第3話 三国志歴史用語解説①

エルフ族

【概要】

彗星に乗って超越者達の住まう世界(=惑星?)にやってきた異星人という伝承を持つ種族。本来の歴史ではこの世界に存在してはならなかったネフィリムと異なり、予め超越者達と共存することが決定していた。

【世界で愛されるファンタジーの定番種族】

エルフはファンタジー作品に登場する数多くの種族の中でも人間に近い容姿で類稀な美貌と叡智の持ち主として知られる存在です。

【外見】

容姿端麗で耳が長いのが特徴である。

【性格】

非常に天衣無縫かつ友好的

【寿命】

極めて長い。500年とも1000年ともされる。あまりに長命なため、寿命で死ぬ者は少なく、多くは戦いや事故で命を落とす。

【魔法】

エルフ族が魔法を使えるのは、彼女らが異邦における超越者であるからである。

【エルフの弓】

古代蜀の秘宝。

【意外と知らないエルフのバリエーション】

実はトールキンの創作世界には、様々なエルフの部族が存在しています。映画の人気キャラクターのレゴラスは「シンダール」の一族で、彼が映画『ホビットの冒険』で好意を寄せていたタウリエルは「シルヴァン・エルフ」だったため、レゴラスの父はふたりの交際に否定的でした。こうした部族間の閉鎖的な気質もエルフならではといえるでしょう。

トールキンの創作世界におけるエルフの分類

エルダール

中つ国からアマンへ旅立ったエルフたちの総称


ヴァンヤール

上級王イングウェに率いられた第1陣。金髪で詩歌を愛する民。

ノルドール

旅の第2陣。手技と知識を愛する黒髪のエルフ。

テレリ

旅の第3陣で、「遅れてくる者」の意。銀髪で水を愛するエルフ

ファルマリ

テレリの分派で、アマン到着後は海辺に住み着き「海のエルフ」と呼ばれた。


シンダール

アマンへの旅の途中で中つ国の北西べレリアンドに留まった者たち。別名「灰色のエルフ」

ファラスリム

べレリアンドの西の岸辺、ファラスに留まったエルフたち。

ナンドール

「引き返す者」の意。西方への移住を望まずに分裂し、さらに『ライクウェンディ(緑のエルフ)』

と『シルヴァン・エルフ(森のエルフ)』に細分化していった。

オーク

 貴方方人間族がRPGでよく馴染んだあのオークと何ら変わりません。異世界ファンタジー作品には必ずといっていいほど登場する、定番のモンスターがオークです。一般的には人間よりも大柄で、牙の飛び出した豚のような顔をしており、性欲が旺盛といった特徴も持ち合わせています。

 オークはゴブリンやコボルトなどとは違い、神話や民間伝承から生まれたモンスターではありません。古代中国において猛威を振るっていた勇猛果敢ながら残忍で怜猾な兵士種族です。オークの名が小説に初めて登場したのはトールキンの『ホビットの冒険』で「ゴブリン」と呼ばれていた種族の新たな呼称として使われたのがはじまりです。

『指輪物語』に登場するオークは、エルフが変容した成れの果てだといわれています。邪悪な冥王がその下僕とするため、捕らえたエルフを拷問によって堕落させたことで醜悪な姿のオークが誕生しました。オークはその繁殖力を生かして個体数を一気に増やすと、人間以上の腕力や破壊に適した武器を作る能力、エルフにも劣らない知識を発揮して人間をはじめ、冥王に隷属することを嫌う中つ国のすべての民と戦い続けることになります。

なお、現代のファンタジー作品では、オークとゴブリンを同義、同一種として扱うことはほぼなく、まったく別の生物、種族として描かれるのが一般的です。

【各ゲーム作品のオークについて】

 豚の容貌

豚のような顔で描かれる描写についてだが、トールキンの作品には豚似という設定はなく、トールキンの遺稿(書簡)からは、せいぜいオークが鼻ぺちゃ(\"flat-nosed\")であるという言質が取れる程度である。 オークが豚顔(豚の頭部)を持つという設定は、RPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(「D&D」)のオリジナル版(1974年)においておこなわれた。英米のファンタジー作品でも、往時のイラストも、オークが豚顔のものが多い。昨今・現今の「D&D」ゲームでも豚顔の設定は健在であるアイルランド語 orc(英語のporkと語源が同じ)は豚という意味を持っているが、この偶然一致と、古来、聖職で、予言の力を持つとされた豚飼いが零落して邪悪なイメージを伴ったというアト・ド=ヴリースの説と関連すると思われる。

ダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D)では、オークは"好戦的なヒューマノイド(いわゆる亜人)で、他の生物に対し強襲・強奪・戦闘をおこなう"とする。個々のオークは異なる出身部族に属するという設定である。

容貌

トールキンと似たようなオークをD&D系ゲームに登場させた、とゲーム開発側はしているが、以下詳述するように、独自の設定がみられる。 先にも少し触れたが、D&Dでのオークの風貌は「猪のような牙が目立つ豚のような顔」として豚説が採用されている。


肌の色は、かつて灰色に設定されていたが、初版(1977年)の設定では灰色ではなく、"オークの見た目が格別おぞまじいのは、その色合いのせいである―その褐色ないし褐色のかかった緑色には青っぽい光沢があり、これがピンク系の鼻づらや耳を強調させる。剛毛の毛は濃褐色か黒色だが、タン斑のときもある"と細かく記述されていた。近年の第5版(2014年)では、肌色の言及をやめている。

混血種・部族性

ハーフオーク(オークと人間の混血)という種族が初期のゲームにおいてすでに選択肢にくわえられた。D&Dのオークは、部族に分かれて集団を形成するとされる。オークじたいも亜人(ヒューマノイド)に該当するが、好戦的であり、他の亜人種を襲い略奪をおこない、血の騒ぎを鎮めるとされる。各部族の長として「オーク・ウォーチーフ(オークの戦闘酋長)」が設定されているが、部族衆の血の騒ぎを定期的に発散させることに努めないと、弱腰とみなされてしまう。 オークがとくに地中に棲息し、地下の土木作業にも長けている点が『モンスター・マニュアル』初版(既述。略称『1E MM』)では強調されていた]。だがのちの版ではオークは(洞窟のつながった複合集落にもあいかわらず住むことはあるが)、地上にも棲息する設定にシフトされており、たとえば陥落させた村落を、住処にコンバートしてしまう。 オークの観念(神話伝承)や思考については、ロジャー・E・ムーア(英語版)による《ドラゴン》誌の記事(1982年)に詳しい。


