第2話
神に奉納を行い、その恩恵を得た者を指す。
基本的に神の権能を得た者全般を指す言葉ではあるが、配信をする人間、配信者と混合され、凶ツ神討伐をする者は拝神者と呼ばれる事もある。
彼ら拝神者が動画配信をした状態で凶ツ神の討伐を行うのは、行政組織・神代庁によって定められた事であった。
普通の人間が神の力を行使する場合は武器を所持する事と同じであり、公共の場で行使した場合は不正使用及び凶器所持として警察から身柄を押さえられる。
動画配信を通じる事で神代庁から許可が下りた状態となり、動画配信している間のみ神の権能を使用しても許されている。
拝神者となるには、基本的には神代庁から行われる年二回の試験に合格する事で免許及び動画配信用の携帯端末が送られる。
「討伐完了、ありがとうございました」
ヨツヨシは挨拶をすると共に配信を終える。
凶ツ神は討伐を行われた際、その肉体は鳥が処分する。
神の力を得ている鳥は、神の力が残る凶ツ神を吸収し、その分のエネルギーを神力管理局へ転送。
そしてその凶ツ神の神力の分が電子マネーとしてデータバンクに加算される。
表示画面を確認して振り込まれた金額を確認する。
凶ツ神一体の討伐で約10万円程の金が入って来るので、中身を確認した末にヨツヨシは鳥を手に乗せる。
鳥は携帯端末へと戻った所で、ジャンパーのポケットにしまい込んでその場を後にしようとした。
人通りが多い場所であった為に、凶ツ神の出現には二択の人間が生まれる。
一つは凶ツ神から逃れようとする人間、もう一つは凶ツ神及び、拝神者との戦いを撮ろうとする人間の二つ。
既に討伐が終わった所で、拝神者の撮影を終えた人間たちは話題のタネを以てその場を去っていた。
恐らくはその話題を使い、SNSで発信したり、凶ツ神に対する意見、拝神者と言う存在に対しての好奇心や不満をSNSで流しているのだろう。
既に、ヨツヨシは顔バレをしている拝神者だ。
時に、ファンと言う輩もやって来る事もあるが、今日は別段そういうのも無い。
凶ツ神を討伐した事で金を手にしたヨツヨシは、その場から離れようとした。
先程まで凶ツ神と拝神者の周囲は誰も居なかったが、脅威が去った事で人は何時も通り歩き出している。
ヨツヨシも、その通行人に紛れる様に歩き出した。
「じゅる、しッ」
歩いている途中、涎が口から溢れ出す。
ヨツヨシの顔面の半分の肉は削がれていた。
凶ツ神との戦いで、頬が裂かれてしまい、回復する事が出来なかった。
現在程の財力があれば、肉体の再生を神の奉納によって行う事も出来るだろう。
だが、当時はそれを払う金も無く、結局現代の医療に頼る他無かった。
そうして、彼の頬は裂かれたままで歯茎が露見している。
醜い姿、口裂け男など、ネットで勝手に行われている拝神者リストでは、その様な非情なコメントも寄せられていた。
曲がり角を曲がった時。
ヨツヨシの視線は、曲がり角で出待ちをしている女性に映った。
その姿を確認した時、ヨツヨシは嫌そうな表情を浮かべる。
マスクを被った女性だが、その姿とロングヘアで誰であるか分かる。
「由良様じゃないですか」
男は面倒臭そうな表情をしながらそう言った。
マスクをズラして笑みを浮かべている由良。
彼女は配信者である、神と呼ばれる以上、多くの人間から信仰と言う登録者を持つ女性である。
「さっきの配信見てたよ、
にひりと笑っている彼女。
ヨツヨシとは、彼の配信上での名前であった。
本名は
どの漢字も全て訓読みで『ヨシ』と読める為、四つのヨシで『ヨツヨシ』と言う名前だった。
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