第5話
ヨツヨシの携帯端末が振動する。
それに反応すると、ヨツヨシは携帯端末を取り出して画面を確認する。
「(エン様の配信が始まってるな)」
ヨツヨシは早速配信を確認する。
彼が登録している数少ない神様であり、言うなればその登録している神様が、ヨツヨシにとっての奉納している神様であった。
『こんにちは、エンです。皆さん』
その様な言葉を口にして、彼女は両手で手を振って挨拶をした。
黒い髪の毛に赤い瞳。
表情は常に無表情、画面に映る彼女は特に視聴者に媚びている様子もない。
『本日は晴天です。こちらでの話ですが、良い天気ですね、私は室内で過ごしていますけど』
特徴的な言い方。
それが彼女の魅力にも繋がっているのだろう。
視聴数は時間と共に上がっていく。
開始して十分で既に視聴者数は一万人を越えている。
登録者数は120万人であり、中堅配信者の立ち位置であった。
「(今のうちに奉納しておかないとな)」
彼女に奉納する為の金額を手で入力する。
奉納額は最大で100万円分を入金する事が出来た。
なので、ヨツヨシは100万円分を彼女に奉納する。
別に彼女に熱心になっている、というわけではない。
これくらい奉納しなければ、彼女から得られる権能の能力が低くなってしまう為だ。
奉納したことでヨツヨシの名前とコメントが流れる。
「奉納ですね、ありがとうございます。あまり無理をなさらないように、まあ無理をしなければ権能が使えないのでしょうが…『ヨツヨシ』、さん…、ええ、ありがとうございます。『奉納致します』、ですか、そうですか。…もっと」
彼女がヨツヨシの定型文に反応した。
いつも表情が無である彼女が珍しく目を大きく見開いている。
口を開いて、何か言おうとしていたが…、口淀んでしまい咳払いをする。
「…いえ、ありがとうございます、私の権能をどうか役立てられるように」
彼女はそう言って雑談を始める。
ヨツヨシは画面で彼女を見ながら、ゆっくりとホームボタンを押して配信から離れる。
「(何を言い掛けたのだろうか?…まあ、些細な事か)」
ヨツヨシはそう思いながら携帯端末をポケットにしまう。
口の裂けた箇所から涎が垂れ流れたので、それを手の甲で拭った。
携帯端末が小刻みに震える。
「(ん、…あぁ。また討伐か)」
予め設定しておいた携帯端末機能。
これによって、ヨツヨシは凶ツ神の出現情報が出ると、バイブによって教えてくれるようになる。
「(場所は…丁度、このバスを使って十五分先か…、間に合うといいな)」
ヨツヨシはバスに揺られながらそう思うのだった。
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ここまで作品を読んで下さりありがとうございます。
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