揚げ出し豆腐:外食の楽しみ

 実家の食事は質素であった。

 一汁一菜が基本で副食的な皿がつくことはほとんどなかったと思う。

 あったとしても、せいぜい冷奴程度だっただろう。


 だから、居酒屋にはじめていったときには驚いた。

 つまみがたくさんあって、食べたこともないものばかりであることに驚いた。

 中でも感動したのは揚げ出し豆腐である。

 実家で豆腐といえば湯豆腐か冷奴か味噌汁の具か麻婆豆腐、この四択だった。

 えっ? 豆腐って揚げていいの? うわうまいー。

 これは俺のもんだ、お前らは食うなと独り占めしたくなったものだ。


 それからも外食先には知らないものがたくさんあった。

 天丼というのはこんなに気軽に食べられるのか、スパゲッティはこんなに種類がたくさんあったのか、なにこのライスコロッケってありえないぐらい美味くない? ナンってなんだよ、とまらない……。


 その後も見知らぬものにチャレンジし続け、かなり色々なものを食べた。

 もう思い残すことは……。


 誰か熊の手とツバメの巣おごってください。

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