第34話

天野は離れ、道を回り、薬丸はホシの素性を知らぬふりして確保にあたった。薬丸の『すんなり逮捕、ただのチンピラすぐ解放かも?作戦』に基づく計画だ。ついでに『天野が来るまでの時間稼ぎ』も。

「はいはーい、警察だ!女の子、襲っちゃダメだよ~。現行犯逮捕ね!」

「う、うるさい!そのパソコンさえよこせば襲わなかった!無実だ!よこせ!それは、俺の物だ!」


バシッ!

薬丸はホシに殴られた。

「痛ってーなー!俺を殴るとはいい度胸だー。あぁん?なめとんじゃこんりゃあ!よーいしょっ!傷害現行犯に、公務執行妨害もつけとくねー!あかり、下がっとけ。」

「うん、ありがとう。」


ダッダッダッ。

「あっ!逃げた!クソっ!」

「警察だ!」

「天野!」

「女かよ。ちょろいな。」

ガシッ、グリリリリ。

天野は馬鹿力である。油断したところを、ガッ、と制圧。

「痛たいー!離せよ!」

「カチャッ。ホシ、確保じゃ!」

「すまん、すまん、天野。ありがとな。」


やってきた兒玉が声をかけた。

「アカリー!こっちだ。お前をみんなで迎えに来たよ。よくやった。」

「薬丸サンと天野サン、ヤッパリチャント助けてクレタ!強いネー!」

「あったりめぇだ!あかり!」

天野は笑いかけた。


ウゥー、キキーッ!

車がついた。

「ホシ、連行します。」

「くれぐれも逃げられないようにな。あっ!ぽんくん!来てくれたのか!阪ノ上先生、お久しぶりです!これなら大丈夫だ!」

「ああ、絶対に逃がさないぞ。」

「はい。取り調べ室まで確実に連行します。」

「頼もしいわ!」

「智恵ちゃん、来てくれたのか!どれも、車、大きいな。よしっ。力あるやつ順にホシの車に乗れ!逃げられない状態を作る。残りはもう一つに乗れ!」

「はいっ!」

「あかり!でかしたぞ!襲われる、ってそのパソコンが、原因か?渡せば良かったんじゃ?」

「ウウン。コノパソコンを欲シガルから、外ニ出タ私を襲うダロウッテ、阪ノ上センセイと計画シタノ。襲ワレタラ、別ノ意味デ逮捕ニナルデショ?ソレデ身柄を確保デキル理由がツイテ取り調べデ国際指名手配犯ト、たけるクンの家族の殺人事件ノ真犯人の証拠を、突キツケルコトがデキル。」

「はーっ。なるほどな。でも、そんな危ないことよくやろうと思ったな。」

「コレシカナイ、一番手っ取り早い方法ダッタシ、薬丸警部ト天野サンナラ、絶対助ケテクレル、ッテ信ジテタカラ。」

「そうか。ありがとうな。よく頑張った、あかり。」


事の詳細を薬丸に伝えたあかり。

「ウン。詳シクハ、阪ノ上先生ニ証拠を託シタカラ。私カラコッチノ車のメンバーに、詳シイコト、話しトク。ソッチノ車のメンバーは、ホシを警視庁に身柄、移シタラ、阪ノ上先生カラ直接聞イテネ!」

「ああ。わかった。俺は取り調べ室に同室する。あかりと阪ノ上先生は、準備はどうだ?」

「もちろん。カンペキ!」

阪ノ上も車から降りてきた。

「問答無用です。」

「阪ノ上先生、どっち乗ります?」

「僕はホシの方へ。薬丸警部たちと、良いですか?あと、このヤツの黒色のバンに、多分監視カメラ等、証拠物が山盛りだと思うので、小名呂さん、水野さん、早川さん、緊急押収をお願いします。鑑識課にここに即、来てもらうように連絡しておくので、共にこの場所で緊急解析をお願いします。」

「はい!」

「あと、中野さん、中村さん、バンから指紋を取れたら、健君の家で、パソコンの爆破予告についていた不審な指紋と照らし合わせてください。それらを屈指して取り調べで落とします。証拠が明るみになったら連絡をください。出来る限り急ぎでお願いします。」

「はいっ!」

「国際指名手配犯の証拠はあかりちゃんと、ガッチリ掴んでいます。時効が切れる前に、先にそっちを落とします。その後、国際指名手配犯として逃げ切っていた車から、湯上家殺人事件の証拠を、もぎ取ります。」

「頑張レ!ミンナ!阪ノ上センセイ!」

「大っきい車、帰り乗るやつ、ひとつ置いて行くわな!」

「よし、薬丸警部、二手に分かれて行きましょうか。」

「じゃあ、あかり、そっちの車、任せたぞ!」

「ハーイ!」


ブルルルン!ブーン。


「そっかあ。なんであのひとが時効ギリギリの国際指名手配犯、ってわかったの?」


ホシが捕まり、やっと安心できる状態になり、車の中であかりは話し出した。

「ソレは、たけるクンの家族が殺サレタ事件と関わりがアッテ。たけるクン、国際指名手配犯をハッキングしてたンダヨネ。」

「えーっ!そんな大物とやりあってたんですか?でも、健君の家族を殺したのも、アイツなんですよね?」


真相が暴れてゆく。

「ソウ。簡単に言うト、国際指名手配犯ノ証拠をツカンデ、時効前に警察に言う直前、たけるクンの家族を殺シテ、心理的に脅迫シタノ。ソシテ証拠を全て消し、健君のパソコンには爆破予告を残し、健君が動き出せナイ中、警察ガお家に来て、たけるクンは連行サレタ。」