 The Elder Scrolls

ゲーム作品 『The Elder Scrolls』の世界においてオークは、エルフや人間、獣人達と同様にプレイヤーキャラやNPCとして登場する。表向きは数多の種族と共に文化生活を送る好戦的で豪胆な戦士系種族として描かれてはいるが、ゲームに登場する一部の書物ではゴブリンやオーガと同じく野生の凶暴な亜人種となっており、その性質上獣人同様に被差別種族として描かれている。また、地方によって差別の度合いは異なるようで、オークを完全に拒絶する地方もあれば書店や宿屋をオークが経営する地方もある。ただし、「醜い種族」という概念はどの地方でも共通しており、事実、緑色の肌に獣のような目と牙という外見を持っている

(引用元:ウィキペディア)

オーク

イギリスの作家トールキンの『指輪物語』を中心とする作品群に登場する亜人種。生命を創造できない悪の存在モルゴスが、尖兵とするべく捕らえたエルフたちを改造して生み出したとされるが、作中でもこの経緯ははっきり描かれてはいない。様々な形態や種族が存在するとされるが、おおむね残忍で卑劣な性格をしている。『指輪物語』をモチーフにしたTRPGや、それに続くコンピューターゲームなどで豚の頭を持つ亜人種のイメージが定着し、後の創作に大きな影響を与えることとなった。




レビヤタン

ヨブ記やイザヤ書などに登場する,古代オリエント世界の神話的な怪獣。蛇か、鰐のようなものと考えられ、宇宙創生以前の混沌のシンボルであった。しかしイスラエルでは女神に退治される怪獣もしくは女神の前に戯れる害のない生き物となっている。なお、ヨブ記に出てくる「ベヘモット」も同じような怪獣である。

(詩篇74章14節より、あなたはレビヤタンの頭を打ち砕き荒野の獣の餌食とされました,

とある)

(詩篇104章26節より、そこには船が行き交いあなたの造られたレビヤタンもその中で戯れる,

とある)

ミミック

ファンタジー世界を舞台としたゲームでは、戦闘や冒険の報酬、隠されたアイテムなどは決まって宝箱に入っているため、それを開ける瞬間は誰もが喜びやワクワク感で油断してしまうものです。

その心理を逆手に取り、宝箱に擬態して人を襲うモンスターがミミックです。

 宝箱そっくりの外見をしたミミックは、その開口部が巨大な口になっていて、中には鋭い歯がびっしり生え揃っています。普段はしっかり口を閉じ、その場を動くことなく獲物が近づくのを待ち構えていますが、何者かがうかつに箱を開けようとすると突然襲いかかり、噛み付いて攻撃してきます。また、魔法を駆使する個体もいるようです。 一般には手足を持たない姿をしているミミックですが、人気ゲーム『ダークソウル』シリーズのミミックに相当する敵・貪欲者は、宝箱の底に人型の下半身、開口部からは二本の腕と長い舌が生えており、アクティブに動き回る異形の怪物として描かれています。


 ナス

ゾロアスター教の女悪魔。蝿の姿をとり、屍を好み、伝染病を撒き散らす。

ゾロアスター教の悪魔は地下(一説によれば北の果て)の地獄に住んでおり、地獄の入り口には大きな山がそびえている。山の名前は「アルズーラのしゃれこうべ」(直訳ではアルズーラの醜い頭)といい、しばしばアーリマンとその眷属の周回の場となる。この山の洞窟からこの世に飛んでくる。この世にやってきたナスは、死と腐敗の匂いのするところに居つく。死骸に見張りがいないか、いても一人だけなら、彼女は速やかに目や耳の穴から死骸に入り込み、僧侶や戦士など生きていたときに人に慕われていた人間の死骸ほど、広範に伝染病を撒き散らすらしい。

この女悪魔から死骸を守るには、神聖な呪文を唱える、猛禽や犬を飼うといった方法が有効であるとされる。なお、ゾロアスター教では犬をかなり尊敬するが、イスラム教ではそうでもない。

 雍和ようわ 恐慌の兆しの一つ。猿に似た黄色い姿をしているが、赤い目と赤いくちばしをもつという獣。。

雷公 中国の西南部およびベトナム、タイ、ラオスなどにすむミャオ(苗)族の災害神。大洪水を引き起こし、一たび世界を滅ぼした。

窮奇 善を退け、悪を薦める悪神。喧嘩をしている人のところへいって正直な者を食らい、誠実な人間を見つけるとその鼻を食らう。しかし、悪霊を払う降魔神ともされる。

九嬰 凶水という川の神。「九頭の怪物」ともいう。天帝の命を受けた羿に退治された。

ミクトラン

アステカの神話に登場する地下世界。死んだ者が赴く世界で、死者はミクトランまで4年もの間旅をしながら様々な試練を受ける。

魔法円

 悪意のある存在から身を守るために用いられる魔力のある図形。図形として「閉じていること」が重要で、必ずしも円を描いているわけではない。また、図形の各所には魔除けのシンボルが巧妙に隠されている。魔法円は聖別されたチョークや木炭など様々なものを使って描かれるが、血液や絞首刑に用いられた鎖など気味の悪いものが使われることもあった。近年のフィクションでは、その見栄えの良さから召喚や攻撃の手段など様々な用いられ方をしている。


 ラファエル

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教において重要視される大天使。ミカエル、ガブリエル、ウリエルたちと共に四大天使と呼ばれることもある。旅人に身をついやして少年トピアに同行したことから、旅人の姿で描かれることが多い。また、このエピソードから癒やしの天使、旅人の守護者などの役割を持つと考えられている。ユダヤ教の伝承では大地を癒やす存在である一方、幽閉された堕天使たちを監視する役割も持つ。

