第32話

「ちょっと依頼しても宜しいでしょうか?」

「はい!もちろん!全然!どうされました?」

「すみませんが、一本杉一課長、兒玉さん、健君の自宅前辺りに設置してある防犯カメラを借りてきてくれませんか?」

「えっ?了解ですっ!」

「わかった。」

「そして、恐れ入りますが、福多警視総監、木内課長、福岡さん、その防犯カメラから、健君の家族が殺された頃、前後に健君の家に出入りした人物と車の特定をお願いします。」

「わかったわ!」

「あと、西井さんは、この手紙を健君に届けに行って頂けますか?僕の名義で、お願い致します。」

「はい!」

「尾野さんと、巣川さんは、健君のパソコンが爆発物処理班で処理されたとのことなので、鑑識課に渡して、健君以外の指紋を証明できる形にお願いします。パソコンの上に貼られた、爆破予告の紙も含めて!」

「はいっ!」

「はいっ!すんません!お願いします!」


爆発物処理班の部署にて。

「すみません、爆発物がついていたパソコン、ってありますか?」

「ありますよー。えーっとあった!どうぞ。」

「巣川さん、手袋を。」

「は、はいっ!」

「これを開ければ爆破する、この紙ですね。」

「こっちはパソコン。拭き取られている可能性もありますしね。」

「鑑識結果、指紋出ました!パソコンからは一人、紙からは異なる二人の指紋が出ました。」

「誰でしょうね。一人は健君ですよね。もう一人が、家族ではなく、ホシなら当たりです。」

「持ち帰って報告し、保管しましょうか。」


「おー!阪ノ上先生!」

「何かわかりましたか?」

「はいっ!健君の家の前の死角に健君の家が映る防犯カメラがあったので、管轄の交番に取り合って借りてきました!」

「こちらも、引き継いだ後、その防犯カメラから、健君の家族が殺された時期に、家の空いていた駐車スペースに、黒色のバン、ナンバーも特定しました。乗り降りしていた人物の、怪しい動きから、ホシだと思われます。」

「健君が警察に連行される直前に、家を離れています。車の中に、何かを積み込んで走り去りました。」

「わかりました。ありがとうございます。」

「私は、健君に手紙を渡してきました。すると健君は急いで読んで、面会時間内に返事を書いてくれて、阪ノ上先生に渡してほしい、と。これを預かりました。先生、どうぞ。」

「ありがとうございます。受け取りました。」

「僕たちは、爆発物処理班と、鑑識課に行き、爆破予告の紙から、異なる二人の指紋を受け取ってきました。一人は健君でしょう。パソコンは拭き取られたような跡があり、紙はもう一人残っていたそうです。紙に残る指紋はしぶといと言いますからね。ホシなら証拠ですね。」

「ありがとうございます。進んできましたね。僕は一旦、離れます。貴重なお時間をありがとうございました。」

「いえいえ、阪ノ上先生こそ!ありがとうございました!」


その頃、あかりは、スマホの充電が切れた。やむを得ず図書室へ向かい、コンセントを探すと、おかしい。

外すと、そこには盗聴器が仕掛けられていた。

「エッ……。コワイ……。ズット?イツカラ?」 

怪しまれないため、あえて、静かにあかりは、蓋を戻した。




「あかりちゃん!」

「阪ノ上センセイ!ドウシタノ?」

「これ、手紙。あっ、そうだ、あかりちゃんにまだ言ってなかったね。健君のパソコン、爆発物処理班が解除済みで、やっぱり爆発物、本物だったらしい。健君、開けなくて良かったよ。もう鑑識課も済み。触っても大丈夫。まあ、段取りなんだけど。これがそのパソコン。」

「貸シテ!国際指名手配犯を追ッカケル!たけるクンの冤罪も、コイツを逮捕スレバ、証拠も一緒にクッツイテ来るカモ!」

「これのデータをヤツに気づかれずに取れるか?あかりちゃん?パソコンウイルス感染と、大したものは入っていないという予測で、調べられていない。というより、ガードが固くて解除できない。解けるか?」

「ウン。ヤッテミル。失敗はシナイ。コノパソコン、預かるネ。」

「気をつけてね。ヤツもハッキングしているかもしれない。証拠を完全に消すことは難しい。隠している可能性がある。コイツを捕まえれば何かわかるかもしれないな。でもバレたらかなり危ないよ。」

「ウン。慎重にする。」


「……。」

「何かわかったか?あかりちゃん。」

「ンー、カタカタカタ。今、気ヅカレナイヨウニ、ヤツのパソコンに接近、アッ!接触中。ヨシ!居場所特定!」

「そんなにすぐにできるものなのか?」

「私、プロだカラ!」

「素晴らしいよ。」

「ヤツのパソコン追跡中に、たけるクンのお父サンの営業先を名乗った携帯の発信記録カラ、スグ捨てたであろう場所も特定!コノ電波、ダイブ前の型ダネ。折り畳み式?ソレを拾ッタラ指紋トレルカナ!」

「よくやった。」

「たけるクンはかなりヤバいハッカーだヨ。チョット苦労したよ!サスガ国際指名手配犯を突き止めるだけアルネ。」

「それはあかりちゃんもそれくらいヤバい、ってことだね。国際指名手配犯を捕まえられる、んだよ。」

「ソウカナ。頑張るヨ!」

「今から僕は996係と一課の仲間さんたちにちょっと依頼をしてくる。あかりちゃんはついてこないでね。ヤツにバレるとやっかいだ。」

「オッケー!」


「すみません。また頼みごとなのですが。」

「阪ノ上先生!良いですよ!でも、どうしてこんなことしてるんですか?」

「ある事件を追いかけていて。でも、なかなか近づけなくてね。」

「そうですか。阪ノ上先生もお忙しいのに。」

「早速ですが小林さん、三宅さん、脇谷さん、地図でいうとこの辺りに捨てられている、携帯電話を探して、回収してきて頂きたい。確実ではありませんが、折り畳み式の古い型かと。手袋を必ず。」

「了解です!」


数時間後。

「阪ノ上先生!あっ!いました!」

「どうでしたか?」

「見つかりました!車道の脇の草むらに捨ててあって。見つけるの苦難しましたー!ひひっ!」

「車から走行中に投げ捨てられたような位置やったわ!見つけたときの、現場写真も撮ってきたで!」

「ありがとうございます。では僕はこれを預かって、鑑識課に持って行きますね。」

「何かわかるんすか?」

「うーん、恐らく、ですね。でも、自信はあります。助かりました!」


「……。爆破予告の紙の指紋、捨てられた折り畳み携帯電話の指紋、一致。確かな証拠だ。だがこれだけでは確実に落とし込むことは出来ないか。」

「ドウシタノ?阪ノ上センセイ!」

「ああ、あかりちゃん。ホシを確実に逮捕出来る、証拠を突きつけられる、一番早い方法、ないだろうか。時効直前に近づいてきた。」

「賭ケテミル?良い案がアルヨ。」

「ゴニョゴニョゴニョ……。」


「それ、って……、この事件の最終ミッションか!」



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