これを日常と言わずに何と言おうか

不透明 白

文化祭準備期間

春村神木は絶望した


 それは、絶望的な不注意で起こった。


 もしもそれが、アルミでできていたならば、こんなことにはならなかっただろうか。

 しかし、今回は残念ながらスチールだったのだ。

 そんな悲劇にお悔やみ申し上げながら、自分の体が制御不能になり、重力加速度と仲良しこよしに後傾していく。

 手のひらと背中にぞわぞわと張り付く冷たさを感じた。

 これは、落下時の衝撃を脳がいち早く予感した未来予知なのだろうか。

 でも、一つ確かに言えることは、それがただただ気持ち悪い感覚だったというのは確かに覚えている。

 天井のLED電灯がやけに眩しい。

 自販機や下駄箱がそそり立つ様子は、まるで都会のビル群みたいだ。

 筋肉が収縮して腹筋や背筋に力が入る。


 着地の準備はオッケーかだって? 良いわけねぇだろボケ。

 あのスチール缶、来世で会ったら覚えてろよ。

 その時は、ありったけの力で燃えないゴミのゴミ箱に思いっきり叩きつけてやるから。


 そして、その瞬間が訪れる。

 その時にはもう……観念して目を瞑るしかないのであった。

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