赤身:赤点を正当化する
高校生の時、けっこうぎりぎりまで赤点をとっていた。
危うく留年するところだったというと私のバカさ加減がおわかりいただけるかもしれない。
部活がしんどくて居眠りが多かったというのがその理由である。
先輩方には文武両道の方が結構いらしたので、ただの自己正当化に過ぎない。
ただただ私の体力、技量がとことん足りていなかっただけである。学業の成績も悪ければ、部活でも補欠にすら入れなかった。
当時の私のバイブルは井上靖の自伝的三部作の三冊目『北の海』だった。
私は柔道部員ではなかったし、そもそも舞台となる旧制高校は今で言う大学教養課程なのだからまったく別物であるのだが、身を削るような生活でこの本には大いに助けられたおぼえがある。
「学をやりに来たと思うな」
「女はいないものと思え」(うろ覚え)
こういったセリフで自分の生活を正当化した。
物語に出てくる四高の柔道部員の中にはとても弱いものもいた。
選手としてはまったくものにならなかった私は彼に感情移入をした。
たとえ弱かろうともやりとおすことで何かが得られる。そう信じることが救いであった。何かが得られたかどうかはわからない。それでもやりとおしたという達成感はその後の生活に何らかの影響を与えたはずだ。少なくとも大学生活では高校時代にあきらめていたことに取り組むことはできたのだから。
自伝的三部作の四部目は存在しなかった。
後年、この作品の精神的続編と称する作品を読む機会があった。
当然貪るように読んだ。
最近、さらにその続編がカクヨムでも連載されている。読みたいけれど、読んでしまうのがもったいない。でも、ちびりちびりと読み始めている。
増田俊也 『七帝柔道記Ⅱ 立てる我が部ぞ力あり』
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