マージ

英語で「合体させる、混ぜ合わせる」の意味

ドワーフ

欧米の伝承に登場する小人の妖精。古くは北欧のドヴェルクにまでさかのぼることができるとされる。大抵は老人のような姿で細工物に優れ、奇妙な脚をしていると考えらていれた。また、女性はおらず石から生まれる、朝日を浴びると石になるなどともいう。ドイツの伝承では優しく金銀細工に優れた白ドワーフ、働き者が好きで装飾品を作るのが上手な茶ドワーフ、意地が悪く武器づくりが得意な黒ドワーフがいるとされている。現在の職人気質で勇猛な戦士というイメージは、イギリスの作家トールキンの『指輪物語』の影響が強い。

伏犠

古代中国の伝説の帝王。人の頭に蛇の体を持ち、八卦や文字などの文化を人にもたらした。女媧の兄弟にして夫であり、女媧と共に人類の祖となった。

斬撃 斬る。敵の肉体を切断できれば、非常に大きなダメージを与えられるが、装甲面を切断するのは難しい。

突刺 突き刺す。一点に攻撃力が集中するので、装甲を貫く力は弱い。ただし、刺さった場所によって、ダメージの差が大きい。


剣と刀  刃に持ち手をつけた武器で、斬撃もしくは突刺ダメージを与える。一般的な武器で、腰に下げることができるので、普段身につけていてもあまり違和感がない。このため、貴族などの地位の象徴としても着用された。

ショートソード

古代中国や中世ヨーロッパで広く使われた剣。戦場でも、普段使いでも使われた。本来は歩兵が使う普通の剣。騎士の剣がロングソードと呼ばれたので、こちらはショートソードと呼ばれた。

ブロードソード

近世中国や近世ヨーロッパの剣。「幅広の剣」という意味だが、中性のショートソードほど幅広ではない。同時期に使われたレイピアなどに比べて幅が広いという意味だった。

シミター 中世アラビアや古代中国で使われた刀。アラビアではシャムシール、日本では新月刀や三日月刀という。アラビアは暑いので、あまり厚すぎる鎧を着けることができない。だから斬る剣が発達した。サーベルは、シミターを手本として後に西洋で作られたもの。柄に湾曲があり、斬り合いになっても、手からすっぽ抜けないので便利だった。

長柄武器 長い棒の先に、刃などのダメージ源を付けた武器。代表的なものは突刺武器の槍だが、ほかにも様々な長柄武器がある。敵をより遠くで攻撃できる分、有利。このため,中世~近世の軍隊では主要武器として使われる。懐に入り込まれると非常に不利になるが、兵士が並んで槍を並べていると、なかなか懐に飛び込むのは困難である。それでも緊急時用の予備武器として小剣などを持つ。


 偃月刀

中国では太刀とは、刀ではなく薙刀のような長武器を指す。(アラブや古代中国の円月刀と違い)偃月刀は、太刀の一種で、『三国志演義』の英雄関羽の武器として有名である。その重量そのものが武器であったり、たとえ敵を斬れなくても、その重い一撃で敵を倒す。関羽の得物は更に重く82斤(約50kg)ほどもあったとも伝えられる。

 騎士団

中世における騎士は、そこまで広くはない土地と住民を支配する小領主であり、有事には武器を手に騎乗して戦う戦士でもありました。ただ、中世では戦いがあるときに召集するのが普通で、現代の軍隊のような平時から戦闘集団を保持する常備軍は備えていません。しかし、その中でも例外があり、それが十字軍時代に結成された騎士修道会(騎士団)でした。

「騎士修道会」とあるように、彼らは騎士であると同時に修道士でもありました。元々は第1回十字軍の際に聖地エルサレムを占領したのち、ここに訪れる巡礼者の保護を目的として結成されました。それ以外にも、巡礼者用に設立した病院兼宿泊所の運営なども行いました。騎士団といえばテンプル騎士団、聖ヨハネ騎士団、ドイツ騎士団(チュートン騎士団)が日本でも有名で「3大騎士団」とも呼ばれますが、いずれも十字軍時代に誕生した騎士団です。

コキュートス

ギリシャ神話の冥界を流れる5つの川のひとつ。「号泣」の意味で、埋葬されない死者はこの周辺を100年の間さまようと考えられていた。13世紀の詩人ダンテの『神曲』では、魔王ルシファーの座す氷に閉ざされた地獄の最下層として描かれている。

ゲブ

古代エジプトの神の1柱。多産や豊穣を司る大地の神で、身を起こそうとする黒い男性の姿、もしくは象徴である雁を頭に載せ、正装をした男性の姿でも表される。死者を地下に捕らえる悪神ともされ、地震はゲブの笑いと考えられていた。妻の天空神ヌートとの間にオシリス、イシス、セト、ネフティス、ホルス(オシリスの息子とは別の神)をもうけており、ファラオの保護者ともされる。

メタトロン

ユダヤ教において重要視される天使。義人エノクが天界に昇り、天使になった姿とされる。太陽のように輝く顔の巨大な火柱のような姿で、36対の翼と36万五千の目を持つ。『小ヤハウェ』とも呼ばれた天使たちの最高位に位置し、この世のあらゆる出来事を記録する天界の書紀のほか、様々な役割を持っているとされる。

聖キプリアヌス

18~19世紀のトレジャーハンターたちの間で人気の高かった魔導書にはよくアンティオキアの聖キプリアヌスの名が使われていた。たとえば、19世紀のスペインでは秘法リスト付きの『聖キプリアヌスの書』が出版され、大衆の人気を得ていた。また、18世紀のデンマークとノルウェーではほとんどの魔術書が聖キプリアヌス作だった。

 ここでいう聖キプリアヌスは、3世紀に実在したカルタゴ司教だった聖キプリアヌスとは全く関係のない伝説上の聖人である。次のような伝説がある。シリアのアンティオキアのキプリアヌスは子供のころアポロン神を信仰し、ミトラ教を学んだ。さらに、エジプトやバビロニアを遍歴し、あらゆる秘教を身につけて帰国し、異教徒から偉大な魔術師と讃えられるようになった。彼は最高のダイモーン(霊の一種)と結び、様々な精霊を駆使することができたからだ。しかし、あるときこんなことがあった。1人の男がやってきて、魔術を使ってある女性を手に入れられるようにしてほしいとキプリアヌスに依頼したのだ。その女性はジャスタという敬虔なキリスト教徒の処女だった。キプリアヌスはすぐにも魔導書を使って悪魔を呼び出したが、キリストへの信仰で武装している彼女の力はおよばなかった。さらに強力な悪魔を呼び出しても駄目だった。このためキプリアヌスはついに十字架以上のものはないと悟り、自らの罪を悔いて改宗した。その後有徳の司祭となり、304年のディオクレティアヌス帝の迫害にあい、殉教したのである。

