約束のガーネット
蒼(あおい)
約束のガーネット
荒れ狂う戦場で、とある男と出会った。
戦に向かうために、集められた戦士の一人。
内側に秘められている彼の強さは、きっと、想い人の笑顔を守る為。
人は、誰かの為ならとてつもない力を発揮する。
同じ戦士として、どこか憧れの様なものを、俺は抱いていた。
寡黙ではあるが、その瞳には揺るがない覚悟と優しさが宿っている。
昨日今日と出会ったばかりの俺達だが、話してみると意外と馬が合った。
苦しい戦況になった時も、お互いに励まし合い、その場を切り抜けて来た。
困難を、何度も二人で乗り越えてきた。
寒さを身に感じ始める季節には、長い戦いに終止符が打たれた。
数百、数千と犠牲になった同士である戦士達に、安らかな時を祈り、
深紅(しんく)に染まるその場をあとにした…。
戦いが終わり、俺達は戦士ではなく、一人の男としてこれからの世界を生きていく。
違う場所でそれぞれ過ごしていく訳だが…彼とここで別れてしまうのは、少し寂しく感じてしまっている自分が居た。
だから、別れ際に、身に着けていたガーネットを、彼に手渡した。
苦難を共に耐え戦ってきた戦友として。
そして、俺達の友情の証として…。
何も言わず、彼は優しく微笑み、彼が身に着けていたルビーを、俺に手渡してきた。
『いつか、何処かで会った時は、息抜きがてら、飲みにでも行こう。』
と…。
再会の約束を、ガーネットに込めた…。
いつかのその時を、迎えられるように…。
早いもので、あれから数年が経っていた。
寒空(さむぞら)の中に隠れる暖かな日差しを求めるように、
俺は特に当ても無く、ふらふらと街へと歩き始める。
血で染まっていたあの戦場とは思えないくらい、平和な世界になっていた。
広場で足を止め、物思いにふけていると、俺の方へ誰かが近づいて来た。
『また会えたな、ガラナイツ。元気そうで何よりだ。』
見覚えのある顔と声…。
ルベウス・リード。
彼との再会に胸が熱くなり、思わず涙が零れてしまった。
急に泣き出してしまった俺を見て、目を丸くして驚いていたが、
すぐに優しい笑顔になり、お互いに肩を抱き寄せた。
そして、物語を語るかのように、酒場であの頃の話を、夜が深まるまで語り明かす…。
宿に一泊し、降り積もる雪を眺めながら、
闇に染まりきらぬ夜を…。
時間を惜しむかのように、俺達は過ごした…。
これからも、この平和な世界が続いていく事を信じて…。
陸上を駆け巡っていた戦士の面影は、もう薄れてしまっているだろうが、
あの日、交わした約束は、これからも薄れる事無く、
より一層強く、深まっていくだろう…。
別れは、決して悲しいものではない…。
それは、時として素敵な出会いのキッカケを作り出す瞬間でもある…。
俺は…
ガラナイツ・ノアは、
そうかんじている……。
約束のガーネット 蒼(あおい) @aoi_voice
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