第15話 親分さんの過去と掃除部隊結成。
貴族様はなんとこの領主という訳では無いがこの辺りを取り仕切る法衣貴族とやらである。貴族と言えば領地があるのではないかと思っていたがそういう貴族だけではない。彼の一族は王都の中の東側の一部を管理している貴族だそうだ。
バーサル様の家では親分さんの父親がまだ子爵として働いていてバーサル様は士爵である。親分さんがバーサル貴族様のもってきたお酒をちびちび飲みながら教えてくれた。ここ、王都だったのか。
「双子は不吉だーって追い出されてよ、まぁ俺らは仲良かったし色々あったが俺にも力があって無事貧困街の取りまとめになったってわけだ」
「凄いですね!」
「まぁな」
絶対裏で繋がって一緒に悪さしたんだな……。というか親分さん、貴族の出だったのか、どう見ても生粋のマフィアなのに。
「でもなんで親分さんが追い出されたんですか?双子なら一緒の見かけなのに」
「―――――……アァン?」
しまった!失言だ!!?この迂闊な口を縫い付けてやりたい!
親分さんは仕事に必要だからと少し昔話してくれたがそれでも追い出されて良い思い出なんて無いはずなのに聞いてしまった。しかも酒によって、タガが外れてるかも知れないのにっ………!
酒の場の雰囲気で軽く言ってしまった。
「ご、ごめんなさ「チッ、気にすんな」
嫌な顔をした親分さんだが酒をぐびっと飲んで話し始めた。
「バーサーは土からレンガを作れるが俺はできん、一族の当主になるにはあった方が良い。土系統の魔法だ」
真剣に話を聞く。いつ殴られるかはわからないし、暴力を振るう酔っぱらいほど怖いものはない。
とくに病弱や貧弱という訳では無いが幼女ボディーだとなおさらだ。
「この建物もバーサーのレンガで作ったし、王都中のレンガは代々うちのもんが作ってる……俺にゃあ適性がなかったんだ」
「でも親分さんにも良いところがありますよ!」
「……そうだな。幸い身体強化はうまく出来たし、ここは腕っぷしで何でも揃う場所だ。部下も出来たし、金も入るようになった」
この外道な親分さんにも苦労するような過去があったのだろう。バーサル様にはない体の傷から察することが出来る。
少し遠くを見つめている親分さんだが、きっと私の知らない過去を思い返しているのかな?
「今じゃお前らみたいな部下も出来たしな!飲め!お前も飲め!!」
「はい、頂戴します!!」
この幼女ボディーで飲んでも大丈夫か?と思ったが飲まない選択肢なんてない。
一口で咳き込んで吐き出し、ひっくり返ってしまった。親分さんが遠くで焦る声が聞こえたがそのまま意識が落ちた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
次の日はフラフラだったが昼過ぎにバーサル様の仕事に行く。
「流石にお前一人に行かせるとまずいからな、ローガンとオルミュロイとパキスをつける。―――……大丈夫か?」
「目がグルグルします」
「吐いてから仕事にいけ、悪かったな」
頭をグシグシ撫でられ、ローガンさんに抱かせるように渡された。一応成人済みの女性の感覚はまだ残っているから抱っこはちょっと恥ずかしすぎるんだが大人しく従う。し
オルミュロイさんは人とリザードマンの間のような戦闘奴隷で、掃除中ずっと私を睨みつけてきた人だ。鱗のある人……割合とては8割ぐらいは人だろうか?
何人かリザードマンはいたが、種族の差なのか表情はわかりにくい。
そしてパキス、元上司。何故か憤怒の表情で私を睨みつけてきている。
「パキス、フリムの言う事を聞いてちゃんと守れよ?」
「……………ウス」
ものすごく不服そうだ。大丈夫か、これ?
「ご主人様、よろしいでしょうか?」
「なんだ?ローガン」
「掃除となれば女性しか立ち入れぬ場所もあることでしょう。我々ではフリム様の近くにいられないこともあるのではないでしょうか?」
「おぉ、そうだなローガン!気が利くな相変わらず!」
ナイスローガンさん!気が付かなかったけど私の身の安全のために発言してくれてナイスぅ!!親分さんと同意見というのは微妙な気もするが!
「いえ」
「じゃあ二人ほど見繕って連れてけ」
「はい」
部下が増えることになった。地下に行って誰か女性の奴隷を見繕うことに。
「チョーシ乗んなよクソが死ね」
階段を降りながらパキスからなにか聞こえた気がする。部下だった相手が上司、しかも搾取しまくりの気に入らなかったら殴ることも出来ていたサンドバッグだった存在が上司。気に食わないことこの上ないだろう。
会社でいうと社長の息子のコネ社員がパキス、私は採用試験から叩き上げでのし上がった社員のようなものである。いくら私が上司とは言えパキスが親分さんに泣きつけば私の首が飛びかねない……。
………パキスの腰、前側にあるナイフに手をかけてるのは歩きにくいからだよね?襲ってこないよね?
「フリム様、マーキアーという女の戦闘奴隷は連れていきましょう。少々がさつですが言うこともよく聞いてよく働きます」
「ではその方は連れていきましょう。もうひとりはどうします?」
「オルミュロイ、誰か推薦したい人はいますか?」
「タラリネしかしらん」
「どんな方ですか?」
「妹だ、まだ売れてなかったらいるだろう」
サラッとくっそ重いこと言ったぁ!?
「では一緒にいきましょう、一緒に働けると良いですね」
「チッ、早くしろよ愚図が」
「………」
何だこの元上司は……。私につけてくれた以上、私が命令して言うことを聞いてもらうはずなんだけどさ、難しいよこんなの。だってドゥッガ親分の子供で!力で対抗しようにも絶対パキスのほうが強いし!!下手に命令なんてしたら絶対恨まれるって!?既に殺意が見えてるし!!?
ローガンさんは奴隷であっても親分さんには気に入られているように見えたがそれでもパキスには何も言えない。
「マーキアー、仕事です。来なさい」
「うっす」
一般売買向けの奴隷のいる場所、その個室に彼女はいた。一緒に働く女の子だーかーわーいーいー………とか言いたいところだけど肩幅広めで身長もある、しなやかなマッスルさんだ。赤毛でポニテ、姉御って感じで腹筋バッキバキ。
もう一人、私も初めて来る娼館エリアの奥、雑用奴隷のいる場所に彼女はいた。
「兄さん!?」
「………」
「タラリネ、仕事です。ついてきなさい」
「っはい」
「チッ」
一瞬、変化は少ないが確かに嬉しそうな雰囲気だった。だが、それも一瞬ですぐに無表情に戻った、兄妹の再会をよくないものにしてしまったかも知れないな。
タラリネと呼ばれたこっちの子は可愛い。私よりは大きいが普通に人間に見える。義理の兄妹とかだろうか?
こちらのトイレ掃除にも来てほしいと言っていたお姉さん方に手を振って仕事に向かうが――――………このメンバー、前途多難すぎる。
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