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「あの、生徒会の人ですか?」
それはちょうど、何人かのスタンプラリー利用者を誘導したり、地域の人に地図の見方を教え終わった後のこと。
「はいそうですけど……どうかしましたか?」
「あの……これ、少ないですけど製菓部からのお裾分けです! 良ければぜひ受け取って下さるとうれしいです!」
「おぉ~! ありがとうございます! ここにいるとずっといい匂いがしていて、お腹がずっと甘いものの気分だったんで、助かります!」
「あと、これ……他の生徒会の人にもお裾分けしてください」
「え、いいんですか? ありがとうございます」
そう言って、数袋のお菓子が入っているバスケットを受け取った。
「ただいまー!」
「わっ……あ、まり先輩おかえりです」
どうやら同じ部活の部員らしき生徒が、宣伝がてらにお菓子を配って回っていたらしい。首に看板をぶら下げていたので分かった。
「ひより、なに話してたのー?」
「いやー、せっかくだからお菓子をお裾分けしようって家庭科室で話してて、それで――」
「あぁ! なんか生徒会の人忙しそうだもんね! それはいいアイデア」
「あ、そうだ!」と言って、先輩と呼ばれていたその人は、自分の首にかけていた看板を取って、輪投げの要領で俺の頭にポイッと投げてきた。
「わっ……え?」
「ついでに宣伝も頼んだ! 大丈夫大丈夫、ちょっとそこら辺を寄り道しながら回ってくればいいからさ!」
そう言ってその人は、「みんな帰ってきたよー」と家庭科室へと戻っていった。
「えーっと……ごめんなさい! 部長ああいう性格なだけで普通にいい人なんで……あの、生徒会長によろしく伝えといてください」
ひよりと呼ばれた女の子はペコリと一礼すると、早足で部長の後を追って家庭科室へ戻っていった。
数袋のお菓子と首に看板をかけた俺が残された。
これは……やるしかないのか?
でも、一応ここで待機しなければという使命が――と思い悩んでいると、
ガラガラガラ。
結構な勢いで家庭科室の扉が開かれた。そして、そこにいたのはさっき別れたばかりの女の子であった。
こっちの姿を確認すると、また早足でこっちに寄ってきて、
「あ、あの! ここを離れている間、代わりに私が誘導の役割をやっておきましょうか?」
その提案を断る理由など俺にはなかった。いや、それを言われたことで俺がこのお菓子を今すぐに届けなければいけない、という事が確定したといっても過言じゃなかった。
「ありがとう……」
選択肢すら潰されてしまうとは、なんと恐るべき団結力だろう。
そんな、恐れを孕んだ尊敬を製菓部に抱きながら、俺は自分の持ち場を離れることになったのであった。
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