 こうして伝説となったことで、中東では非常に古くからキプリアヌスが作ったという呪文や護符が広まった。そして、18世紀後半になってキプリアヌス作という魔導書がヨーロッパに広まるようになったのである。

魔導書の目的

人々が魔導書を使うのは多くは俗っぽい目的であり、何といっても人気があったのは宝探しと異性の愛を獲得する魔術だった。


宝探しと愛を獲得するために使われた魔導書


 魔導書はいったいどんな目的で使われたのだろうか? それによって自然の秘密を学ぼうとした人たちがいることは間違いない。しかし、多くの場合、魔導書を使う目的はもっと俗っぽいものだった。

 魔導書のテーマとしてとくに人気があったのは宝探しと愛を獲得する魔術だった。現代人には不思議に思えるが、中世はもちろん近代になっても宝探しは盛んに行われており、多くのトレジャーハンターたちが魔導書に頼ったのである。また、その時代は恋愛はそんなに自由ではなかったし、自由に性的関係を持てる時代ではなかったので、異性の愛を得ることは誰にとっても重大な関心事だった。愛というより、明らかにわいせつ目的で魔導書に頼る者たちも多かった。魔導書には女性を裸にして踊らせる方法とか透明人間になる方法などが説明されていることがあるが、それはあきらかにわいせつ目的の魔術といっていいのである。

貴族にとっては政治力に関したことも重要な関心事だった。それで、高位の人の愛顧を得たり、敵の陰謀を暴いたりする方法なども魔導書のテーマとなった。

 泥棒の探索も魔導書を使う大きな目的だった。現代と違い、盜まれた物を取り返す方法など魔術くらいしかなかったからだ。この魔術は被害者が魔術師に犯人探索を祈願したと公言することで一番大きな効果を発揮した。








スペクター


魂を追い出し肉体を奪う悪霊


ゴーストと同様に、幽霊や亡霊に類するもののひとつ。悪霊として扱われることが多く、恐ろしい姿で人々を震え上がらせ、災いをもたらすとされる。

 スペクターに遭遇した者は、その姿に恐怖した後、肉体を乗っ取られて魂だけの存在となる。行き場をなくした魂は、新たな身体を見つけるために、ふらふらとさまようことになるのだという。

アンデットの一種であるファントムと共に、車やグループ名などのネーミングに用いられることも多い。


スケルトン


骨となっても戦い続ける死の戦士 


 骸骨の姿をした亡霊。死んだのちに肉が腐り落ち、白骨となった後にも動き続ける。夜の学校での目撃例も複数報告されている。中世ヨーロッパの古戦場や、大航海時代の幽霊船などに、スケルトンが出現することもあったという。生前に来ていた甲冑や服を身に着けているものもいる。

ゲームやアニメにおいては、骸骨戦士として登場することも多い。例えばゲーム『ドラゴンクエスト』では『がいこつ』という布の服をまとったモンスターが敵として出現する。



バフォメット

テンプル騎士団が崇拝していたとされる悪魔。一説にはイスラム教の開祖ムハンマドの名前をもじった名前とされる。中世から悪魔の名前として知られていたが、その姿のついては諸説ありはっきりしていない。19世紀以降の悪魔学において、牡山羊の頭を持ち、サバトを支配する悪魔レオナルドと同一視されることもある。


フェルグス・マク・ロイ

ケルト神話に登場する英雄。700人力の怪力と旺盛な食欲、性欲の持ち主。

アルスターの赤枝騎士団に所属していたが、王コンホヴォルの裏切りに激怒して敵国コナハトへと亡命した。コナハトのアルスター侵攻の際には女王メイヴの愛人、兼参謀として参戦するが、親友クーフーリンなどの説得もあり戦場から姿を消す。その後、コナハト王アリルによって殺害された。


フォーモリア

ケルト神話に登場する魔物の一族。アイルランド入植を目指す人々を苦しめるが、最終的にダーナ神族に敗北した。魔術や技師に優れたダーナ神族に対し、フォーモリアは農耕、牧畜の技術を持っていたとされる。フォーモリアのモデルがバイキングだと考える研究者も多い。


リザードマン


トカゲのような風貌をして直立で二足歩行する亜人種、それがリザードマンです。小説『転生したらスライムだった件』のガビルたちや、小説『ゴブリンスレイヤー』の蜥蜴人など、今日の創作でのお馴染みの種族でご存じの方も多いでしょうね。

 大きさは標準的な人間とほぼ変わらないくらいですが、その体表は鱗に覆われているため見た目は爬虫類に近く、たくましい尻尾も備えています。また、比較的知能が高く独自の文化や言語を持ち、一族で集まって集落を形成して暮らしています。武器や道具の扱いにも長けていて、剣や盾で武装していることも多いようです。

創作などでは好戦的な種族として描かれがちですが、テーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』では、人間に対して中立的な種族として登場しています。同じく『ダンジョンズ&ドラゴンズ』に登場する半人半トカゲの亜人種トログロダイトは非常に好戦的な種族で、人に害なす邪悪な存在とされる。


ハーフリング


ハーフリングとは、その名のとおり人間の半分ほどの背丈しかない小型の種族です。成人した大人でも身長は1~1.2メートルほどですから、人間なら小学校低学年と同じ。そんな見た目だけに子どもに見られることもよくあるそうですが、小さくても顔つきは大人で、耳もエルフのようにわずかに先端が尖っているため、よく見ればその違いに気づくでしょう。

 もうひとつ、よく知られたハーフリングの特徴として、靴を履かないというのがあります。彼らは足の裏の皮膚が非常に厚くて固く、しかも剛毛に覆われているため、足を保護するための靴を必要としません。また、徒歩での長距離移動を苦にしない健脚の持ち主であり、足音を立てずに俊敏に動くこともできるので、



