鮎の塩焼き:あーゆーいんぐりっしゅ
旅先の土地で自信満々の変なおっちゃんたちと酒を飲んだことがある。
Nous
私はまぁアジア系の顔立ちで逆立ちしたって英国人で彼が連想するであろうタイプには見えない。彼が本当に言いたかったことは文脈から当然察していたが、どう答えるべきか迷った。
私が返答に窮していると、別のおっちゃんがこいつは英語が話せないんだと説明をする。その説明は間違ってはいないが、もやもやする。
おっちゃんは肩をすくめるとドヤ顔で続ける。
わかっていたけど答えられなかったんだ。
私はいつだか自分が某国の空港でやらかした間違いを思い出していた。免税手続きをとったあと、使っていないということを証明するために空港で手続きをする。場合によっては確認を求められることもあるので、確認するか係官に聞く必要がある。「あなたは私の荷物を確認したいですか」と言おうと思って、「あなたは私が欲しいですか?」と言ってしまったのだ。一瞬ビクッとした女性職員は一言「ノン」とだけ答えた。ああ、どうして私が今ここで昔の傷をほじくられないといけないんだ。おっさん、お前が恥ずかしがれよ。
私はまた言葉に詰まる。いや、中国語できないから。中国語は二年やったが、発音がまったくモノにならなかった。留学生の先輩の前で二外中国語組が自己紹介をしてみたとき、同級生はほめられていたが、私は違った。「黒石さん、ごめんなさい。あなたが何を言っているかまったくわかりません」と先輩は申し訳無さそうに言った。おい、おっさん、どうしてあんたは私の傷をほじくるのだ。
おっちゃんはドヤ顔で解説をする。
「わかった?」じゃねぇ。
この手の決めつけは結構あって、私の拙い語学力では説明するのも難儀であった。ただ、この自信は見習いたいものである。
適当にしゃべりたおして、話が通じなかったら、君はボクのいうことが聞き取れないのかなぐらい言ってやろう。このバカ話に教訓めいたものがあるとすれば、それになる。ネイティヴじゃなければ、多少文法がおかしくても良いんですよ。
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