ヴィアンド:本当の肉
貧乏生活が長かった。
見栄をはってしまった。
正確に言えば今なお貧乏である。
とはいえ、学生時代に比べれば多少はましになった。
学生時代どれくらい貧乏だったかというと、割引シール無しで躊躇なく買えるのが鶏肉、それも胸肉だけで牛肉にいたっては割引シールの貼られた牛すじぐらいしか買えなかった。そもそも肉は贅沢品でモヤシがおかずの基本だった。
まぁ、知り合いには牛脂をいかにしてカロリーに変換するかを研究していた者もいたぐらいなので、それよりはましである。
そんなある日、研究会の手伝いをした。おかげで飲み会で奢ってもらえることになった。
焼き鳥を頬張って、鶏むね以外の肉を食べるなんて久しぶりですと目の前に座っていらした関西地方の先生にその感動と御礼を伝えた。
先生は
「黒石くんはほんまにかわいそうやなぁ。今度こっち来たらカシワじゃなくてほんまもんの肉食わせたる」
(記憶が曖昧かつ関西弁非ネイティブなので、ネイティヴの方におかれましては心のなかで正しい表現に変換してください)
結局、その機会は訪れなかったのだが、鶏肉は肉ではないという認識はなかなか衝撃的であった。
たまには
そう考えた私はその後、豚耳料理のレパートリーを増やしていくことになるのだった。
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