人を呪わば己にも
片眼の兎
第1話
あたしの方が綺麗じゃないか
あたしが歩くと男衆は目尻下げて厭らしい目で見るんだよ
あんな真面目腐った華もない女とは大違いだよ
其れなのにあんたはあの雑草に混じって咲く野の花のような女が好きなんだね
悔しい
悔しい
あんな女にあんたが惚れるなんて
畜生
あの女どうしてくれようか
あたしは夜毎神社に行き懐刀で小指の腹に刃を当てると真横に引き薄く長い傷から滴る粘度の高い液体を賽銭箱に垂らしながら
「あの女が醜くなりますように」と願う
二十日ばかり通った頃あの女の噂を耳にする
何でも艶のある自慢の黒髪が櫛をとおす度に大量に抜け女は抜けた黒髪を握り気狂いになっていったという噂だった
ふん 様あ見ろ
その噂が広がっている頃
あたしは自慢の顔に出来た大小の腫れ物が破れ黄色や緑の膿を出し目は膿で塞がり顔からひっきりなしに流れる膿で着物も帯も濡らしていた
膿みで覆われた顔はまるで化け物のようで家中の鏡を割り硝子を割り水さえも恐れ日々狂っていった
どうしてこんなことになったのだろう
女は狂っていく頭に問い掛ける
人を呪わば己にも 片眼の兎 @katameno-usagi
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