第6話 衣食住だけでは足りない。
親分さんのやってる計算自体も結構手伝えて、衣食住は手に入れた。
食事は親分さんと一緒で……若干私を毒見にしてる気がする。親分さんは私が食べて1時間ほどしてから食べている。
服も元の雑巾以下の布に比べてかなりいいものがもらえて、部屋も近くにもらえた。
だが―――――「このウスノロがっ!!てめぇがちゃんとしねぇから俺等がなめられるんだクソがっ!!!」
こんな暴力を伴ったブチギレが一日一度は目の前で起きる。
衣・食・住、食は微妙な気もするが一応マシになったのは確かだ。やはりそこはマフィア、3つが足りても親分さんという火薬が側にいる以上、生命の危機が身近にある。
ひょいと渡される果実も大切だが―――安全が切実にほしい。
「そういや水で稼いでたんだったな?」
「はい」
「日にいくらもらってた?」
「銅貨2枚です」
言っていて悲しくなる。宿屋のおばちゃん達の大瓶によって少しばかし誤魔化されているとはいえ普通に銅貨100枚は私の水魔法で稼いでいる計算になる。なのに定食一食分にも満たない。日本円にしておそらく数百円分だ。しかもだいたい難癖をつけて全部取られてしまう。
「ん?報告に上がってきてるのが日に銅貨30枚なんだが?」
「多分親分さんに届くまでに大分抜かれてます」
渋い顔をした親分さん。きっと金額を言ったらキレる。
まそれほど力がないとパキスは思わせたかったのか?いや、そんな知性があるようには思えなかったが。
「なるほどなぁ……すまんな息子共が」
「いえ」
少し申し訳無さそうにしている親分さん。公認ではなかったのかな?
「これから水はどう売りましょうか?」
「そうだな……」
以前と同じく私が売りに行くのが一番早い。別のことをするのではなく継続するのは手間もないし便利だろう。私にしてもここ以外での情報収集の機会はあれば嬉しいし親分さんとずっと一緒なのはストレスもかかる。基本的に私にはいい人なんだけど暴力を見てるとやはりまだ怖い。
「賭場の裏で水出して人に売りに行かせる。力の有り余ってる奴らはいくらでもいるしお前はこっちで使わねぇともったいねぇからな」
「はい」
―――どうやら私は囲われる程度には便利な存在になったようだ。
それもいいだろう、私だってずっとこんな環境は嫌だが現時点で親分さんの身の回りが最も安全と理解している。
普段から親分さんは良く私を見てくる。
何が面白いのか、とても観察してくる。それはきっと私フリムが子供らしからぬ行動をしているからだろう。小さな子供なんて「うんこうんこ」言って笑っているものかもしれないが私にはそういう真似はできそうにもない。
親分さんは基本的に部屋から出ない、ここで寝るし、ここで起きる。だが例外もある。
何らかのアクシデントや顔つなぎで賭場を巡回するときとトイレだ。
ここでやられても臭いからあれだがそんなときは私や護衛がついていく。親分さんの前を歩いて親分さんが通るぞと先触れを出す。なんか殿様みたいだ。
そこで一つ気がついた。これ、私を売り込めるんじゃないかな?
ちょうど雨だ。
「親分さん!掃除してきてもいいですか?」
「ん、あ?好きにすると良い」
トイレに行くのに建物と建物の間の屋根のない僅かな階段を通るのだけど雨の日はそこがよく滑る。誰にも見つからないように周りを見てから―――
「<水よ、高圧洗浄機みたいに出ろ!!……わぺっ?!>」
思ったよりも出た。体がコロコロと後ろに転がってしまったが上手く出せた。
体の中で消費したが成長しているのか思ったほど魔力的な何かは減ってなくて余裕がある。むしろ転がって打ったおしりが痛い。
「<み、水よ、高圧洗浄機みたいに……出ろ>」
魔法は言葉通りに出せるだけではない、自分の中で何かが減るし謎の何かを操作しないといけない。
今度はブシャーと出せたので石造りの床を洗っていく。思ったよりも汚れていたようで床の色は変わった。試しに自分で蹴るように踏み確かめてみてもいつものように滑ることはない。次だ!次々!!
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