ホビット J・・R・R・トールキンの創作世界「中つ国」の住人。身長は2~4フィート(60~120センチ)と小さく、小太り。尖った耳を持ち、足の裏は毛に覆われていて、靴を必要としません。牧歌的な生活を営む素朴で陽気な人々で、たっぷりの食事と暖かな暖炉がある我が家を何よりも愛し、くつろぎの時間を大切にしています。また、多くは喫煙の習慣があり、自分たちでタバコの生産も手掛けています。


【三国志の魅力あふれる登場人物に関連した用語】


血は生命の水


 数千年もの昔から、世界各地で「血は生命の水である」という考えが強く信じられていた。

そしてまた、血液は魂をつくりだすふしぎな魔力をもつものとして考えられていた。だから、古代ギリシアの神官や占い師たちは、血液がふしぎな霊感力を高めるものとして信じていたし、多くの神々は血のいけにえを好むものと考えられていたようだ。

 したがって、血をささげた神は、かならず、れいげんあらたかなしるしをあたえてくれるにちがいないと信じこんだのだろう。

 つなる血を求める欲望は、かならずしも吸血鬼だけのものとはかぎらなかったのだ。

 たとえば次のような血の迷信が世界各地にあった。

 古代ローマでは、剣闘士の流す血は勢力のものとなるとされていたので、傷つきたおれた剣闘士の血を、貴族たちがあらそってのんだという。また、中世のイタリアでは、ハトの血を全身にぬると、若がえって美しくなるといわれた。

 十九世紀末には、殺したばかりのウシの血をのむことがフランスの社交界で大流行した。ウシの血を飲むと、男性はたくましく、女性は美しくなると考えられたのだ。

 そして、ドイツでは、死刑囚の血がてんかん薬になるといわれたが、どれも科学的にはまったく根拠がないものばかりであった。


吸血コウモリの魔力

昔の人々は、ぶきみな姿をした動物やふしぎな鳥などは、恐ろしい魔力をもっていると考えていた。

 たとえば、吸血コウモリは、夕暮れになると血を求めて闇の中へ飛び出し、昼間は暗い洞穴の中にねむっているので、吸血鬼が変身したものとして恐れられた。とくに中南米産の吸血コウモリは、別名「バンパイア」とも名づけられているが、ウシやウマから大量の血を吸ってたおすほどの、ものすごいやつだ。

 それに人間をねらって血を吸っても、ほとんど痛みを感じないので、眠っている間にすっかり血を吸われてしまい、全身ふらふらになった。そして吸血コウモリは、一度血を吸うと、不思議に同じ場所を繰り返し狙うので、気がつくのが遅いと、全身がミイラのようになって死ぬこともあるのだ。


悪霊がのりうつった吸血鬼

 その昔、三国志世界では「花の精」や「水の精」などで知られるように、自然界にはいろいろな妖精が住んでいると考えられていた。つまり、どんな動物や植物、風や雲、火や水などにも、不思議な妖精たちが住んでいて、その魔力で不思議なことを引き起こすのだろうと考えていたのだ。

 ところが、もう一つの姿の見えない妖怪のボス、悪霊がおり、あらゆる妖怪を生み出すものと考えられていた。そしてまた、人間に害を与える植物や動物は、全てこの悪霊が乗り移ったもので、ものすごい嵐や大雨も、悪霊がおこしたものと考えられたのである。

 そこで、人間の死体に悪霊がのりうつったらそうなるだろうか。悪霊にあやつられて重い墓石を動かし、墓場からぬけだした死体それは、血を好む悪霊が死体にのりうつった恐ろしい吸血鬼として、この世をさまよいはじめるのである。


 吸血鬼になりやすい人間

①重い罪をおかした犯罪者

②親に見すてられた子供

③魔術師や魔女になりそこねた人間

④キリスト教信者で、ほかの宗教を信じるようになった人

⑤罪をおかした牧師

⑥教会から破門された人間

⑦自殺をした人間


 ドイツの吸血鬼研究家D=シュトルムによれば、吸血鬼になりやすい人間は、上の表のように弱点のある人々に多いとのべている。つまり、吸血鬼もまた悪魔と同じように、弱点をもった人間をねらったのだ。

 そして①から⑦までの人間は、すべてキリスト教の教会からはみだした人であり、十字架に守られない者だった。しかも、これらの人々は、死んでも天国へ行けないと信じられていた。

つまり、十字架が吸血鬼予防法の一つであることから、いっぽうでは教会がますます栄えたのである。

そして犯罪者はもちろん、親から見捨てられた子供は、教会から洗礼を受けない子として嫌われ、魔術者や魔女は、教会に反する異端者であった。




アンチキリスト

この世の終わりのときに「自分が救世主だ」といって人々を惑わすアンチキリスト。彼はサタンが人間として生まれた存在である。

・サタンが受肉したアンチキリスト

 アンチキリストはサタンと特殊な関係にある人間である。それはこの世の終わりにだけ登場する、人間界のサタンとでもいうべき存在である。

 サタンと悪魔たちは天界を追放されたときからこの世の終わりまで、神に敵対する存在である。最後には敗北する運命にあるのだが、サタンは抵抗をやめない。それどころか、その抵抗は世界が滅びる直前に最高潮に達する。キリスト教の終末論では、この世界が終わるときにイエスが救世主として再臨し、悪の軍団を滅ぼすと考えられている。しかし、自分こそが救世主だと主張する偽物が現れる。そして、異教徒・異端者・信仰のない者たちなどが偽物のもとに結集し、最後の抵抗が行われる。

この偽の救世主がアンチキリストなのだ。アンチキリスト(反キリスト)という言葉どおり、彼はキリスト(救世主)の敵対者であり、偽救世主である。

ところで、その役割だけ見ると、アンチキリストは単純にサタンと同一の存在のように考えられる。だが、そうではない。アンチキリストはある意味でイエス・キリストと似た存在である。イエス・キリストは神が受肉した存在、神が人として生まれた存在である。同様にアンチキリストはサタンが受肉した存在、サタンが人として生まれてきた存在である。つまり、イエスが人間であるように、アンチキリストも人間なのである。それは善に敵対する最終的人間である。問題はアンチキリストの人数だが、新約聖書の福音書や『ヨハネの手紙一』ではそれが複数いることになっている。



