「人情警察〜警視庁捜査課996係」

@hakanai_shinyu

第1話

「ザザ……こちら警視庁捜査一課水野、捜査課996係応答せよ、聞こえてますか。」  

「はーい、あゆたんこちら薬丸でーす。どうしたー!何かあったの?」 

 「いつも呑気ですねー。こっちは大変。至急、応援に来て!場所は渋谷スクランブル交差点よ。ひき逃げ事件、大パニック……」

 「うん、わかったよ、お前ら行くぞー!」 


ブチッ……ザザザ、ザ、ザザザ。 

 「もう、いつもこうなのよね。」 



「さあ、気合いの一服も済み、栄養補給のおやつ!今日はなんとーチョッ、コレート!モグモグ、さあ行くかお前ら、って……何してんだ?応答しろ!まず兒玉!」

「えー、また事件ーめんどくさい。」 

「ほら、二度寝するなって、西井、兒玉を起こしといて。」 

「兒玉っちー起きて、ファイト!」 

「よしっ、尾野君!出陣の準備は出来たか!」 

「はいっ、すんません、おねがいします!」 

「小林ー、お前はそのー……ゴホン、あのね、一応拳銃を持つの、それでね、あのね……」  

「あー、わかったわかった。名前出てこーへんけど、テレビのモノマネのー。」 

「そう!正解だ!さーあ、行くか!」 

「あら、何かあったの?」 

「はっ、木内捜査課長!」 

「智恵ちゃん、あゆたんから渋谷でひき逃げ応援要請だ。今から向かうところさ。」 

「えっ?水野さん?つい今、そこで会ったけど?」

「こここ……これはまずいぞ、準備に時間をとられて……。」 


バンッ、ガラガラガラガラ。  

「もう。取り調べに入りました。でもお手上げ。996係に任せてOKの指示が出たわ。上司は取り調べなんて威圧で解決よ。だから心しかわからない996係、訳してココロ係。あなたたちが頼り。これが資料よ。」

「うっひょー、あゆたん、僕、頑張るよ!」 


「渋谷スクランブル交差点に車で突っ込んで三人死亡、二人重症、十三人軽症、まあやってくれたね。」 

「どんなやつなんですかー?」 

「ホシの名は高木真広、男、36歳、お?俺と同い年、家族、認知症の母がおり、自らが介護中、そして離婚した妻と子がいる。仕事は無し、無職。……うん、納得。」 

「……それが、納得、出来ないのよ。まあホシを見ればわかるでしょう。」 



「まず取り調べ、誰が行くー?」 

「僕、行こっかなー。」 

「いや、あたしが行くわ!」 

「私でもいいですよ?」 

「私も行こうかしら。」 

「じゃあ俺が行く!」 

「どうぞどうぞ!」 

「なんでなん!わかってたけど?」 

「はいっ、すんません、おねがいします!」 

「尾野君はそこで出てくるのね……。」 


「失礼します、私は薬丸と申します。わ……私はねぇ……そうだねぇ……うん。」 

「あー!わかります!マフラーねじねじするひとですよねぇ!」 

「そうだよ、な、長袖、暑くないの?っていうか君、結構明るいんだね!」 

「僕はやってませんって!そんな、ひとをひくなんて僕には出来ません!」 

「いやぁ、でも君、現行犯逮捕ってなってるけど?」 

「ぼぼ、ぼ、僕の、僕の友人が隣に乗ってて気づいたらいなくなってたんです!」  

「そうかー、隣に乗ってたやつの名前は?」 

「杉浦拓史といいます。あいつが僕が寝ている間に事件を起こしたんだと思います。」 

「でも運転席にいたのおめぇだろ?」 

「そうですけどー、気づいたら運転席にいたんです。」

「その、杉浦ってやつ、今どこにいるか知ってるか?」 

「知らないです。知ってたとしても言いません。仲間を売りたくないです。」 



「おつかれさまです。決まりですか。」 

「いや、もうちょっと探ってみる。犯人かどうかより、こいつの心を救うこと。それが俺らの全てで、使命ってやつなんじゃねーの?よしっ、兒玉、お前は適度に動かんとすぐ寝るからな、高木の身辺の聞き込み。西井は捉われない心で新たな可能性を考えよ。小林は、裏がないお前流に、もう一回取り調べをしろ!尾野君はその観察力で、現場に行き新たな手がかりがないか探してこい!俺は杉浦をあたって探してくる。そして智恵ちゃんに報告し、俺の元へ集まれ!」 

「みなさん、お願いしますね。」 

「はいっ!」 




「よし、全員集合!それぞれに成果を発表せよ!まず兒玉!」 

「えー、特にないです。僕、警察に向いてないです。」 

「いやー、向いてないとか言うな。大丈夫セヨー!何かお前の気づいたことは?」 

「そこそこ聞き込みして、返ってくる高木の情報が全員全く違ったぐらいかな。」 

「上出来ナリ!よくやったぞ兒玉!続いて西井!」 

「私はあの子が、純粋に見えた。ひとを傷けることがむしろ嫌いであるように。」 

「そやな、そう思う。理論、ちゅうとあたしのアホな頭ではわからんけど?」

「そうだ、小林。お前はどうだ?」 

「あたしは、取り調べっちゅうてもなんて事ない話しかせんかったけどな。でも逆に、なんか奥で抱えてるんちゃう?」 

「うーん、複雑になってきたぞ。どう思う?尾野君。」 

「はいっ、僕も車で行ったんですけど、あそこに突っ込むのは、悪党でないなら、よっぽどの精神的異常があったかと。」

「俺も、杉浦拓史をあたったが、高木の近辺にはいなかった。だが、なぜか引っかかる。さあ、智恵ちゃん。上手いことまとめちゃってー!」 

「私も、みんなの言う通りだと思うわ。そうね、視点を変えた配置はどうかしら?」 

「賛成!」

「よし、グルグル配置ターイム!どうしよかな、兒玉!いっそお前が取り調べ!」 

「無理っす。僕はダメですー。」 

「そんなこというな、お前もやってみろ!」 

「ひー、わかりましたよ。」 

「西井、お前はお前の感性で聞き込みだ!」 

「はい!意外と私、アウトドア派で。うん、楽しそうです!」 

「尾野君、新任務だぞ。あいつの心を裸にする手をいくつも考えろ!」 

「いいですねー!模索してどうにか心開かせてみせます!」 

「小林!お前はあえて取り調べとは別に、高木と雑談して高木の本心を探ってみよ!」 

「えーっと、取り調べは兒玉がしっかりやるっちゅうことでええんやな?」 

「パワハラです!警部!」

「あっ!触った、セクハラ!」 

「身内で争ってどうするんだ!俺は交番の脇谷のところへ行って高木の情報を得る。よし、智恵ちゃん、これでどうだ?」 

「とってもいいわ!私は一課から高木の資料を集めてくることにするわね。」 

「よし、各自それぞれ任務にあたれ!」 

「はっ!」

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