とある死役サンと繰り返す世界の奇譚禄

天羽ねねこ

Episode1 死役という存在



“死役(しにやく)”。



それは、どんな物語にも何かしらの“物語のキー”ともなる存在を示している。



例えば、勇者としての“力”の目覚めの為には彼の目の前で“幼馴染の少女”の“死”が必要不可欠である。

それによって、世界に勇者が誕生して世界を救うための旅に出て世界を救うからだ。


例えば、過酷な状況を突破するためには誰かが犠牲になり仲間を前へと進ませるために殿を果たす“死”が必要不可欠な場合もある。



これは、“死役(しにやく)”という“私”の運命でもあり役目でもある物語である。




そして、今も“それ”は起きようとしている。




其処には一人の黒色の髪色に毛先が青緑色グラデーションさせた少し長めのセミロングを緩く束ねており、切れ長なツリ目をした青緑色の瞳をしていて、右耳にはネモフィラ模様のある白色の水晶のスティック状のイヤリングをしていて、くすんだ青緑色の上着を腰に身に着けては、軽装な冒険者の軽剣士のような服装を着ている少し背の低い青年。


私“リコリス”でもあるココアブラウンの髪色に毛先が焦げ茶色をさせたロングウルフカットで尻尾を三つ編みにして横髪は長く翡翠色の紐で束ねており、少しツリ目にパッチリ目をした桃色の瞳をして左目ノ下には泣き黒子があり、両耳にはピンク色の石で出来た逆さ十字架のピアスをしていて、少し貴族っぽい感じのオレンジに黒ラインの入った錬金術士の軽装な服装をした少女。



その二人が激しい雷雨の中で、魔物の群れに囲まれて絶体絶命な状況で互いの手を握って息を潜めていた。



『リコリスちゃん、ごめん……巻き込んで』


『ふふっ、仕方ないよ~……ミカのせいじゃないって』


『ねぇ……俺が囮になるから、リコリスちゃんだけ逃げて』



リコリスはミカの話を聞きながらも懐にある時計の音を聴いては、針が止まったのを確認をしてはミカの方を見てはミカの両頬に手を添えると優しく笑みを浮かべる。



『それは、ダメだよ………ミカはギルド皆の希望でもあるんだから、そんな役目を貴方が背負ったりしないで』


『リコリスちゃん…っ?』


『ミカは、生きて……』


『まっ、待って!!リコリスっ!?』



リコリスは手を伸ばしてくるミカから離れては、わざと音を大きく立ててから走って行く。

そうすると、魔物は大きな音のした方へと向かっていく。


その光景をミカは悲痛な表情で見ていて、リコリスが魔物に捕われて食われるのを見ては目を閉じて涙を流しながらも、背を向けては走って立ち去っていく。


リコリスは、そんなミカの背中を見つめてから激しい痛みを一瞬だけ感じては意識が暗転していく。



(これで、この世界線での“恋人の死”という役目は終えた)


(私が死ぬ事で、ミカは生き延びて仲間と共に世界を救うために暗黒竜と戦って勝つ)


(それが、この世界線で必要な役目だ)



それにしても、いつから“死役(しにやく)”を私がやっているのかなんて忘れた。


沢山の“死”を演じて、沢山の別れの言葉を呟いてきた。



意識が戻ると同時に、馬車の揺れる感覚と走る音がしてくる。

それと同時に、次の“死役(しにやく)”としての記憶が瞬時に頭へと入ってくる。


どうやら、次の“私”は軍事国家の偵察部隊の部隊長らしい。



(1ヶ月という遠征期間を終わらせて、軍事国家へと帰還している最中って所だね)


(死因は、“射撃されそうな仲間に気付いては、その仲間を庇って頭を撃たれて射殺される”かー)


(これは、すぐに痛みがあんまり無く死ねそう……多分)



リコリスは馬車の窓から外を見つめては、これから向かう軍事国家の情報をまとめていた。



その軍事国家は、この世界線では“無敗の国家”と呼ばれていて負けを知らない。


軍事国家の幹部である人達の個々の強さもあるが、そんな彼らをまとめている総統の一人の力だけでも強い。



だが、彼らが後に戦うのは未知なる帝國との激戦が控えている。

そして暗殺のための射撃も帝國の“観光客(スパイ)”でもあったスナイパーが行ったというのは、“私の死”で発覚する。



(まぁ、そのために死ぬってのが役目だから別に気にしたりしないけど……)


(なんというか、何度も死を経験していると死ぬ事に抵抗が無くなってきているんだよねー)



馬車が止まって直ぐに勢いよく扉が開くと、其処には暗めな焦げ茶色の髪色にウルフカットで軽く束ねており、切れ長なキツめのツリ目をした若葉色の瞳をしていて、口元にはガスマスクを身に着けてベルトだらけの暗めな迷彩柄のロングコート身に着けている青年が満面な笑顔でリコリスを出迎えていた。



「ちょっとっ、急に開けたら驚くでしょ!?レーヴェっ!」


「わりぃわりぃ!だって、久々にリコリスに会えると思ったら落ち着いていられなくて!」


「まったく、もう~……ってか、扉が壊れたんだけど!?」


「あははっ!そんな事よりも!!ほらっ、まだ飯を食べていないだろ?一緒に、食堂に行こうぜ!?」


「ちょっとっ!?」



レーヴェはリコリスの手を掴んでは引っ張り、軽く引き摺るような感じで軽く走って大きな施設の中へと入っていく。



「ちょっ、こ、転けるってばっ!ま、待って、レーヴェ!?」



射殺されるまで、あと僅か。








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