リリト

メソポタミア起源の女悪魔リリトは、アダムの前妻であり、エバをそそのかした蛇であり、魔王サタンの妻であるといわれた。

・男性上位の体位を拒んだアダムの前妻

リリトはユダヤの悪魔学で重要な位置にある女悪魔である。

旧約聖書『イザヤ書』34章14節に次のようにある。「荒野の獣はジャッカルに出会い/山羊の魔神はその友を呼び/夜の魔女は、そこに休息を求め/休む所を見つけ

る」ここで、「夜の魔女」となっているのがリリトである。彼女はもともとはリリトゥというメソポタミアの悪霊で、夜歩き回っっては夢魔として男性を襲ったり、血を飲んだりしたとされているこのリリトゥがユダヤの伝承に入り込み、アダムの前妻リリトゥとなったのだが、それは『創世記』の記述の矛盾と関係していた

『創世記』1章によれば、神は自分にかたどって人間の男と女を創造したとされている。アダムは独身で神は彼のあばら骨の一部から女(エバ)を作ったとなっている。この食い違いから、新たなリリトの伝承が生まれた。ユダヤの民間伝承として有名なベン・シラ『アルファベット』のよれば、リリトとアダムは土から一緒に創造されたが、二人の生活はうまくいかなかった。リリトは性行為で女性が下になる体位を受け入れなかったのである。彼女は紅海まで逃げていった。3人の天使がそれを追いかけ、彼女を説得したが、彼女は帰らなかったのである。その後、彼女はどうなったか。カバラの伝承では彼女は悪魔サマエルの妻で、魅力的な裸体の女性だが、下半身は蛇だとされている。また、イスラム教の伝承ではリリトはサタンと寝て悪霊のジンを生んだとされている。つまりアダムと別れた後は魔王サタンの妻となったのだ。キリスト教の悪魔学では彼女は悪魔に仕える魔女とされ、女悪魔スクブスの同類とされており、この世の終わりまで男たちを誘惑し続けるのである。






レビヤタン

悪魔レビヤタンの背後には聖書においてサタンやドラゴンのシンボルとされた海獣レビヤタンのイメージが隠れている。


・聖書の中ではサタンやドラゴンに匹敵した大悪魔

 レビヤタンは聖書に由来する悪魔である。そして聖書では、レビヤタンはサタンに匹敵した悪のシンボルである。古代カナン人の崇拝した豊穣神バアルは原初の蛇ロタンを倒した。このロタンが聖書に入り込んでレビヤタンになったのである。聖書にはこう書いてある。「この地上に、彼を支配する者はいない。/彼はおののきを知らぬものとして造られている。驕り高ぶるものすべてを

見下し、/誇り高い獣すべての上に君臨している。」(『ヨブ記』41章25~26節)。「その日、主は/厳しく、大きく、強い剣をもって/逃げる蛇レビヤタン/曲がりくねる蛇レビヤタンを罰し/また海にいる竜をころされる。」(『イザヤ書』27章1節)。こうした記述から、聖書中のレビヤタンはまさにドラゴンでありサタンだということがわかるはずだ。

16世紀ころからはレビヤタンは完全な悪魔として次々と憑依事件を起こし、数多くのグリモワールに紹介されるようになるが、当然主要な悪魔とされている。たとえば、『アブラメリンの聖なる魔術書』では彼はルシファー、サタン、ベリアルと並ぶ地獄の最高四君主の一人である。そして、レビヤタンの魔法陣を握って呪文を唱えることで、悪魔を人間の姿で出現させることができるとされている。『アルマデルの魔導書』ではレビヤタンとアスモデウスは悪魔の悪徳の恐ろしさを教えてくれる悪魔である。悪魔憑き事件では、彼は最も有名なルーダンの事件に関わっているだけではない。1647年のルーヴィエの悪魔憑き事件でも、レビヤタンはタゴンらとともに多くの修道女を苦しめたのである。

ホップスの哲学書『リヴァイアサン』(1651)で、レビヤタンは抑圧的な国家のシンボルとされたが、それはレビヤタンこそその比喩にふさわしい極悪の存在だからなのである。




ホノリウス教皇の魔術

東西南北の王と各曜日の堕天使たちを召喚して願望をかなえるには、黒い雄鳥の目玉をえぐり出すような残酷な生贄の儀式が必要だった。

・東西南北の王と各曜日の悪魔を召喚する

『ホノリウス教皇の魔導書』は様々な霊や堕天使を呼び出し、命令を実行させるための魔導書である。

 悪書としての最大の特徴は、悪魔召喚の前に、残酷な儀式が必要になることだ。それは、黒い雄鳥を殺し、両目をえぐり出したうえで、舌と心臓を取り出し、それを天目に干してパウダー状にし、魔法円などを描く羊皮紙の上に振り撒くというものである。また、羊皮紙を取るためにも、子羊を殺す儀式が必要になる。こうした儀式と祈り、3日間の断食の後で、いよいよ堕天使たちを呼び出すことになるのである。

ここで召喚できるのは東西南北の王と各曜日の堕天使である。

魔導書によれば、東西南北の王は、東はマゴア、南はエギム、西はパイモン、北はアマイモンである。また各曜日の悪魔は、月曜はルシファー、火曜はフリモスト、水曜はアスタロト、木曜はシルカルデ、金曜はべカルド、土曜はグランド、日曜はスルガトだとされている。

これらの霊のうちある者は特定の願望を実現するために呼び出すようだ。つまり、火曜日のフリモストは名誉と威厳を手に入れるため、水曜のアスタロトは奥や人々の好意を得るため、木曜のシルカルデは幸福と財宝を得るため、日曜のスルガトは財宝の発見と移動である。



大奥義書(グラン・グリモワール)

