ポスト・でっど
つきみなも
宣戦前夜の青い日々
第1話 ゲームスタート
人が死んだら、記憶はどこに行くのか。
好奇心旺盛な私はそんなオカルティックなことを考えていた。
私はその頃全く気づいていなかった。
死のその先を考えることがいかに危険で愚かな行為なのか。
死のその先を確実に観測した人はおらず、あくまでも推測や宗教的観点でしか結論は出ていない。
人はその昔、技術を蓄え、繁栄するため知ることに対する快感を備えた。
知らないことを追求し続けるように本能的に出来ているのだ。
観測者のいない死のその先という「知らないこと」に気付き、考え始めたら人間は追求し始める。
追求をやめなかった者は、我こそが観測者になろうとするのだ。
ーーーーーーーーー
怠惰と後悔と憂鬱で埋め尽くされた中学2年ももう半分以上が終わっている。
青春になるはずの6ヶ月を生半可すぎる勉強とパソコンに振った私は、さながらゴールデンウィークに何かしようと思っていた独身男性の気分だった。
家は母子家庭、趣味はゲームとプログラミング。友達なしの厨二病患者。
自分のプロフィールを見るたびに体の奥底からため息が出る。
最近では右手が疼くぜ、が右手が痒いぜ、に進化した。
8月だけでムヒを全部使い切るぐらい蚊に恨まれたからだ。
ああ神よ、お前に会ったらまず中指を力強く立ててやる。
一人の厨二病患者でここまで遊ばなくてもいいではないか。
私は今、走馬灯を見ながら宙を舞っている。
地元道というのは誰しもが慣れているため、ついついスピードを出してしまう。
私はそれの餌食となった。
大して人通りもない町角の交差点。
私の墓場はここに決定された。
撥ねられた時一瞬見た車種を思い出して爆笑していた。
白い軽トラ、通称異世界転生トラックである。
これならまだトラクターを見てショック死していた方が多少独創性があって良かったのだが。
ところで今私はお察しの通り、
赤ちゃんとなっている。
だからと言って異世界に行ったワケではないらしく、ご立派にベビーベットとなんか回るアレの下で寝ている。
特に神様らしき存在には会わなかった。はねられて暗転して次の瞬間知らない天井。
死の瞬間というのは短くも長いもので、なんだか極めて単調にも感じた。
ひとまずお股の感覚がないのがショックであるが、現代社会では究極のかかあ天下。つまり女性の方が強いのだ。
なので幸運とも言えよう。
どうやら転生先は西野家の「ほのか」というまあなんとも可愛らしい女の子らしく、転生の中でもかなりの当たりくじを引いてしまった。
母も美人だし。父はイケメンIT企業の
ひとまず私はこの人生にタイトルをつけてやろうと思った。
「転生したら美人ママとITパパの勝ち組確定だった件」
うん、素晴らしい。
小説界でマンネリというレベルを通り越してもはやテンプレートが配布されているのではないかと思うほど似たり寄ったりな作品が多い転生系に足を突っ込む勇気があれば私はこのタイトルのまま出版をするつもりだ。
こうして唐突ながらも私の転生知識無双ライフは・・・・
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