三徹明けの朝――。


 なんとか最難関ヒロインである山本ヤマモト凛音リオンルートを全攻略した。

 おめでとう、俺。

 やれば出来るじゃん、俺。

 これからも……がんばろうな、俺。


 しかし、その後、強烈な空腹感に襲われて、俺は近所のジャス○へと買い出しに向かった。


 エロゲの次は――暴飲暴食に走ろうとしたのである。


 しかし、ジャス○への道のり近所といっても徒歩で30分もかかるんだぜぇの途中で、俺は酷い目眩を起こして、そのまま用水路へ落ちてしまった。

 どうやら、三日間続いた雨で増水していたらしい。

 浅瀬だとしても、落ちた時に打ち所が悪かったようだ。


 ああ、俺はさながらオフィーリア。


 そのまま、グッバイ人生したのだった。


 

 

 

 


 

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