地獄の宰相ルキフゲ・ロフォカレを召喚して財宝を手に入れる魔導書は、非常に分かりやすい内容で一般大衆に最大級の影響を与えた。

・フランスの一般大衆に最大の影響を与えた魔導書

『大奥義書』はその内容が整っており、理解しやすく、人々に悪影響をおよぼしやすいという意味で悪名高い黒魔術の書である。18~19世紀のフランスでは数多くのグリモワールが出回ったが、その中でも一般大衆に最大の影響を与えたといえるのが『大奥義書』だった。この本自体には1522年に作られたと書かれているが、実際は1750年ごろにイタリアで作られ、大量販売用の廉価本として印刷され、大いに流行したようである。

一般にグリモワールでが悪魔と契約するなどという危険を冒すことはないが、この書では悪魔と契約を結ぶという特徴がある。つまり、『大奥義書』は地獄の悪魔の宰相ルキフゲ・ロフォカレを召喚し、隠された財宝のありかを聞き出すために契約を結ぶという、危険な内容の本なのである。しかも、『大奥義書』はただ単に悪魔と契約するための手段が記されたグリモワールではなく、「この本を持っていることが、悪魔との契約の一部だ」とさえ考えられたのだ。また、この本によればルキフゲは地上の財宝の管理者とされていたので、この時代のフランスではルキフゲ・ロフォカレこそ宝探しに最も必要な精霊だと考えられたのである。

ただし、悪魔と契約するといっても、『大奥義書』の場合はソロモン王の大呪文と魔法杖の威力で、無理矢理に術者に有利な契約をするのであって、間違っても命を取られるような危ない契約をするのではない。その意味では本質は他のグリモワールと変わらないといっていいものである。

19世紀初頭には、『大奥義書』は『赤い竜(Dragon rouge)』という別のタイトルで出版され、『小アルベール』に匹敵するほどの悪名高い本となった。


『大奥義書』の目的


『大奥義書』を使えば、悪魔宰相ルキフゲを含めて全部で6人いる地獄の次席上級悪魔のいずれかを召喚し、悪魔に応じた目的を達成できた。


・次席上級6悪魔を自由に操る

『大奥義書』といえ、悪魔の宰相ルキフゲ・ロフォカレを呼び出して財宝を手に入れる魔導書として有名である。しかし、この魔導書の目的は決してそれだけではない。

『大奥義書』によると、悪魔界には無数の悪魔がいるが、上位の者には3大支配悪魔、次席上級6悪魔、18属官という席次がある。

3大支配悪魔は皇帝ルシファー、王子ベルゼブブ、大公アスタロトである。この下に次席上級悪魔の6名がいるが、彼らはそれぞれ特別な権力をルシファーから与えられている。これら6名の名とその権限は次のとおりである。宰相ルキフゲ・ロフォカレ。彼は皇帝ルシファーから世界の富と財宝を支配する権限を与えられている。大将軍サタナキア。あらゆる女性を従属させる力がある。将軍アガリアレプト。国家機密を暴く力がある。中将フルーレティ。夜間業務を担当し、雹を降らせる力がある。准将サルガタナス。人の透明化・転送・透視術・死霊術などを司っている。元帥ネビロス。悪事を遂行する権限があり、博物敵知識を与える力がある。

 次席上級6悪魔にはそれぞれに属官として3悪魔が配置され、全部で18属官がいる。そしてその配下に無数の悪魔が従属しているのである。このうち実際に召喚して使役するのは次席上級6悪魔である。あくまでも、皇帝ルシファーに祈ってその許可を得たうえで、目的に応じてこれらの悪魔を使い分けるのである。したがって、『大奥義書』の魔術によって、宰相ルキフゲ・ロフォカレ以外の次席上級悪魔を召喚すれば、財宝を手に入れるのとは別の目的も達成できるのである。

その具体的な一例として、『大奥義書』ではルキフゲ・ロフォカレを召喚し、財宝を手に入れる方法を詳しく説明しているのである。


オカルト哲学

『オカルト哲学』はルネサンス時代を代表する自然魔術の書であり、一般の魔導書とは別種のものだが、魔導書の魔術にも多大な影響を与えられた。

・自然魔術と黒魔術の境目にある魔術書

『オカルト哲学』はルネサンス時代の最も重要な魔術書ハインリッヒ・コルネリウス・アグリッパ・フォン・ネッテスハイム(1486~1535),通称アグリッパが書いた自然魔術の書である。自然魔術とはこの世界を創造した神の力がどういう形で人間の世界に影響を与えているかを考察する、一種の学問である。だから、自然魔術は決して邪悪な魔術ではなく、中世のキリスト教会も認める魔術だった。

 したがって、『オカルト哲学』は現在では魔導書の分類には含まないのが一般的である。しかし、この本は魔導書の魔術、つまり悪魔を操る魔術と原理的に区別できない部分があり、その後の魔導書にも大きな影響を与えた。また、作者のアグリッパ自身がこの本を書いたことで誤解され、悪魔と契約した黒魔術師だと考えられた。アグリッパは黒い犬を飼っており、どこにでも連れていったが、その黒い犬こそ悪魔が姿を変えた使い魔だとみなが信じたのである。そういう意味で、『オカルト哲学』はほとんど魔導書の仲間のような位置にある本なのである。

 書かれているのは『ピカトリクス』にあるような星辰魔術的な事柄である。つまり天界には無数の天使や悪い霊がおり、神の力はそれらの霊を通じて物質界に影響を与えるというのだ。また、カバラや数秘術も利用している。そして、天使との対話の儀式やカバラ的な儀式によって、神の恩恵を得ることができるというのである。アグリッパによれば、この本の目的は善き霊を呼び寄せ、悪い霊に打ち勝つことだとされている。しかし、それは表面的な言葉で、本の中では真の宗教と邪悪な魔術をまったく同じ原理を持つものとして語っている。この本が邪悪な本とされたのはそういう性質のためといっていいだろう。



ジェー

ゾロアスター教の女悪魔。古くは「ジャヒー」と呼ばれ、性悪女というほどの意味だった。しかしササン朝ペルシア時代(224~651年)に入り、この女悪魔は一気に「悪神アーリマンのつくった中で最強の存在」と呼ばれるようになる。というのも、善神アフラ・マズダはこの世をつくるとき、悪神アーリマンがいたのでは邪魔だと思い、相手を呪文で縛り上げて、その隙に世界をつくってしまった。呪文が解けてこの世界に侵入した邪神は、競争相手のつくった世界を見て妬み、これを台無しにしてやろうと考えた!称賛は十分と思われた。しかし、このとき悪神は善神のつくったものひとつ、人間を見た。それはたいそう立派な種族だったので、悪神は急に気落ちしてしまった。配下の魔物たちは言葉巧みに親分を慰めようとしたが、悪神は落ち込んだままだった。最後に女悪魔ジェーだけがアーリマンを元気づけるのに成功した、というのである。