新たな疑問。

「なるほどな。でも、なんで警察は健君家に向かったんや?」

「ヤツから、お父さんの会社の営業先カラ、お父サンの行方がわからない、と警察に通報シテホシイ、と偽物の電話が入ッテ、たけるクンは従った。警察が、家に来るとなった後、家に潜んでイタ、ヤツがたけるクンの前に現れ、家族を殺した、と事件現場の風呂場へ連れてイッタノ。たけるクンはお風呂ニ、言ワレナイト入ラナイカラ、気ヅイテイナカッタ。」


ヤツはそれを知っていて、多々用意周到、計画的だったのだ。

「健君はそれを知っていたの?」

「ヤツが家にイルコトモ、家族が殺サレテイタコトモ、たけるクンは、知らなカッタ。普段、家族ト会わないヨウニシテタカラ余計ニ。あと監視カメラも家にツケラレテイタミタイ。ヤツが出て行くトキに、回収シテイタ、ッテたけるクンが。」


監視カメラで、監視し、健と出くわさないようにまで、していたのだ。

「さらに謎だよ。なんであかりーはそんな情報とかを知ってるの?」

「たけるクンと面会行ったの。」

「私がついて行ったわ。でもそんな話は……。確か、ピアノの連弾を約束してて、とか?エアーピアノで、机でやったのよね?」


一呼吸おいてあかりはニコッと笑った。

「アレ、モールス信号だったノ。」

「えーっ!あかりちゃん、そんな技を!」

「面会室にも監視カメラがついテテ、ヤツに多分ハッキングされテタ。デモ、たけるクンは、ヤツはモールス信号が出来ナイ、ッテ確信シテル、ッテ合図がアッタ。」

「はー!」

「もうすぐ警視庁、つきまーす!」


刑事たちは同じ気持ちになったようだ。

「でも、それなら全面的に捜査、協力させてほしかったなー。それに、捜査は刑事の大事なお仕事なんだけど……。」

「たけるクンと約束シタンダ。真犯人ニ動きがバレるト、たけるクンが危ない。いくら刑務所の中でもアイツから絶対守れる訳じゃない。アイツダカラコソ。」

「でも、教えてほしかったです。一緒に捜査、私たちなら極秘で出来ます。」


あかりは切り出す。

「一課や、996係に、監視カメラがツイテタノ気ヅイテタ?」

「えっ?警視庁の防犯カメラじゃなくて?」

「ソウ。アイツが夜にこっそり職員のフリしてカメラつけて、そのカメラハッキングで、私たちアイツに監視されてたの。」

「国際指名手配犯。やることすること、桁違いですね。」

「どうして気づいたんですか?」

「ホワイトハッカー室から、不審なアクセスを見つけて。防犯カメラを遡ったら、夜に怪しいヤツが設置してて。私が秘密の、ハッカーしている図書室につけたあたりから、私も狙われてるな、って。」


水野は気づいたようだ。

「待ってください。図書室、知られたくない、って一本杉警部と西井さんに言っていた。それを一本杉警部が監視カメラがついている部署で他言して、この事件に関わっているハッカー、のあかりちゃんを狙って、その夜つけられた、ってことですか?」

「ソウダヨ。」

「っていうことは、一課と996係にはいつ、つけられたんですか?」

「モット前ダネ。たけるクンが捕まった頃あたりに遡っタラ、不正アクセスがアッタ。ソシテツケテアル部屋デ私の図書室でのハッキングのことを話シテ。新たに、その夜、図書室にツケラレテイタ。」

「確かに、辻褄が合いますね!」

「アイツは、国際指名手配の時効が切レルコトに夢中。世界的大事件ダッタカラ、捕まっタラ刑が重い。たけるクンのお家の殺人は、自分の証拠を消し去ったのを、監視カメラから見て、確信していたから、ダト思う。」

「そうだね。」

「ダカラ、私タチハたけるクンの事件に証拠を掴めてナイ、関係ナイ、のを装ッテ、国際指名手配犯、の証拠を掴んだ、って監視カメラに宣言シタノ。」

「へー。」

「ソレデ、私ダケと見セカケテ誘き寄せたトコロを、厳重に逮捕。ソシテ捕まッタ跡の痕跡を調ベレバ、たけるクンの家族殺人事件も解決デキル証拠が出テクル、ッテコト!」

「裏を返したんですね。」

「黒の車に、多分防犯カメライッパイアルヨ。色ンナトコロにツケタのが。アイツの自分ノ姿も映ってイルカラ、証拠ダラケ、ダト思う。」

「やったね!」


キキーッ!

「警視庁、つきました!」

「続きハ、阪ノ上先生ガ、公に発表してクレルミタイ。私カラは、コレデ!」

「あかりちゃん、すごいよ!腕上げた、っていうか、感無量。」

「あっ、車が!向こうももうついてるわね。取り調べ室、向かうわよ!」

「はいっ!」


取り調べ室前。

「薬丸警部よ!一本杉一課長も!」

「おう!智恵ちゃん!」

「阪ノ上先生が、証拠を突きつけて落としたぞ!ホシも自白した。鑑識課とあいつらから連絡もあり、湯上家殺人事件の証拠もとれた。国際指名手配ハッキング事件の証拠は、あかりが阪ノ上先生にUSBと、健君のパソコンからも、送っといてくれたからな。国際指名手配、緊急逮捕だ!時効、…………


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