第80話 誕生日 朝
『涼、誕生日おめでとう!』
寝る前の日課になっている栞との通話でお祝いの言葉をもらった。
現在丁度日付が変わったところだ。
「ありがと、栞」
『へへ、一番最初に涼におめでとうって言いたかったんだぁ』
今日はやたらと話を引き延ばすなと思っていたらそういうことらしい。普段ならもう30分くらい早く切り上げて寝るところなのだが。
『明日……あ、もう今日だね。朝また涼のうち行くからね。起こしてあげるから寝てても大丈夫だよ』
「そんな無理しなくてもいいのに」
『無理してないよ。私がしたいの。今も言ったけどやっぱり直接最初に言うのも私がいいもん』
こうなってくると栞の誕生日には俺が早朝から黒羽家にお邪魔しないといけないことに……
『あ、私の時は起こしに来なくていいからね?ほら……やっぱり寝起き見られるのまだ恥ずかしいし』
俺の考えを先読みしたようなことを言われた。にしてもまだ寝起きの顔は恥ずかしいらしい。
「もう何回も見たのに?」
『それでも!』
「一緒に暮らすことになったら毎日見るよ?」
『私の方が先に起きるもん』
「そ、そっか……でも、無防備な栞を見るのも俺は好きだよ。寝起きの栞は割と甘えん坊だし」
『うっ……ならたまには……でも寝ぼけて無意識に甘えるんじゃなくて、ちゃんと意識的に甘えたいよ』
意識的に甘えるってなんだよって思ったら、苦笑が漏れていた。
『笑わなくてもいいじゃん……』
「いや、栞は可愛いなって」
『誤魔化そうとしてるでしょ?』
「してないよ」
『むー……ま、いっか。とにかく朝起こしてあげるから、ちゃんと寝てるんだよ?それじゃ、おやすみっ』
「え、あぁ、おやす──」
もう切れてるし……
ちゃんと寝てろってまた何か企んで……?
いや、考えるのはやめよう。どうせ俺に栞は止められないんだから。
翌朝。
耳元で栞の声が聞こえる。
「涼、起きて。朝だよー」
これは起きないとまた耳に息を……
──かぷっ。
「~~~~~~っ!!」
「あ、起きた。おはよ。誕生日おめでとう!」
「それはありがとうだけど、何してるの?!」
「え?なんか涼の耳見てたら噛みつきたくなっちゃって、つい……」
「ついって……」
「だって、私がベッドに潜り込んでも涼起きないんだもん。イタズラしたくなっちゃうでしょ」
「いや、やりす──んっ」
俺を無理やり黙らせた栞はパッとベッドから降りる。
「ほら、起きないと遅刻しちゃうよっ」
そう言って呆然とする俺を残して部屋から出て行った。
俺の彼女が朝からすごく攻めてくる。嬉しいけど……ちょっと刺激が強すぎる。
栞も心なしか顔が赤かった気がするし。照れるならやらなきゃいいのに……
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