ジェーが成功した理由は定かではないが、一説では彼女は女性の月経を司る悪魔といわれる。ひょっとすると「女は災いのもと」という、パンドラの箱的な逸話なのかもしれない。


ジャック・オ・ランタン

天国にも地獄にも行けなかった農夫

鬼火のような姿、もしくはカボチャの頭を持ち、ランタン(吊り下げ式のランプ)を掲げた男の姿をした怪物。ハロウィンでおなじみのカボチャ男だが、人を迷子にさせたり、底なし沼に引きずり込んだりする、恐ろしい怪物なのである。

 ジャック・オ・ランタンはかつて、ジャックという農夫だった。ずる賢い彼は悪魔を騙し、死んでも地獄行きにならないという契約を結んだ。だが、悪事ばかり働いていたジャックは、地獄にも天国にも行けずに現世をさまようことになったのだ。本来は、カブにとり憑いたとされるが、この話がアメリカに伝わったさいに、かぼちゃへと変化したと言われる。

タキシム

腐臭漂う口から漏れるは呪いの声

遺恨を残して死んだ者の死体ができる地中から這い出したもの。土にまみれた身体からは腐臭が漂い、二度と見たくないような醜悪な姿をしている。

 この「歩く死体」は、蘇った死体という意味ではゾンビに近いが、魂の抜け殻である彼らと違い、自身の復讐心を原動力として行動している。誰にもタキシムの死の行軍を止めることはできず、恨みに燃える心を鎮めることもできない。タキシムが歩みを止める時、それは、彼が復讐を遂げた時にほかならない。

レイス

肉体からさまよい出たさびしき魂

アンデットに分類されるが、肉体と魂が分離した生霊のような存在。魔術師が自身の魂を操ろうとして失敗し、肉体に戻ることができなくなったものがレイスであるという。また、間近に死が迫った者が、近しい人々のもとを訪れるさいにレイスとなるとも言われる。

レイスは魂の持ち主と同じ姿で現れるものの、透き通って見えることから、普通の人間ではないとわかる。想いが抜け出してレイスとなった場合は、本人と全く変わらない姿で、周囲にもそれと気づかれないという。どちらにせよ、人に害を与えることのないアンデットであり、時には困っている人を助けるような善良さも持つ。

ラングスイル

青ざめたうなじに吸血の口を隠す

青い爪と地面に届くほどの長い髪を持つ女の吸血鬼。出産で死んだ女性や死産のショックで命を落とした女性が、ラングスイルとなると言われた。

緑のロープをまとった美女で、空を飛ぶことができる。髪で隠れたうなじには穴があり、そこから子供の血を吸う。この恐るべき吸血鬼をおとなしくさせるには、爪を切り、第二の口である穴に長い髪を押し込めばいい。すると、ラングスイルは普通の女性に戻るからだ。吸血鬼になるのを未然に防ぐ手立てもある。女性が死んだあと、その口をガラス玉でふさげばラングスイルになることはない。いずれの手段も、口をふさぐという点で共通しているのが興味深いところだ。

レモラ

レモラとはラテン語で「遅延」を意味しており、現在はコバンザメを示す学名としても知られる。体色は青白く、とても小さい魚で、頭部には軟骨でできた吸盤がついている。この吸盤がクセモノで、ひとたびレモラが船に張り付くと、船は一気に速度が落ちてしまうという。ローマの将軍アントニウスがオクタビアヌスと交戦しようとしたさいに、艦隊の出発を防げたのも、この怪魚であったとされる。

一説には足があるとも言われるレモラだが、実際はコバンザメを刺していたのではないかとも言われている。

ジャバウォック

鋭い爪と牙を持つドラゴンに似た怪物

ルイス・キャロルの人気小説『鏡の国のアリス』にて、作中のナンセンス詩『ジャバウォックの詩』に登場する怪物。挿絵によると、鱗に覆われたドラゴンのような身体に、コウモリのような翼、触覚らしきものとヒゲを持っている。詩には「喰らいつく顎(あぎと)、引き掴む鉤爪! 両の眼を炯々と燃やしたる……」とあり、いかにも凶暴そうな姿であったようだ。映画『アリス・イン・ワンダーランド』では伝説の怪物として登場し、赤の女王の命令に従ってアリスたちの前に立ちはだかる。

シービショップ

司教のような姿をした海棲人

16世紀以降にヨーロッパで目撃された人間そっくりの外見を持つ怪物。シービショップ(海の司教)のほか、シーモンク(海の僧侶)、ビショップ・フィッシュ(司教魚)とも呼ばれる。顔は人間そのものだが身体が鱗で覆われ、魚のようにひれと尾を持ち、修道士の服を纏っているように見えることからこの名がついた。


ジズ

海に棲むリヴァイアサン、陸に棲むベヒモス、そして空に棲むジズとで三頭一対とされる巨大な幻獣。大地に立つと頭が天に届き、翼を広げると大地を覆い隠すと言われる。首の長い一般的な鳥の姿とされているが、翼とライオンが合わさったグリフォンのような姿で描かれることもある。

あまりの巨大さから畏怖の対象になりがちだが、実際は世界を嵐から守り、肉食の鳥をひるませて動物たちの絶滅を防いだりと、世界の平穏を保つ役割を担っている。

人間に自ら害をなすことはないが、ジズが卵を落としてしまったさい、洪水で街を壊滅させ、数百本の杉をなぎ倒したという言い伝えが残っている。

 参考文献



『悪魔事典』

『現代異世界ファンタジーの基礎知識』

『幻想用語辞典』

『幻獣辞典』

『吸血鬼百科』

『図解悪魔学』

『図解魔導書』

『ホビットの冒険』

『図解中世の生活』

『幻の戦士たち』

『ロードス島戦記』

『スレイヤーズ』

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