超不良執事に初恋と処女奪われました‥

酸っぱい木苺

第1話 約束


girl's side

『いや!お母さんが死んだら私は1人になるよ‥』

『1人じゃないわ。

あなたには大きくなったらお客様がくるの。

丁寧に‥愛をこめてもてなしをするって約束して?絶対に楽しくなるから‥』

『うん‥約束する。』


5年前‥病院のベットで優しく微笑む母と何度もこの約束をした。


私にこんな約束を何故させたかったのか当時は分からなかった。

だって、母が亡くなれば私の元に尋ねてくるのは‥


父の愛人とその子供くらいなのは目に見えていたから。


予想通り、母が亡くなってすぐに

愛人はやってきた。

結婚当初は仲が良かった両親らしいが

病気がちな母と‥

心臓に持病を持って生まれた私‥

父にとって、どちらも東雲財閥の今後に相応しくなかったのかもしれない。


‥私が丈夫に生まれてればまた違ったのかな

いつも優しく寄り添ってくれた母には申し訳ないと思っていた。


よくある流れで私の継母になった愛人は‥

母と暮らし思い出のこもった家を自分たちの居場所に作り変えた。


母が好きだった白い壁紙

拘って選んだと言った青いカーテン

アンティークな家具達

がなくなったのがとても悲しかったけど‥

家の端っこで大人しく静かに泣くしかなかった。


唯一、良かった点は

母の部屋をそのまま残してもらえた事‥

そこで絵を描く事だけが私の憩いの時間になった。


母の死から2年‥

不運にも父も事故で亡くなってしまった。

私が13歳の時だった。


‥お母さん。お客様じゃなくて。

来たのは継母と義妹なんだけど‥‥

ていうか‥

愛を込めたおもてなしって

どんな事なの。



boy's side

『俺は!執事よりひつじの方がなるならマシだ!』

『ふふ。君は面白い子ね。』

『なんだよ‥おばさん誰?』

『おばさんってねぇ‥東雲波よ。

執事より羊の方がマシな君に素晴らしい提案をしにきたの。』


天上院家–かなり名門財閥。

そこに生まれた俺。

幼い頃から何不自由なく暮らしていた。

執事養成所‥『聖ウリエル学園』にぶち込まれるまでは。


『聖ウリエル学園』

表沙汰は選ばれた人間しか通えない超名門校‥

実際は財閥御曹司が執事になり、

どこぞの財閥令嬢を捕まえ結婚し、

財閥を更に繁栄させる。

純粋無垢な学生は知らないだろうが

頭が回る彼は学園の構図に気がついた。


–馬鹿げた構図‥

嫌気がさした彼は

当時かなり荒れていた。


そんな時‥

突如現れたおばさん–東雲波。

茶髪でウェーブがかった長い髪と端正な顔立ち。かわいらしい雰囲気の美女。

‥ふわふわしてるのが財閥っぽくないが‥

東雲財閥–この国では5本の指には入る自分よりも名門財閥‥知らない奴はいない。


彼女は優しく微笑みながら話を続ける。

『私には娘がいるの。あなた達の誰かが執事に就くことになるわ。』

『で?どこがいい提案なんだ?

結局、執事になるのは変わらねーじゃん?』

『まぁまぁ、怒らないで聞いてよ。

うちの子、20歳まで生きられないの。

だから、君みたいにやる気のない執事が良いのよ。』


‥あほなのか?この女。

自分の娘が死ぬ前提で適当に執事やってくれる奴を探してるって‥

俺にとっては途中で死なれたら好きにできるし確かに都合はいいが‥

–話に乗ってやる事にした。


『へぇ‥それはいいかもな。』

『悪くないでしょ?

執事ってお嬢様の身の回りの世話もあるじゃない?うちの娘には一切しなくていいわ!なんでも好きな事をしてくれていい。』


‥やるじゃねぇか。東雲財閥。

『分かった。じゃあ、形だけお嬢さんの執事やってやるよ。』

『ありがとう!ただ1つだけお願いがあるの。』

『うちの娘が気に入らなければそれでもいい。ただ、あの子のお友達になってやってほしい。』


かなり真剣な顔つきな女に

知らぬ間に頷いてしまった。

流石名門財閥‥覇気はあるなと感じた。


程なくして

東雲波が亡くなったという訃報と共に

天上家に東雲波の遺産全てが届いたのには

流石の俺も彼女の覚悟に驚いた。


おばさん‥約束は‥果たしてやる。



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